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東海岸大地芸術祭(Taiwan East Coast Land Arts Festival)

MUSIC ART 2025.08.26 Written By 青木 里紗

台湾・台東県成功鎮に位置する〈東部海岸国家風景区〉で『東海岸大地芸術祭(Taiwan East Coast Land Arts Festival)』が開催中だ。台湾交通部観光局所属の東海岸風景管理所の主催によって、2015年に始動し今年で11周年を迎える。期間は6月21日(金)~9月9日(火)の間。台湾の東海岸各地域の特性に応じた持続可能性や環境への配慮などをテーマに、アーティストによる現地での創作活動や、人気のライブパフォーマンス『月光海コンサート』、職人たちの作品が販売されるマーケットなどを組み合わせた、文化的プラットフォームを形成する。

 

今年のキュレーションテーマは『河口になる(出海口)』。

 

芸術祭の舞台となるエリアは、急峻な山々が太平洋に迫るように位置し、無数の短い急流が山頂から流れ込む河口にある。このような川と海が交わる地形は、山と海の養分が豊かに渦巻く生命のゆりかごであり、無数の海洋生物が産卵や捕食のために集まる聖域でもある。「海と陸は一体である」という地域に根付く空間認識や存在哲学のように、『東海岸大地芸術祭』も、山と海、自然と人、地域と世界がつながる『出海口』を目指しているという。

 

今年は台湾国内外から4組のアーティストがレジデンスに参加。ハンガリー出身で現在は日本在住のSandor Zelenak、台湾のアーティストである伊命.瑪法琉、峨冷.魯魯安(安聖惠)、J工廠&W工坊(林俊德+高惟維)が、『出海口』をテーマに現地で制作を行い作品を展示している。この他にも、東海岸エリアには、毎年、本芸術祭のために制作された作品が増えており、過去作品も自由に見学することができる。

Sandor Zelenak『Wadihan迴響』
伊命.瑪法琉『溯源之旅』
峨冷.魯魯安(安聖惠)『faki的背影』
J工廠&W工坊(林俊德+高惟維)『繽紛跳耀東海岸-成為出海口』

さらに現在、大阪で開催中の『EXPO 2025大阪・関西万博日本万博』でも、台湾・台東出身のアーティストである賴純純(ライ・チュンチュン)による作品『希望の花』を展示中だ。日本にいながら、本芸術祭の雰囲気の一部を感じられる機会なので、こちらもぜひチェックしてほしい。

賴純純『希望の花』

本芸術祭のハイライトである『月光海コンサート』は、都歴ビジターセンターで夏至の日にあたる6月21~22日、そして7月11~12日、8月9~10日、加えて9月8~9日の計8回が開催予定だ。7~9月の開催日はいずれも満月の日。各コンサートには異なるテーマが設けられ、国内外のアーティストによる音楽やダンスのパフォーマンスが行われる。まず、中華圏の音楽シーンにおいて最も栄誉ある賞である金曲奨にて、本年度の最優秀作詞家賞を受賞した張淦勳(チャン・ガンシュン)が8月10日に出演。9月8日には、国立伝統芸術センター台湾音楽館と共同で台湾先住民族音楽の系譜をたどる歴史的セッションが行われ、さらに最終日となる9月9日には、2025年グローバル・ミュージック・アワード金賞を受賞したSauljaljui 戴曉君が出演する。多彩なプログラムが目白押しでどの日も見逃せない。

またマーケットでは、花蓮・台東エリアの生活や文化を反映した工芸品や、地元の食材を活かしたグルメなどが数多く出店。地元の飲食店が台東の山海の恵みをフルに活用し、さまざまな調理法で料理を提供する『台東スローフードフェスティバル』に参加したクリエイターなど個性豊かな出店者が集う。ここにも環境への配慮や文化の多様性への意識が受け取れるだろう。

台東の豊かな自然を感じられる本芸術祭。台湾に何度も足を運んでいる人も少なくない。たまには東に足を伸ばしてみるのはいかがだろうか?

 

会場がある台東県成功鎮エリアは台湾東部でも有数の漁港であり、カジキの突きん棒漁で有名な〈成功漁港〉や、海の幸を味わえる飲食店も数多い。加えて、台東・成功のインフラ整備を進め、地域の発展に寄与した菅宮勝太郎氏の邸宅である〈旧菅宮勝太郎邸〉といった史跡など観光名所も多数ある。山と海の息吹を感じる土地で、芸術祭と合わせて、現地の自然や食文化、歴史にも触れて存分に楽しみたいところだ。

東海岸大地芸術祭(Taiwan East Coast Land Arts Festival)

会期
2025年6月21日(金)~9月9日(火)

 

会場
東部海岸国家風景区、台東県成功鎮

 

アクセス

・公共交通機関 <一例>

【台北桃園空港着】MRTで台北松山空港 → 飛行機で台東空港 → バス・電車で台東駅 → シャトルバス

【高雄空港着】 MRTで 高雄駅 → 鉄道で台東駅 → シャトルバス

 

・自家用車

花蓮市または台東市から省道11号線を使い、125.5km付近で標識に従って会場へ。

 

・有料シャトルバス

1.台東駅 → 都蘭糖廠 → 都蘭ビジターセンター(会場)

2.花蓮・玉里駅 → 安通温泉 → 成功 → 都蘭ビジターセンター(会場)

3.知本温泉 → 都蘭ビジターセンター(会場)

 

シャトルバス(予約制)

 

・ライドシェアサービス (推奨)

LINEやネット予約を通じた相乗りサービス(花蓮-台東)や、乗合タクシーによる交通費の削減も可能。

 

チケット

当日券 / 事前 TWD $1300

現地で購入の場合は、現金のみ。

https://ticket.ibon.com.tw/ActivityInfo/Details/38929

 

詳細や最新情報は以下をご覧ください。
公式Webサイト:https://www.eastcoast-nsa.gov.tw/ja/event/news/5718/

Facebook:https://www.facebook.com/TECLandArtsFestival

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