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まえばしガレリアでChim↑Pomなど国内外8名の気鋭アーティストによる企画展『remake the world』が開催中

群馬県前橋市に位置する、複合型ギャラリーコンプレックス〈まえばしガレリア〉のギャラリー2で4月26日から企画展『remake the world』が開催されている。

 

バブルの崩壊以降、徐々に「地方再生」という言葉が各地で用いられ、都市再生にちなんだ取り組みがそれぞれの街で行われている。前橋市においては、市内出身のコピーライターの糸井重里氏が手がけた『めぶく』 をコンセプトに文化振興を基軸とした再生プロジェクトを2016年に開始。以降2020年には建築家の藤本壮介氏が手がけた〈白井屋ホテル〉が開業し、建築家の平田晃久氏による〈まえばしガレリア〉が2023年に竣工した。さらに同年秋には運営体制の変更に伴い長期休館を余儀なくされた〈アーツ前橋〉が再開するなど、新旧の文化施設が近年次々とオープンしている。

 

そうした前橋を取り巻く現状において、『remake the world』は「前に進むことの重要性」と「過去と現在を再考する意義」への問いかけ、そしてこれからの街のあり方の共有を目的とし企画された。

 

このテーマに基づき、国内外の8名の気鋭アーティストによる作品が一堂に会する今回。そのうちの一つが、チン↑ポムフロムスマッパ!グループの代表作『ビル・バーガー』である。新宿歌舞伎町の再開発にともない取り壊されたビルを作品化した本作が、8mの吹き抜けスペースに出現し都市再生のあり方を考えさせる。

Chim↑Pom 《Build Burger》2018 にんげんレストランのビルから切り出された全フロアの床、各階の残留物、ミクストメディア approx. h400xw360xd280cm

また、オスカー・ムリーリョの『SQ317(68,500f)』には作家の母国であるコロンビアと、自身が訪れた国や都市が持つ共通の歴史や問題が描かれる。異なる時と場所で制作されたキャンバスのコラージュから成る大型の絵画は、現代においての本質的な多様性のあり方を示すだろう。

Oscar Murillo 《Untitled》 2012 silkscreen and oil stick on paper in artist’s frame 155.9×105cm

街にありふれた企業広告や労働組合の旗、プログレや政治的プロパガンダなどのフレーズ。それらを引用し折衷化することで、一見理想主義を掲げたかのような強いメッセージの本質を問いかける作用をもたらすのは、マーク・ティッチナーの作品だ。

Mark Titchner 《We Want to Live and Improve》 2004 Medium Archival print on aluminum 293×240 cm

こうした国内外の様々な文脈で活躍する作家陣の作品を通じて、今の都市が抱える問題や現状と鑑賞者は向き合うことになるはずだ。

 

都市の再生を、死に直面した街に酸素を吸入して生還させること。寝たきり状態から起き上がらせること。人が歩いている、人が集える場所を地域に関わる全員で作り直していくこと--そう定義した時、果たして今の前橋は、冒頭で触れたような取り組みにより成果を上げていると言えるのだろうか?

衰退をはじめた街は癌細胞のように静かに進行し、気がついた時には手遅れになってしまうのかもしれない。だからこそ今回の企画は、理想的な街づくりのあり方を再考する場として機能することだろう。

 

『remake the world』企画展概要

会期

2025年4月26日(土)~6月8日(日)

時間

11:00〜19:00

場所

まえばしガレリア ギャラリー2
〒371-0022 群馬県前橋市千代田町五丁目9-1

出展作家

Assume Vivid Astro Forcus、Jean – Luc Morrman、 Mark Titchner、Oscar Murillo、Chim↑Pom from Smappa!Group、やんツー、Naze 、ぼく脳(順不同)

定休日

月・火

料金

無料

主催

アートオフィスシオバラ、rin art association

協力

タグチアートコレクション

Webサイト

https://www.towndevelop.jp/news/250418_2250418_2

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