
Transit My Youthの新たな方向性を示す楽曲がシンセサイザーのフェードインから始まった。温かみのあるギターが絡み合い、バスドラムの四つ打ちが徐々に、そして確実に楽しいことが始まることを報せてくれる。2019年リリースのアルバム『Scrap and Build』の1曲目、“Give me the noise”を聴いた時のことだ。
Transit My Youthは2016年に結成され、大阪を中心に活動する男女ツインボーカルバンドである。パワーポップ、オルタナティヴ・ロックを始めとするジャンルを馴染み深い日本のロック・ミュージックに落とし込み、グルーヴ感の強いシンセ・ポップ・サウンドをつくっている。モリノササイ(Gt / Vo)とナカヤマポンタ(Syn / Vo)による、シンガロングしたくなるボーカルと歯切れのよい演奏が磨かれたのがこのアルバム2作目だ。
ポップなサウンドを奏でる彼らだが、歌詞は内省的であり、若者の誰もが一度は抱える孤独や、なにをしても満たされない日々への不安を歌う。ただ、必ず最後には「救い」があり抱えていた不安を些細なことだと吹き飛ばしてくれる。M2 “Daisy Song”では「死にたいお前の日々の唄 / 生きたい君の日々の痣 / 知らない顔の彼の絵にも / 誰かが1人分の拍手を送るから」と歌い、アルバムを締めくくる M10 “スーサイスーサイ”では「冷静なフリして今日も / 本当は怖くてあーあ」と歌うのだが、曲の最後には「最高な未来へとレッツゴウ」と前向きな気持ちを率直に歌う。
彼らの魅力はライブの一体感を作り出すスピード力だ。1曲目からステージ上で飛び跳ね、自分たちの音楽を全身を使って炸裂させる。身体的動作以外でも、楽器アンサンブルの一体感をツイン・ボーカルで増幅させる姿が、鍵だろう。本作ではそんなライブでの魅力を音源に詰め込みたいという方向性が顕著に見えた。M8 “ghost”では、ギターがチョーキングやグリッサンドを用いて、生き生きとしたライブ感を表現するなど、全員が輪になって演奏しているような楽しい音像だ。
前作『FAN CLUB』では「好きな音楽」というたくさんのおもちゃを床に散らかしたような、楽曲で表現をしたいことが山ほどある若者らしさをぎゅっとアルバムに閉じ込めたという印象を受けた。続く本作では、少し大人になった彼らが、散らばっていたおもちゃを整理整頓することで、「生感」を伝えたいという一貫性が生まれている。遊びのカタチが変わって、彼らのおもちゃはますます増え続ける。
Transit My Youth 『Scrap and Build』
定価:1,528円(税込み)
HOLIDAY!RECORDS購入リンク:
Transit My Youth / Scrap and Build | HOLIDAY! RECORDS DISTRO
収録曲
1. Give me the noise
2. Daisy Song
3. Shut up!!
4. Borderline Friends
5. sleepover
6. 最後のHappy Birthday
7. shuffle girl
8. ghost
9. Scrap and Build
10. スーサイスーサイ
WRITER

- ライター
-
1994年生まれ、鳥取県育ちの左利きAB型。大学院をサッポロビール片手に修了。座右の銘は自己内省ポップ。知らないひと Gt.Vo
OTHER POSTS