
kiss the gambler、私はなぜ韓国のことが知りたいの? – 最終回 「東京」というプールの中にずっといないでね
シンガーソングライター、かなふぁんによるプロジェクトkiss the gamblerがお届けする短期連載!Instagramでは韓国語とフランス語を練習する姿を日々積極的に投稿し、最新ミニアルバムの収録曲を、フランス語・韓国語・中国語・英語で歌った『Relax! International』も発表。年々語学学習に積極的になっているかなふぁんに、過去3回のライブツアーを経験した韓国での経験や想いについて綴ってもらいます。かなふぁん、あなたはなぜ韓国のことが知りたいの?(リード文:峯大貴)
kiss the gambler
シンガーソングライター・かなふぁんによるプロジェクト。子どものような純真さと大人の深みを併せ持つ歌声、そして耳に残るポップセンスが魅力のソロアーティスト。2018年より活動を開始し、じわじわと音楽ファンの間で注目を集めている。
これまでに3枚のフルアルバムをリリース。テレビ東京の赤ちゃん向け番組『シナぷしゅ』への楽曲提供「あかるいあかちゃん」や、『FUJI ROCK FESTIVAL ’24』への出演をはじめ、最新ミニアルバム『Relax!』の発表、韓国語やフランス語など多言語で歌い直した『Relax! International』のリリース、全国ツアー開催など、精力的に活動を展開中。
また、アサヒビールや東山動植物園をはじめとするテレビCMでの歌唱も担当するなど、幅広く活動の場を広げている。2025年は、毎年開催している弾き語りワンマン全国ツアーに加えて、台湾、韓国、フランスでも公演を行った。2026年1月に、武蔵野公会堂初ホール公演DVDを発売。3月2日には映画『床一面こんな感じ』の主題歌“クワゴマダラヒトリ”がカセットでリリースされた。
最終回:「東京」というプールの中にずっといないでね
2025年8月3日に、kiss the gamblerが初めて台湾でライブができるチャンスが訪れた。この台湾公演は、毎年神奈川県の三崎港で『芋煮ロックフェスティバル』という音楽祭を開催している國井久嗣さんがオーガナイザーとなって、〈台北月見ル君想フ〉で企画していただいたライブイベントだった。この日は現地のAmi Tseng(DSPS)さんと岡林風穂さんと共演して、初めて訪れた台湾という場所で本当に素晴らしい歌をたくさん聴くことができた。初めてお目にかかる台北のお客さんたちは、若い世代の方が多くて、友達と来ていたり、恋人と来ていたりとてもフレンドリーな雰囲気。きっと初めて見ただろうkiss the gamblerと岡林風穂さんにも興味を持ってくれ、愛らしい反応がとても嬉しかった。kiss the gamblerの大ファンで最前列で開場を待っていてくれた青年もいて、手紙と共に、本当に大ファンであることを伝えてくれた。
初めて行った台湾でこんなにあったかいメッセージをもらって、これまで台湾でライブをする勇気がなかったことを後悔した。確かに、Apple Musicなどで聴いてくれている台湾の人は一定数いることを知っていたが、まさかライブに来てくれるほど好きでいてくれたなんて……!
2025年8月の時点で、韓国では2回ライブをしたことがあった私だったが、韓国よりももっと遠い台湾での公演を経験してから、「これならもっと遠くの国でもライブできるかもしれない」と思えるようになった。台湾の公演は主催の國井さんに旅費・交通費を全て出していただいて、私は行くだけという安心の状態で臨むことができたが、こんな奇跡的なチャンスは待っていてもそう訪れないだろう。次はもう一つ学習している語学の国であるフランスに、自分の力で飛び込んでみたいと夢見るようになった。韓国や台湾は日本から近い国だから、kiss the gamblerを知ってくれているお客さんが多かったけれど、フランスは日本から本当に遠いし、多分1~2人くらいしか知っている人がいないかもしれない……それに航空券代や宿泊代を考えるとかなり無茶な挑戦に思われるだろう。
だけど私は台湾公演から遡ること4ヶ月。2025年4月に強力な味方に出会っていた。それは〈青山月見ル君想フ〉で行われた、かもめ児童合唱団のライブに、kiss the gamblerがゲストで数曲出演した際、お客さんとして来ていたフランス人、Rさんだった。物販ブースで明らかにヨーロッパの風を吹かせていた彼が私のところに来て、緊張した雰囲気で日本語を話し始める。「福島から来ました、フランス人です。kiss the gamblerのファンです!よろしくお願いします!CDにサインください」
(え〜〜〜〜〜〜〜!かもめ児童合唱団のお客さんじゃないの?!しかも福島から?!フランス人?!)
フランス語を勉強していると言っても、本物のフランス人を目の前にしたら「ボンジュール!ジュマペール、カナ。オンションテ!(こんにちは、私はカナです。よろしくお願いします!)」しか言葉が出てこないレベルでとても恥ずかしかった。でもRさんが日本語がわかりそうなので「フランス語を勉強しています!」と日本語で言ってみると、彼の表情がパッと明るくなった!kiss the gamblerがフランス語を勉強していることを知って、感激したらしい。
Rさんは二日後、フランスに帰国する予定だったが、なんとなく私の夢を叶えてくれるキーパーソンとなる予感がしていた。Rさんはライブの後、Instagramでkiss the gamblerをフォローしてくれて、私はDMで感謝の気持ちを伝えた。すると「フランス語の勉強を少し手伝いましょうか?」と提案してくれて、帰国する直前にランチを一緒に食べることになった。私がフランスでもいつかライブしてみたいという気持ちを伝えると、「僕がフランスのマネージャーになります!」「かなふぁんがフランスの田舎に来たら、僕のおばあちゃんやお母さんの家に泊まってOK!」と言ってくれて、(よ〜〜〜〜し。次はフランスでライブをするぞ……)と本気で考え始めた。
2025年9月、1度目の訪仏。いきなり会場をブッキングするのは無謀すぎるので、まずはライブできそうな場所を探しながら、フランスのマネージャーさんになってくれるというRさんとの信頼関係を築き上げることを1番の目標にした。2週間の滞在期間、フランスだけでなく、アイルランドも一緒に旅行し、いろんな土地を案内してくれた。Rさんはフランスやアイルランド、日本の歴史や政治の話をしてくれるので、私があまり自分の国のことに詳しくないことを恥ずかしく思った。その他にも、日常生活や友人との関係性、男女の差についてなど、たくさん話をして、カルチャーショックを受けたり、知らない言葉ばかりで自分の家がない世界にいることがストレスでパニックになったこともあった。かと思えばそこら中に羊やトナカイ、馬が住んでいるのどかな風景や、美しいステンドグラスのある古い大きな教会、黄色めいてきたぶどう畑などを次々と目にして、自然と気持ちがリセットされる。たくさん刺激を受けた2週間だった。
東京でシンガーソングライターをやっていると、なぜか追い出されるんじゃないかと思うことがある。アーティスト同士が戦っているわけではないはずなのに、周りの人が敵に見えることがよくある。東京は特にそんな場所に思えがちで、自分が生まれ育った場所が大人になるとこんな風に見えることが悲しかった。これは音楽活動を始める前、会社員だった頃も同じように感じていた。でも、そこから出る勇気は今までなかった。毎年全国ツアーをやりながら、どこなら移住できるかなとぼんやり考えていたが、その度になぜ自分が東京を出ないといけないのかわからなくなって、また悲しい気持ちになる。
こういう時、一人で海外に行くのがいいことを実は私は経験済みだった。大学2年生の時に全く人間関係がうまくいかなくてサークル活動も続かず、初めての海外、カナダに逃げたことを覚えている。すぐには帰れないくらい遠い場所に行くと、元いた自分の世界がどんなに小さい世界だったかということに気づく。それから「小さなプールの中にずっといないでね」と自分自身にずっと言い聞かせてきたのだが、フランス・アイルランド旅行を経て、また自分は「東京」という小さなプールの中にかたくなに閉じこもっていたことに気づいた。Spotifyの再生数、SNSのフォロワー数、ライブのお客さんの数、あまりにも比較されるのが簡単で「売れているものがいいもの」と思われがちな小さなプールから這い上がって、必ずしもここでがんばらなくてもいいんじゃないか……と思えるようになったのだ。
そしてそんな冒険に出ることが出来たきっかけは、韓国や台湾でライブをした時に、お客さんや友達がたくさん愛をくれたおかげ。本当にありがとうございます!さてここからどんなことが起こるか、気にかけてもらえたら嬉しいです。
そしていよいよ4月4日(土)・5日(日)に、韓国のソウルで『kiss the gambler KOREA TOUR 2026 春』が開催されます!連載3回目に登場した韓国のキム・デヒさんとデュオセットで演奏します。きっとかっこいい演奏になることでしょう。日本のみなさんもよかったら来てください!
ここまで読んでくださったみなさま、表紙のイラストを描いてくれたJUNOさん、企画・編集の峯大貴さん、掲載してくださったANTENNAさん、本当にありがとうございました!
また、この続きの連載ができることを祈っております!
kiss the gambler かなふぁん
アイキャッチデザイン:JUNO
これまでの「kiss the gambler、私はなぜ韓国のことが知りたいの?」
kiss the gambler KOREA TOUR 2026 봄(春)
| 日時 | 2026年4月4日(土) (토) open 18:00 / start 19:00 |
|---|---|
| 会場 | 空中キャンプ(공중캠프) |
| 料金 | 前売り(예매)25,000ウォン(원)/ 当日(현매)30,000ウォン(원)(+1drink) |
| 出演 | kiss the gambler、HACO |
| 詳細・予約 |
| 日時 | 2026年4月5日(日) (일) open 19:00 / start 20:00 |
|---|---|
| 会場 | Strange Fruit |
| 料金 | 前売(예매)25,000ウォン(원)/ 当日(현매)30,000ウォン(원) |
| 出演 | kiss the gambler、The Smir |
| 詳細・予約 |
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シンガーソングライター・かなふぁんによるプロジェクト。子どものような純真さと大人の深みを併せ持つ歌声、そして耳に残るポップセンスが魅力のソロアーティスト。2018年より活動を開始し、じわじわと音楽ファンの間で注目を集めている。
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