
【2026年3月号】月刊アジア音楽レポート
ライター・編集者の中村めぐみによる連載『月刊アジア音楽レポート』。今月は、韓国大衆音楽賞の結果、香港マスロックの現在地、そして日本のレコード店で広がるアジア新譜の流通を中心に、アジア各地の音楽トピックを紹介します。
アイキャッチデザイン:イマムラタイチ
第23回 韓国大衆音楽賞のレポートが公開(情報提供:BUZZY ROOTS)
韓国の音楽シーンにおいて、アイドル中心の音楽賞とは一線を画し、「作品そのものの価値」を評価するアワードとして知られる『韓国大衆音楽賞』(Korean Music Awards/KMA)
2026年2月26日、ソウル・麻浦(マポ)区のムシンサ・ガレージにて第23回授賞式が開催された。韓国インディー専門メディア「BUZZY ROOTS」は、全受賞作品と選評を日本語で公開している。
2004年に創設されたこの賞は、K-POPのみならずロック、オルタナティブ・ロック、ヘヴィネス(メタル / ハードコア)、フォーク、ジャズなど幅広いジャンルを評価対象とする音楽賞だ。初年度は14部門でスタートし、23回目となる今年は総合分野4部門、ジャンル別20部門、特別分野2部門の計26部門が表彰された。
同賞は音楽評論家や業界専門家による選定委員会を中心に運営され、公的機関や民間企業の後援を受けながら開催されてきた。ポピュラー音楽以外の多様なジャンルを顕彰する点では、開催規模の違いはあるものの、台湾の『金音創作奨(Golden Indie Music Awards)』に近い存在とも言える。商業的な人気だけでは測れない韓国ポピュラー音楽の現在地を示すアワードとして、国内外の音楽ファンやメディアから注目を集めている。
「今年のアルバム」賞には、CHUDAHYE CHAGIS『SOSUMINJOK』が輝いた。韓国の伝統儀礼音楽である巫歌(ムガ)に着想を得ながら、現代的なサウンドで再構築した意欲作として高く評価された。
今年の受賞結果について、BUZZY ROOTS編集長・Akariよりコメントが届いた。
今年の受賞結果で目立ったのは、CHUDAHYE CHAGIS、KIRARA、Sik-K & Lil Moshpitなど、ジャンルの境界を軽やかに越えていく作品の強さでした。社会に対し鋭い問いを投げかけ、新人ながら多くのリスナーから支持されているWoo Huijun(ウ・ヒジュン)や、同世代との連帯を体現してきたHANROROの受賞も印象的でした。この不安定な時代に、音楽を通じて人々に寄り添ってきた二人が評価されたのは納得の結果だと感じます。
一方、EffieやNMIXXのように多数ノミネートされながら受賞を逃したケースもあり、改めて26部門のノミネートリストを眺めてみると、受賞作に劣らない発見がいくつもあります。受賞作はもちろんのこと、候補作まで掘り下げてチェックしていただけたら嬉しいです。
BUZZY ROOTS編集長・Akari
なお、「今年の新人」と「最優秀オルタナティブ・ロック・ソング」を受賞したウ・ヒジュンは、4月12日(日)に神奈川〈江ノ島 Diner OPPA-La〉で来日公演を予定している。
注目の受賞作品の詳細な選評は、BUZZY ROOTSの記事を参照してほしい。
ディスクユニオン、アジア音楽の仕入れを強化 完売タイトルも続出
アジア各地の新譜が、日本のレコードショップにも次々と入荷している。なかでも積極的な動きを見せているのが、老舗のディスクユニオンだ。この背景について、ディスクユニオンのアジア音楽担当バイヤー・田川氏に独自取材を行った。
ディスクユニオンでは約2年前からアジア音楽作品の仕入れと販売を強化しており、輸入盤だけでなく国内盤リリースや限定レコードの取り扱いを通じて、日本のリスナーへの紹介を継続している。これまでにも、Meaningful Stone『A Call From My Dream』(韓国)、Enno Cheng『Moon Phases』(台湾)、SALIN『RAMMANA』(タイ)、Diskoria『Intonesia』(インドネシア)など、多くのタイトルが完売となっている。
直近の入荷作品からも、そのラインナップの広がりがうかがえる。台湾からはフュージョン・ジャズ・バンド、Skyline Jazz Bandの最新作『City Voices(城市之声)』が登場。Eve Ai、Matzka、LINIONら台湾シーンのミュージシャンが多数参加し、ジャズ、R&B、レゲエ、ヒップホップなど多様な音楽性を横断する作品として注目を集めている。
韓国からも個性的な作品が続く。ピアニスト / シンガーソングライターJeon Jin Hee(チョン・ジンヒ)のアルバム『Without Anyone Knowing(ウィザウト・エニワン・ノウイング)』は3月に日本盤が発売予定。ミニマルなピアノと歌声を軸に、静謐な韓国フォークの魅力を伝える作品だ。また《GG RECORDS》からはシンガーソングライター、Herhums(ハーハムズ)の『Binding Chimes(バインディング・チャイムズ)』が国内盤としてリリース予定。さらにタイからは、R&BデュオHYBSのメンバーとして知られるKarnによるソロプロジェクトWIMの1stアルバム『NOICE』も入荷している。
また音源販売だけでなく、イベント展開にも力を入れている。3月11日にはタイのシンガーソングライターpamiによるインストアイベントを渋谷の〈diskunion ROCK in TOKYO〉で開催。ライブパフォーマンスやサイン会を通じて、海外アーティストと日本のリスナーを直接つなぐ場を提供している。
「お客さまからは、ユニオンが紹介するアジア音楽の取り扱いが増えてありがたいという声を多くいただいており、嬉しく思っています」(同・田川氏)。同社の強みであるスピードや流通量、情報量を活かし、良い作品があれば直接連絡を取り、迅速に日本のリスナーへ紹介することを心がけているという。その結果、これまで日本で紹介される機会の少なかったベトナムやタイなどのアーティストのフィジカル作品の流通量も増えてきた。
今後も新譜の仕入れ拡大に加え、日本盤制作やイベントの実施を積極的に進めていく予定だ。アジア音楽のフィジカル流通が広がるなか、レコードショップは海外アーティストと日本のリスナーをつなぐ重要な接点になりつつある。
都市フォーカス:香港「ロングヒットGDJYB『<=P:r0J3CT 2222/>』が描く“成功”を問い直す物語」
香港のフィメール・マスロックバンドGDJYB(雞蛋蒸肉餅)が2025年12月に発表した最新アルバム『<=P:r0J3CT 2222/> 』が、リリースから数か月を経ても注目を集めている。Spotify公式プレイリストへの選出や、アルバム制作のために実施したクラウドファンディングの成功など、支持を広げている。GDJYBのメンバーに話を訊いたところ、この支持の裏側にはアルバム制作への緻密なコンセプト設計、そして地道な努力があることがわかった。
本作は、人々が“スコア”によって社会階層を決められる架空の未来都市「2222年」を舞台にしたコンセプトアルバムだ。社会が定める成功の基準と個人の幸福のあいだで揺れる人々の葛藤が物語として描かれる。ボーカルのSoftは「本作で描いた世界では、愛やさまざまな資源ですらそのスコアによって分配されます。人は幼いころから上の階級を目指すよう教えられる一方、周囲と同じように“普通”であることも求められます。その矛盾の中で多くの人が迷いを抱えています」と語る。そして「成功を定義するのは誰なのか。自分が幸せで後悔がなければ、それが成功だ」と続ける。
本作では、アルバムの世界観を先に構築し、それに沿って楽曲を制作。アルバム全体をひとつの物語として体験できる構造になっている。Softは「今回は映画のサウンドトラックのように、物語の展開に合わせて感情の流れを設計しました」と説明する。
映像面では、予算の都合上アルバムの世界観そのものを再現することは難しかったという。その分、「自分自身と世界を理解し、それらがどのように反映されるか」というポイントに焦点を絞った。ミュージックビデオを手がけたベーシストのWingは、“草西 Grass West”でストップモーションを取り入れ、内面的な葛藤を表現。「世界のリズムに盲目的に従うのではなく、自分自身の未来を探してほしい」というメッセージを込めたという。
GDJYBは女性バンドとしての立場にも意識的だ。Softは「歴史的に有名な女性バンドは多くない。女性はキャリアの“適齢期”が狭いと見なされがちだ」と指摘する。そのうえで「だからこそ、固定観念を超えたい」と語る。
アルバム制作と並行して行われたクラウドファンディングは、資金調達の手段であると同時に、バンドにとって新たな側面を発見する経験にもなった。途中で約1か月ほど停滞する時期もあったが、SNSで制作過程や予算の内訳、メンバーの個性を発信し続け、最終的には目標の115%を達成したという。ドラマーのHei Heiは「さまざまな発信をする過程で、メンバーの隠れた才能が見え、ファンが私たちをより立体的に知ってくれました」と振り返る。
2022年からSoftとギタリストのSoniの二人は台湾へ移住。2拠点で制作を行う現在の体制は、バンドにとって大きな挑戦でもある。Soniは「台湾はとても多様で包容力のある場所」と話し、尊敬するバンドとしてElephant Gym の名を挙げた。
未来都市を舞台に“成功”という価値観を問い直す『<=P:r0J3CT 2222/>』。その物語は、香港という都市を越え、同時代のアジアの若い世代が抱える葛藤にも静かに響いている。
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ニューリリース
Omega Sapien(韓国)『Leader』
もし「2026年、最新のアジアの音楽を紹介してほしい」と言われたら、迷いなくこのアルバムを差し出すだろう。韓国のラッパーであり、オルタナティブK-POPコレクティブBalming Tigerのフロントマンとしても知られるOmega Sapienが、2月12日にリリースした約3年ぶりのソロアルバム『Leader』だ。
東南アジアのダンスミュージックに着想を得た本作。アルバムアートワークにはスパイスの瓶の写真が描かれており、聴く前から「何かが起きているに違いない」という期待感を呼び起こす。
これまで RM(BTS)、Vernon(SEVENTEEN)、MILLIらとのコラボレーションでも知られるOmega Sapien。本作で彼が目指したのは、タイトルの通り「アジアの次世代リーダー」となるサウンドだ。
その方法論は明快である。全8曲はそれぞれ東南アジアのローカル電子音楽を参照しながら、K-POP的なポップネスとヒップホップのフロウを大胆に融合。各地域のリズムが次々と現れるサウンドは、まるでアジア各国のスパイスを混ぜ合わせた料理のように多層的で、Omega Sapienのエネルギッシュなラップとポップなフックがその中心で躍動する。
タイトル曲“Krapow”は、タイの国民食パット・ガパオから着想を得た楽曲。チャチャチャをローカライズしたタイのダンスリズム「3 Cha(サムチャー)」を基盤にしたトラックだ。一方、“I Get Money”や“Coca-Cola”にはフィリピンのダンスミュージックBudots(ブドゥツ)の影響が見られ、“Swag”では南インドのKuthu(クットゥ)、“Hajima”ではインドネシアの高速EDM Jedag Jedug(ジェダグ・ジェドゥグ)が参照されるなど、アジア各地のクラブサウンドがアルバム全体に散りばめられている。
こうした音楽的引用が、単なる“エキゾチックな装飾”に終わっていない点も重要だ。制作にはブドゥツの“父”と呼ばれるフィリピンのDJ Loveをはじめ、マレーシアのMulan Theory、日本のRyuseigun Saionji(西園寺流星群)、韓国のGuinneissikやUnsinkableなど、各地のプロデューサーが参加。現地の文脈を持つクリエイターと共に音を作り上げることで、アルバムはより具体的な地域性を帯びたものとなっている。
Omega Sapienはこれまでも、Balming Tigerとしての活動や多国籍コラボレーションを通じて、K-POPの外側からグローバルポップの更新を試みてきた。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『Clockenflap』、『Megaport Festival』、『Maho Rasop Festival』などアジア各地の大型フェスティバルを巡るツアー経験も、本作の背景にあるだろう。
『Leader』は、音楽文化が西洋中心のものだけではないことを、より開かれた形で提示する作品だ。韓国発のポップがアジア各地のローカルダンスミュージックと結びつき、より広い「アジアのクラブサウンド」へと拡張していく。“リーダー”という言葉は、単なる自己主張ではなく、アジアの音楽が横断的に混ざり合う未来を示す宣言でもある。
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ena mori(フィリピン / 日本)『Ore』
フィリピンと日本にルーツを持つアーティストena moriが、6曲入りEP『Ore』を2月27日にリリース。前作EP『rOe』(2025年)の柔らかな世界観をあえて裏返すような、より鋭利なポップへと舵を切っている。
『rOe』が内省的で繊細な感情をポップ・ファンタジーへと昇華した作品だったとすれば、『Ore』はその感情をより大胆に提示するアルバムだ。当初は『rOe』と『Ore』は一体の作品として構想されていたが、やがて互いに独立した姉妹作として形を成した。ena mori自身も本作を「新曲を制作する中で、これらを2つに分けた方がより適切に表現できると感じるようになった。rOeの“姉”のような存在」と語る(出典:プレスリリース)。より率直で、意見をはっきりと持ち、荒々しさも恐れない──その姿勢が、サウンドの随所に刻まれている。
コンセプトの中心にあるのは、彼女自身の「大人になる過程」である。これまで避けてきた感情や不確実さに向き合いながら、自分という存在を社会的な期待や枠組みの外側で定義していく。その過程で生まれる混沌を音楽にしていくことは、彼女にとってある種の自己修復のプロセスでもあったという。リードトラック“19 Underground”は、生き方を模索していた19歳当時の視点から書かれたこの曲は、アーティストとしての目覚めと、自分の居場所となるコミュニティを見つけた瞬間を描く。
またフィリピンと日本という二つの文化のあいだで育った彼女のアイデンティティを色濃く反映した作品でもある。アジア的な家庭環境に根付く価値観やタブー、社会的な圧力、そしてそこに潜む情熱──そうした経験が彼女の世界観を形づくってきた。アルバムには、雨音や炊飯器の電子音、ゲームセンターのノイズ、トラックのクラクションといった日常の断片が散りばめられ、彼女の生活がそのままサウンドの背景として現れる。
プロデューサーにはTim Marquezを迎え、前作『rOe』の滑らかで浮遊感のあるポップとは対照的に、本作では「凹凸のある音」を追求している。ざらついたテクスチャーや不均衡なサウンドが重ねられ、時に不快さすら感じさせる摩擦が作品のリアリティを強めている。ミックスはSam Marquez、マスタリングはEmil Dela Rosaが担当し、その鋭さと空気感のバランスを丁寧に整えた。
ダンサブルなビートと内省的な歌詞を併せ持つ『Ore』は、逃避のためのクラブミュージックではない。むしろそれは、薄暗い地下の空間で互いの存在を確かめ合うような、コミュナルな自己発見の音楽だ。アジア各地で新しいポップの輪郭が模索されるなかで、ena moriは個人的な記憶と文化的経験を素材に、より力強いポップの形を提示している。
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Lucid Express(香港)『Instant Comfort』
香港のシューゲイズ / ドリームポップ・バンドLucid Express が、5年ぶりとなる2ndアルバム『Instant Comfort』を発表した。2021年のデビュー作『Lucid Express』で国際的な注目を集めた彼らにとって、本作はその後のツアー経験を経てバンドの音楽的射程を広げた新章と言える作品だ。
音楽メディア「Sleep Like a Pillow」に掲載されたインタビューによれば、2014年にAndy(Gt / Cho)を中心に結成。香港を拠点としながらアジアのみならず欧米でも活動を展開してきた。テキサスのサイケ/ ドリームポップ系フェス『LEVITATION』や香港最大級の音楽フェス『Clockenflap』への出演を重ね、近年はアメリカでのヘッドラインツアーも成功させている。さらにロサンゼルスとニューヨークで開催されたシューゲイズ・フェス『SLIDE AWAY』ではThe Pains of Being Pure at HeartやNothingらと並び、アジア勢として唯一ラインナップに名を連ねた。また、2025年11月に開催された『BiKN shibuya 2025』にも出演。こうした海外での経験が、本作のサウンドにも色濃く反映されている。
アルバムの先行曲“Something Blue”は、Lucid Expressの持ち味であるドリーミーな浮遊感と轟音ギターが鮮やかに重なる一曲だ。ギターのレイヤーの上で、ボーカルKim Hoの歌声が以前よりも自信に満ちた響きを見せ、バンドの成熟を感じさせる。続く“Promise Me”や“Dark Glass”では、シューゲイズ特有のうねるようなギターウォールとエモーショナルなボーカルを組み合わせ、これまで以上に感情の振幅を強調したアプローチを試みている。
一方で従来のシューゲイズに留まらない広がりも見せる。エンジニアを務めたKurt Feldman(The Pains of Being Pure at Heart)を想起させるジャングリーなギターが印象的な“Setback”や、ドリームポップとギターポップのバランスが際立つ“Take Heart”など、メロディアスな側面を押し出した楽曲も収録。轟音とポップネスのあいだを往復することで、アルバムはより立体的なバンド像を描き出している。
『Instant Comfort』は、香港という都市から生まれたインディーロックが世界のシューゲイズ・シーンと交差しながら進化していく過程を示す作品でもある。アジアのインディーシーンが国境を越えて広がるなかで、Lucid Expressはその中心で、ドリームポップの新しい地平を静かに押し広げている。
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Mong Tong(台湾)“Dim Pop”
台湾の兄弟サイケデリック・デュオ、Mong Tongが、2月13日に新曲“Dim Pop”を発表した。2019年から続く彼らの「Pop」シリーズの最新作で、7作目にあたる。では、そもそも「Pop」とは何なのか、独自に話を聞いた。
これまでの「Pop」シリーズは、台湾原住民音楽(“Mountain Pop” / 2019年)、ビデオゲーム音楽(“Thunder Pop” / 2020年)、日本の“流し”文化(“Nakashi Pop” / 2021年)、韓国民謡(“Minyo Pop” / 2022年)、テレサ・テンの名曲“安平追想曲”(“Anping Pop” / 2023年)、第四世界音楽(“Jintro Pop” / 2025年)など、アジアや周辺文化を横断するテーマで展開されてきた。
共通点について「Popシリーズでは、僕たちなりのポップミュージックを定義しようとしてきました。制作では、よりメロディックで柔らかく、キャッチーなサウンドを意識しています」と、ホンユー(Ba & Syn / 兄)は語る。
最新作“Dim Pop”で彼らが着目したのは、中国の伝統音楽である国楽。プロダクション面では新たな試みも取り入れられている。
「今回はTeenage Engineeringのドラムマシンを3台使いました。EP-133 K.O.II、EP-40 Riddim、EP-1320 Medievalです。これほど多くのドラムマシンを同時に使うのは初めての試みでした」(ジュンチー / Gt & Syn / 弟)
こうした実験を経て完成した“Dim Pop”は、彼ら特有のミニマルなループと多層的なパーカッションを軸に、国楽の旋律的な響きをサイケデリックな電子ポップへと変換した一曲となっている。
「Pop」シリーズは今後も継続する予定だという。「10作目くらいになったら、このシリーズを一つのアルバムとしてまとめるかもしれません」(ホンユー)
アジア各地の音楽文化を横断しながらポップの概念を拡張してきたこのシリーズ。次回はどの音楽文化と彼らの「Pop」が結びつくのか。早くも次作が待ち遠しい。
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Good Luck Chuck(シンガポール) “Stay With It”・”Let It Blur”
シンガポールを拠点に活動するPietrekとJayによるインディー・デュオ Good Luck Chuck が、2026年1月23日に“Stay With It”を、3月6日に“Let It Blue”をリリースした。2021年以来、約5年ぶりの新作であり、今年6月にリリース予定のフルアルバムへとつながる先行シングルとなる。
これまでGood Luck Chuckの二人は長年の友人同士で、地理的な距離や生活の合間を縫いながら、デモのやり取りや短期集中の制作を繰り返すスタイルで楽曲を制作してきた。結論へと急ぐのではなく、時間の流れや反復の中に身を委ねる感覚を描いている。
サウンド面では、ループを基調としたミニマルな構成の中で、徐々に感情が盛り上がっていく展開がシンプルながら印象的だ。ルーツとしてはPietrekがTame ImpalaやBalu Brigada、almost monday、Jayは Rage Against the Machine、Arctic Monkeys、Lenny Kravitzなどを挙げる。こうしたバックグラウンドが交差することで、本作にはインディーポップとロック、ミニマリズムなど様々な質感が同居している。
“Stay With It”は、次作アルバムの方向性を示す1曲。プロセスそのものを重視する彼らの姿勢は一貫しており、本作はその現在地を静かに映し出している。
日本開催のアジア音楽イベント情報
3月
【来日】10CM(韓国)
人気シンガーソングライター。韓国、タイ、シンガポール、日本など複数都市を巡るアジアツアー開催。
日程:2026年3月28日(土)
会場:東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
詳細:https://www.mahocast.com/ce/c/90
4月
【来日】Flesh Juicer(台湾)
台湾ラウドロックシーンを代表するFlesh Juicer(血肉果汁機)が、2年ぶりに日本へ―。
Crystal Lake主催『HYPERSPACE JAPAN TOUR』への出演に加え、ハードコアフェス『FURIOUS WORLD FEST 2026』への参加が決定。さらに2026年4月7日には、東京でも公演を行う。
HYPERSPACE JAPAN TOUR 2026
日程・会場:
2026年4月1日(水)東京・吉祥寺SEATA
2026年4月2日(木) 名古屋・新栄シャングリラ
2026年4月3日(金)大阪・Yogibo HOLY MOUNTAIN
詳細:https://eplus.jp/hyperspace/
FURIOUS WORLD FEST 2026
日程:2026年4月4日(土)
会場:大阪・Yogibo META VALLEY/Yogibo HOLY MOUNTAIN
Flesh Juicer Japan 2026
日程:2026年4月7日(火)
会場:東京・GARRET udagawa
共演:Tatsuya (from Crossfaith) & MAZE
詳細:https://eplus.jp/fleshjuicer/
【来日】Sorry Youth(台湾)
PEDROと、今年結成20周年を迎えるスリーピースロックバンド・Sorry Youth(拍謝少年)のツーマンライブ『Sorry Youth x PEDRO “Outta My Way” Release Tour 2026』。
日程:2026年4月3日(金)
会場:東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
詳細:https://eplus.jp/sf/detail/4478040001
【来日】Mount XLR(韓国)
日韓双方で現在進行形の電子音楽を共有するような空間を目指すパーティ『umm edition』に、電子音楽家・Mount XLR が出演。
日程:2026年4月3日(金)
会場:東京・Spotify O-EAST 3F
詳細:https://buzzyroots.com/news-article/umm-edition-vol3-mountxlr/
【来日】Lee Hee moon(イ・ヒムン)、Jung Eun Hye(チョン・ウネ)、CADEJO(カデホ)(韓国)
韓国民謡とバンドサウンド、語りとリズムが交差する二つの公演を通して韓国民謡が生きる「今」を体感するイベント『韓国民謡、バンドと踊る』が4月3日(金)・4日(土)の2日間開催。4月3日はイ・ヒムン×CADEJO、4日(土)はチョン・ウネ×CADEJO。
日程:2026年4月3日(金)/ 4日(土)
会場:大阪・大阪韓国文化院 ヌリホール
詳細:https://k-culture.jp/info_news_view.php?number=3311
【来日】PiA(台湾)
台湾のシンガーソングライター、PiAが日本でのファンミーティング「PiAと遊ぼう!」を開催。
日程:2026年4月5日(日)
会場:東京・中目黒OOPS!
詳細:https://tiget.net/events/471042
【来日】CADEJO &Woo Huijun(韓国)
韓国屈指のジャムバンドCADEJOとシンガーソングライターWoo Huijun(ウ・ヒジュン)の共演ライブ『SUNDAY MIX』。
日程:2026年4月12日(日)
会場:神奈川・江ノ島 Diner OPPA-LA
詳細:https://sundaymix.peatix.com/
【来日】Silica Gel(韓国)
フジロックにも出演した韓国のインディバンド・Silica Gelが日本のバンド・Tempalayのツアー『Tempalay presents “Fusion-HA.”』のゲストに登場。
日程:2026年4月28日(火)
会場:東京・Zepp Haneda
詳細:https://tempalay.jp/live/live_1898/
【フェス】『SYNCHRONICITY’26』
2026年4月11日(土)、4月12日(日)に東京・渋谷にて開催の都市型フェスティバル。The Crane (台湾)、Bugs of Phonon (台湾)、Wellsaid (香港)、Basajan (インドネシア)、VEGA (タイ)、ena mori (フィリピン/日本)らアジア出身のアーティスト含む、合計140組が出演する。
日程:2026年4月11日(土)、4月12日(日)
会場:東京・Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / 他
公演詳細:https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2563183
5月
【来日】Strawberry Lust(中国)
ドリームポップ/シューゲイズを軸に、ゴシックでロマンティックな陰影を描くStrawberry Lustが来日。イベント「Haunted by Memories」に出演。
日程:2026年5月5日(火・祝)
会場:東京・新代田FEVER
詳細:https://eplus.jp/sf/detail/4484580001-P0030001
【来日】Noridogam(韓国)
韓国のインディーシーンをリードするSilica Gelのキム・チュンチュによるソロプロジェクト、Noridogamが新譜『TRUTHBUSTER』を3月18日(水)にリリース。特別来日公演が能楽堂にて開催決定!
日程:2026年5月9日(土)
会場:東京・能楽堂
■【来日】DAMONS YEAR(韓国)
韓国インディーシーンで絶大な人気を誇る孤高のカリスマ DAMONS YEARが日本では初となるワンマンライブを開催。
日程:2026年5月16日(土)
会場:東京・青山 月見ル君想フ
詳細:https://www.moonromantic.com/post/260516n
【フェス】『CRAFTROCK FESTIVAL ’26』
2026年5月9日(土)・10日(日)に、東京・立川ステージガーデンにて開催される、音楽とクラフトビールを共に楽しむフェスイベント。台湾のSorry Youthが5月9日に出演。
日程:2026年5月9日(土)・10日(日)
会場:東京・立川ガーデンステージ
出演:Sorry Youth(台湾)、Age Factory、 bacho、the band apart、cero、 NEWgoethe、グソクムズら合計20組以上
公演詳細:https://craftrock.jp/fes2026/
【イベント】方南町タイまつり2026
毎年恒例! 東京メトロ丸ノ内線「方南町駅」にてタイまつり開催。方南町にてタイのエネルギーを一極集中!タイを感じに来てください!
日程:2026年5月31日(日)11時〜18時
会場:方南銀座商店街
日本語で読める・聴けるアジア音楽情報
日本語で読める、アジアの音楽に関するメディア情報を幅広くお知らせします。
Web記事
Noridogam(韓国) ×mei ehara
「ゲーム音楽」と孤独が繋ぐ日韓インディの感性(NiEW)
https://niewmedia.com/specials/2603noridogam_edokd_wrdch/
ウォン・カーウァイ(香港 / 映画監督)
ウォン・カーウァイが語る『繁花』。90年代上海、欲望と熱狂の時代をどう描いた?(CINRA)
https://www.cinra.net/article/202603_hanka_ysdkr
Lucid Express(香港 / バンド)
Lucid Express インタビュー | ストイックに突き詰める安らぎの音楽(Sleep like a pillow)
https://www.sleep-like-a-pillow.com/interview-lucid-express/
サウヤーリ(台湾 / 原住民シンガー)
【インタビュー】「ルーツを大切にする心を知って」、台湾原住民シンガーのサウヤーリさんが大阪でパフォーマンス(エンタメOVO(オーヴォ))
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1505659
Silica Gel(韓国 / バンド)
「韓国文化通信」Vol.32 バンド・Silica Gel(BRUTUS.jp)
https://brutus.jp/post-483568/
ジェイ・チョウ(台湾 / ポップ歌手)
アジアで最も影響力のある人物の一人、ジェイ・チョウの魅力と過去のインタビュー(uDiscovermusic日本版)
https://www.udiscovermusic.jp/columns/throw-back-to-the-future-108
Rimba(インドネシア / バンド)
「予測不能なポップの森へ」 インドネシア発Rimbaインタビュー(BIG ROMANTIC RECORDS)
https://www.bigromanticrecords.com/single-post/rimba-interview
イベントレポート
大友良英
「MUSICS あるいは複数の音楽たち」を振り返って(ele-king)
https://www.ele-king.net/columns/012159/
アーティストの表と裏、その挑戦を見つめて
Music Lane Festival Okinawa2026フェスティバルレポート後編(Music Lane Okinawa)
ラジオ / ポッドキャスト
NHK-FM『エイジアン・ミュージック・ニュー・ヴァイブズ』
現在不定期で放送中の『エイジアン・ミュージック・ニュー・ヴァイブズ』が4月より隔週で放送決定。初回は4月5日(日)22:40~23:30。
詳細:https://www.nhk.jp/p/amnv/rs/M695PP15Z6/
オールナイトアジア (仮) ALL NIGHT ASIA
韓国・台湾・タイ・世界のフェスを巡る CUEW プロジェクトマネージャーにアジアの音楽フェス最前線を聞く!【前篇】
コリアン・ミュージック・デリバリー
EP.11|Balsin企画「umm edition」Mount XLR来日公演を深掘り!
EP.10|韓国インディ30年の歴史 vol.4 ゲスト:音楽評論家キム・ユナさん
動画
【日本語字幕】 インタビュー:韓国の音楽フェス好きを魅了する「DMZ Peace Train Music Festival」の哲学
次回予告 / 情報募集
次回の更新予定:4月25日前後
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WRITER

- 音楽ライター / 編集者
-
神奈川県在住。2017年頃よりアジアのインディー音楽シーンを中心に、アーティスト・業界関係者へのインタビューを通して業界動向を取材し、Webメディア、雑誌、ラジオなど各種媒体にて発信。アジアの音楽関係者100人に会いに行くプロジェクト「Asian Experimental 100 People」を運営。実はフルタイム会社員であり、未就学児の母でもある。
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