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【安尾日向の見たボロフェスタ2017 / Day1】台風クラブ / MOROHA / テンテンコ / ZAZEN BOYS

台風クラブ

モグラ氏による開会宣言の雄叫びを受け、ボロフェスタ2017のトップバッターとしてマンモスステージに登場したのは、台風クラブ。今年8月に1stフルアルバム『初期の台風クラブ』で全国デビューを果たし、今波に乗っている彼らに、会場の期待は高まる。一曲目はそのファーストにも収録されている”飛・び・た・い”。歌・ギター・ベース・ドラムという「ロックンロール」に必要最小限の要素だけでまっすぐにぶつかってくる。しかし楽曲は決してまっすぐなだけではなく、斜めから迫ってくる。ただ心地よくなんてさせてくれない、でも中毒性のあるクセがたまらない。粘り気のある歪みを帯びたギター、ギターソロだろうと歌い続けるベースライン、甲高いスネアと跳ねるように叩かれるシンバルの鳴るドラム。”相棒”、”春は昔”とMVでもおなじみの名曲が演奏され、ラストは”台風銀座”。バンド名でもある「台風」というワードを高らかに叫ぶキラーチューンだ。曲中の少年と同じように、僕らも台風クラブという台風が日本の音楽シーンを引っ掻き回してくれるのを楽しみにしている。

MOROHA

息を吸う音。会場に静謐さが満ちる。爪弾かれるアコースティックギターと、ポエトリーリーディングのようなラップ。MOROHAの登場だ。1stアルバム『MOROHA』収録の”二文銭”が始まる。MCアフロの闘志むき出しの顔は、遠くからでもわかる鋭すぎる眼差しを放っていた。Gt.UKの美しいアコギの音がビートを作り、華を添え、展開を物語る。2人の殺気が会場を圧倒する。気を抜くとこちらがやられてしまいそうなスリルがたまらない。アフロの咆哮に応えるように、野太い声援が上がる。MCで「今日は個人的に暴力的な気分です」とアフロが話し、どうしたのかと思えば映画『アウトレイジ』を見たからだとか。そんなお茶目なMCに安心していると、曲にぶちのめされる。ラスト”四文銭”のサビで後方のカーテンが開き、KBSホール名物の巨大ステンドグラスがついに顔を見せる。その美しさに息を飲み、曲の展開に心打たれていると、「こんなのより綺麗なものを俺は知ってる。この会場を作っている人の顔、その手が何よりも美しいことを!」と叫ぶ。本当に美しいものとは何か。彼らの言葉はあなたの心の蓋をしていた弱い部分に深く突き刺さってしまうかも。

テンテンコ

どすこいステージに二つのお団子結びをして立ったテンテンコ。彼女は今や伝説となったアイドルグループ「BiS」の元メンバーである。BiS解散後、彼女は独自にクリエイターとしての道を進み、アーティスト、DJ、ファッションデザイナーなど数々の活動を見せている。DJ機材やシンセを前にし、「こんばんは~テンテンコでーす」と挨拶をしてステージを始めた彼女。一曲目は”くるま”。破壊的な電子音が爆音で鳴る。そこにエレクトリックにエフェクトされたテンテンコの声が載る。小柄な身体から攻撃的な音楽が繰り広げられる。なぜ彼女がここまで攻めた音楽をプレイするのか? ここに「アイドル」という存在の特殊さがあるように思う。実はアイドルは、どんなジャンルの音楽でも受け入れられる器なのだ。「アイドル」という器のもと、どんな音楽でも聴かせられるのだ。アイドルグループからは卒業しているテンテンコだが、彼女の天性のアイドル的魅力が、リスナーの音楽の地平線を広げてくれるのかもしれない。10月25日に配信リリースする新曲も披露された、彼女らしいステージだった。

ZAZEN BOYS

4年ぶりにあの向井秀徳が、あのZAZEN BOYSがボロフェスタにやってきた! ベースの吉田一郎の脱退発表から間もないライブということで、彼らの登場を心待ちにしていたファンも多かっただろう。一発目”Fender Telecaster”から、バチバチのお祭り騒ぎが繰り広げられ、「本能寺で待ってる」というフレーズが繰り返される”Honnoji”へと続く。演奏の合間にも、観客からプレイへの賛辞ともいうべき声援が飛ぶ。テクニカルなリズムセクションに踊り狂うファンも。ライブ定番曲”泥沼”では、「完全に下半身が泥沼にハマって身動きが取れない状態でもボール一杯のアレが食いたい」という語りからの”ポテトサラダ”に一時シフトチェンジ。向井秀徳という指揮者に、プレイヤーも観客も遊ばれているような感覚が楽しい。思えば、「本能寺で待ってる」「ズボッとハマった泥沼」「ボール一杯のポテトサラダが食いたい」というお決まりのフレーズと、決してお決まりではない展開とプレイという、その両面が彼らの魅力なのかもしれない。ボロフェスタのステージで誰よりも音楽で遊んでいたのは彼ら、ZAZEN BOYSだったはずだ。

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