INTERVIEW

美味しい中華といいグルーヴ。踊る!ディスコ室町のギタリスト・クマ山セイタ、家業を継ぐ

京都を中心に活躍する6人組ファンクバンド、踊る!ディスコ室町。そのギタリスト・クマ山セイタ氏が、実家である〈中国料理 鳳城〉を引き継ぐとのウワサが耳に。その実を確かめるべく、インタビューを敢行した。

MUSIC 2021.12.01 Written By アンテナ編集部

踊る!ディスコ室町

 

京都の6人組ファンクバンド。京都は上京区、室町通り、武者小路を下がったところ、アパートディスコ室町の420号室からやってきたファンキーでグルーヴィな男たち。2012年結成。2016年「FUJIROCK ROOKIE A GO-GO」出演。2021年、フルアルバム『MUROTOWN』リリース。

与えられた環境で踊るのが一番。 そのスタンスを形成した、少年時代。

──

黒いTシャツにエプロン、コックシューズ。いつもとのギャップに少し驚いたんですが、なんだかしっくりくるなあとも感じている自分がいます。

クマ山セイタ(以下、クマ山)

たしかに、バンドの時とは全然違いますよね。でも、しっくりきてますか。なんででしょうね(笑)

──

これは持論なんですが、音楽家がつくる飯はなぜかうまいんです。例えば、関西ってベーシストとか、ドラマーのカレー屋さんが多かったり。だからミュージシャンと料理人の二足のわらじって僕の中では違和感が全然なくて。

クマ山

僕はギタリストなんですけど、確かに思考的にはベーシストに近いかもしれません。ギターソロとかあんまり前に出たくないし。もちろん出てしまえば、楽しいんですけどね。

──

ちなみに、料理は昔から得意な方?

クマ山

得意ではないですね。ただ、父親がここで店をやってましたから、見てはいました。弟がいてるんですけど、強いて言うなら弟よりはやる方でしたかね。それよりも習い事をたくさんさせてもらっていたんで、そっちに気が入ってたかも。

──

習い事ですか。

クマ山

うちの家庭って、用意してくれる家庭だったんです。幼稚園の時にプールの授業があって。上手い子から順に4つのグループに分けられたんですね。僕は初めてのプールだから、当然一番泳げないグループに入れられる。これが悔しかったって言ったら、スイミングスクールを見つけてくれて、スイミングに通わせてもらったり。小学校に入ってすぐ、同級生に喧嘩で負けたと話すと、少林寺拳法の教室を見つけてきてくれたり。

──

どうにかしたいを解決してくれていたワケですね。では、ギターも両親の影響で?

クマ山

音楽の先生が担任で楽器全般できる人で、当時19が流行っていたんですけど、その話をしたら昼休みギター貸してくれることになって。触ってみると面白かったんで、やり始めました。高校時代はもう少し本格的に触り始めるんですけど、バンドを組むほどじゃなくて。その頃から店の手伝いも始めてましたね。

──

はー、この頃からすでに二刀流だったと。

クマ山

ですね。で、大学に進学して真剣に音楽と向き合い始めて。就活もせず、音楽で食っていくぞって。この時も店を手伝っていたんですが「どうせ店を継ぐんでしょ」みたいに言われることが嫌で「継ぐわけない」って息巻いてました。

力が抜けているのに、スキルフル。今のクマ山セイタを生んだ、広島・福山。

──

でも、今はこうして店とバンドを両立し、しっかり店を継いでいる。何がクマ山さんを変えたんですかね。

クマ山

若い頃って、その道で食っていくのに憧れるじゃないですか。もちろん僕もそうでしたし、周りにもそうじゃなきゃいけない空気が充満していて。そんなタイミングで当時組んでいたバンドが解散になって、どこかのバンドに入らなきゃって探していたんです。そしたら、先輩が「矢印→ってバンドのサポートギター枠譲ろうか?」って言ってくれて。これが転機ですね。

──

サポートギター枠が転機……?

クマ山

矢印→は広島の福山が拠点のバンドなんですが、この福山というエリアが僕を変えてくれたんですよ。この街の音楽シーンって京都とか東京とか大阪みたいな都市と違ってすごくミニマルなんです。もちろん演奏する場所も限られている。音楽だけで飯を食うのもとても難しいから、みんな何かしらの仕事についていて。

──

音楽一本じゃなくてもいい街との出合いですね。

クマ山

そう。みんなすごく楽しそうに音楽をしていたし、テクニックもあったんです。そういう環境に身を置いてみると、あれ?なんでこんなに音楽一本で食うことに固執していたんだろうと馬鹿らしくなってきて。京都で、中華屋を継いだとしても、音楽ってやれるんじゃないか?って思い始めて。そんなタイミングで矢印→が解散になって。

──

福山で仕事をしながら音楽を続けるという選択肢もありそうな展開ですが、2014年に「踊る!ディスコ室町」にギタリストとして加入したと。

クマ山

僕は京都が好きだったし、ここから離れようってのはなかったんです。店も京都ですからね。そこから真剣に料理も覚え始めました。

──

ちなみに「踊る!ディスコ室町」に入る経緯って?

クマ山

関西のバンドに参加したくて、仲良くしてて顔も広かったシンガロンパレードに「ギター探してるバンドないかな?」、「繋がり広げたいから企画の打ち上げ出させてくれへんかな」とかしつこいくらいに言ってたんです。そこで縁があったのが「踊る!ディスコ室町」でした。当時はみんな大学生だったし、僕だけフリーターだったんで、ほんまに合うのか?って不安もあったんですけど、なんやかんやで、今も続いてますね。

──

バンドにフィットした要因はなんだったんですか?

クマ山

僕、与えられた環境に適応するのが好きなんですよ。うちのバンドには、ミキくんっていう絶対的エンターテイナーがいて、彼が「こんなんどう?」って言うてくれて「じゃあ、やってみるわ」って感じで。これが良かったんだと思います。うちの店においてもそうで、親父が考案したメニューを再現しているんですね。自ら新しいものをつくるというより、よいり良い形で再現できるよう技術を磨くことが僕の性分に会っているのかも。あとは、常に周りに助けてくれたり、支えてくれる人がいてくれたって言うのが大きいです。その辺の運はかなり良い方だと思います。

執着や欲を捨てるという行為。それこそが自然であり、今を生きるということ。

──

こうしてクマ山さんのお話を聞いていると、なんというか強い熱とか欲があまりないですよね。

クマ山

そうなんですよ。強いて言えば、テクニックには欲求がありますね。料理を完璧につくるとか、こういうフレーズを完璧に弾けるようになる……とか。

──

確かに、お話を聞いていると、スキルに対する熱は高い……!ここで、ちょっと意地悪な質問なんですが、バンドがメジャーデビュー、東京進出となったらどうしますか。

クマ山

店がありますから、フルで東京に行くって選択肢はないかも。ただこのバンドが僕にとっては最後のバンドだと思っているんです。だから、工夫はすると思います。例えば、店を週に3回しか開けないとか。逆の場合も同じで、店がすごい流行っちゃって、バンド活動に支障きたすかも。となったらこれも同様に店を開ける日数を減らして、時間をつくります。なるべく同じ環境をキープし続けることが僕にとっては大切なのかも。

──

店がアカンなったら……?

クマ山

特別足搔いたり、もがいたりはしないと思います。ただ、できることなら親父が生きているうちにお店を畳むのはいやかなあ。バンドでも同じですね。今のバンドが解散するとなったら、もう音楽はしない。

──

なるほど……。たとえば僕が同じ状況に立たされたら絶対もがいちゃうしあがいちゃうし、しがみついちゃうなあ。

クマ山

もちろん、それは全然悪いことじゃないと思うんです。性格の問題ですよ。僕の場合は与えられた状況をどう楽しむか。そしてその環境をどう守るかが生きる上で大事。極論、食いっぱぐれなければいいと思っているので。

──

お店を継いで、音楽の方に変化はありましたか?例えば、おとなしくなったとか。

クマ山

お店を継いだからということじゃなくて、年齢を重ねた変化みたいなのはあると思います。若い頃はやっぱりやんちゃな音楽になるじゃないですか。そのへんのトゲみたいなのは良い意味で抜けて、円熟してきているなあと思います。お店においてもそうで、だいぶ父の味に近づいてきてると思います。新しいことをするわけじゃないけど、確かな味にはなってきてるかなって。

──

なんだか、クマ山さんと話していると、良い意味で肩の力が抜けますね。セラピーを受けに来た気分です。

クマ山

あはは。まあ無理しない程度にね。足るを知ってがんばるんがちょうどええですから。

──

ですね。今日は、ありがとうございました。

ここまで、欲を抑えた人に今まで出会ったことがない。でもその一方で、料理をメニュー通りに仕立てることやギターのスキルを磨くことにはしっかりとした執着があるから面白い。人は常に目の前の環境にしがみつこうとしてしまう。けれども、流れに身を任せて生きてみるのもアリなのかもしれない。無理はせず続けていく、あかんかったら別のことをすればいい。彼の言葉を聞いていると「バンドは一本で食わなきゃナンセンスなんて時代の終わりがきているんだな」と、なんだか嬉しくなった。

 

取材・文:納屋ロマン

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