【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅7日目

【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅7日目

【シネマジプシー】アメリカ、ディープサウスぶらり旅7日目

見てきた映画は数知れず。本人すらも分からない。(1万本を越えてから数えるのをやめたから)人呼んでシネマジプシー・川端安里人。彼から「旧友に「映画を撮ろう」と誘われて、ロケハンでにアメリカへ行ってきた」と、アンテナ編集部に連絡と原稿が届いた。目に映るのものがこれまで見てきた映画とリンクする彼が、南米で見てきたものはどんなものだったのでしょうか。

 

全9日分の記録をお楽しみください。

【シネマジプシー特別編】アメリカ、ディープサウスぶらり6日目の記事はこちらから

ゴーストタウン、パリ、テキサス

一向に牧場の人はやってこない。これじゃあ2人ですと言って、10人で騒いでもバレないんじゃないの?大丈夫?と思いながら牧場での滞在を楽しんだ。この日は朝日を見るためにいつもより早起きた。人生史上最高の朝日を眺めた後、『ゾンビランド』でおなじみのトゥインキーを軽い朝ごはんがわりに食べた。

僕たちは次の目的地へ向かうことにした。向かうはマラソンという名の小さな町。高速を使って直線で行けば3時間とかからずに行けるのだが、あえて南下し遠回りのメキシコ国境沿いギリギリを走ることにした。

今回の旅は大まかな目的地は決めているものの、それ以外のルートはその時任せだ。牧場地帯を走り抜け、気づけば周りは荒野になっていた。そんなアメリカらしい道を抜けてたどり着いた次の町はゴーストタウンで、ホラー映画でいう入ったら一発アウトな雰囲気を醸し出していた。もちろん店なんてないので、その町でお昼を食べる予定は流れる。

そこからさらに1時間ほど車を走らせやっとたどり着いた小さなグリル、ここで食べてけとテープで作られたDIY精神溢れる看板がなんとも言えない。もうここに入るしかないので祈るような気持ちでグリルに入ると、まさに南部の女の子という感じの店員さんが物珍しそうに「どこから来たの?」声をかけてくれた。「日本だよ、完全にお昼ご飯を逃しちゃった」と伝えると「ワォ!コンニチワ!コノTシャツハ イクラデスカ!」と返答してくれた。なんと日本が好きで旅行に来たことがあるそうだ。思わぬ形で歓迎を受けた町で食べたナチョスは、また格別だった。

昼を食べたあと、さらにマラソンに向けて車を走らせた。向かって右はアメリカ、左はメキシコのリオグランデ川にかかる橋を渡る。まるでジョン・フォードのような空を眺めていると、いろんな西部劇の情景が頭を駆け巡った。

ロングドライブの末にマラソンにたどり着く。この町はヴィム・ヴェンダースの素晴らしい映画『パリ、テキサス』のロケ地になった街だ。スコットランドを拠点に活動するバンド・トラヴィスはこの映画の主人公の名前から来ていると知られている。今夜の宿、マラソン・モーテルもそのロケ地の一つだ。

一方のO君はテキサス1うまいマルガリータを出すバーがモーテルの近所にあることを聞きつけ、そのことでも盛り上がっていた。マラソン・モーテルは一部綺麗に増改築されてはいたものの、看板や全体の雰囲気は映画のそれを彷彿とさせた。受付のおばちゃんに『パリ、テキサス』が好きでここまで来たことを伝えると、映画のロケに使われた棟の部屋を貸してくれた。

今回の旅の中でもひときわ良い雰囲気の町で、筆者自身が気に入った町であった。街の唯一のコンビニには自然食品やナチュラルハンドメイド系の品が並び、美味しいマルガリータの店を擁する12gage hotelもまるで最果てかのようなこの町の風景ととてもマッチしていた。未舗装の道、出迎えてくれる野良犬、見るからに怪しげなホステル。どこもかしこもカメラを回した瞬間映画になりそうな素敵な田舎町だった。

WRITER

川端 安里人
川端 安里人

1988年京都生まれ
小学校の頃、家から歩いて1分の所にレンタルビデオ屋がオープンしたのがきっかけでどっぷり映画にはまり、以降青春時代の全てを映画鑑賞に捧げる。2010年京都造形芸術大学映像コース卒業。
在学中、今まで見た映画の数が一万本を超えたのを期に数えるのをやめる。以降良い映画と映画の知識を発散できる場所を求め映画ジプシーとなる。

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EDITOR

岡安 いつ美
岡安 いつ美

昭和最後の大晦日生まれのAB型。大学卒業後に茨城から上洛、京都在住。フォトグラファーをメインに、ライター、編集等アンテナではいろんなことをしています。いつかオースティンに住みたい。

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