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【山田克基の見たボロフェスタ2016 / Day1】BiS / 立川吉笑 / ときめき☆ジャンボジャンボ / 井出ちよの (3776) / 花泥棒

アンテナでは今年のボロフェスタのレポートを、ステージごとにアップするのではなくライブを見たライター別にアーティストをまとめています。少々探しにくいかもしれませんが、これはボロフェスタの掲げる”あなたの好きな音楽”と”私の好きな音楽”を繋げるというテーマを、ライブレポートでもなんとか再現したいと思ったからです。
各ライターのシフトは本人たちに決めてもらっていて、個人の趣味や趣向を反映させました。この記事を見る人が「このライターの趣味は自分に似ているから、レポートに載っている見れなかったバンドをチェックしてみよう」と、ライターというフィルターを通して新しい音楽との出会いの場所にしていただけたら幸いです。

山田克基のボロフェスタ一日目:BiS ⇒ 立川吉笑 ⇒ ときめき☆ジャンボジャンボ ⇒ 井出ちよの (3776) ⇒ 花泥棒

ボロフェスタには毎年ドラマが起こる、そして各アーティストそれぞれのストーリーがある。これは各アーティストやパーティーナビゲーターであるMC土竜からも時々聞かれる事がある。様々なドラマがあるが、その中でも個人的に注目したいドラマを追いかけながらこのボロフェスタ一日目は回る事にした。

BiS

この日のBiSの出演はUnderGroundステージでの出演。BiSを知っている人であれば、地下ステージは疑問に思った方もいるかもしれない。BiSはボロフェスタに何度も出演経験があり、ボロフェスタには重要なアイドルグループだからだ。現在のBiSは実は第二期であり、第一期は2014年に解散、今年の7月に活動再開を発表し第一期メンバーであるプー・ルイとオーディションで選ばれたメンバーで第二期は構成されている。第一期の初出演はUnderGroundステージであり、再始動したBiSは「またここから始めたい」という想いで、BiS側からUnderGroundステージを希望し出演が決まった。

 

そんなドラマがMC土竜からも説明があり、BiSの登場である。フロアに入りきらない研究員 (ファンの総称) たちの熱気からBiSが帰ってくるのを待ちわびていたのが分かる。音が鳴り始めると同時に一斉に踊り出す。怒涛のテンションで展開され、それに応える研究員たち。それはまさに活動再開への祝福であった。4曲目の”BiSBiS”では最高潮に達し、こちらから見ていても一体感が凄かった。全6曲のパフォーマンスからは彼女たちのアイドルとしての新たな覚悟のようなものが感じられた。

立川吉笑 (落語家)

落語家のボロフェスタ出演は今回が初めてである。落語家の出演はどのようにボロフェスタに作用するのか見ものである。噺の内容をここで披露するのも野暮な気がするので触れないことにするが、結論から言うと「落語×ボロフェスタ」本当に良かった。

 

出囃子からどすこいstageに設置された高座に登場し、楽屋の裏話から掴みの笑いを取る。僕たちの緊張を解きほぐしてくれたところで「話」から「噺」への切り替え。流れるように切り替わるのだが、声の出し方も全く違うからか、一気に空気感が変わる。見ているお客さんの集中力を瞬時に高める力があった。この日は自身で創作した落語を披露したが、内容もさることながら共感できるスパイスが散りばめられて聞きやすく面白い。

 

今回落語を聞いたお客さんはバンドの演奏の際のMCにも、より耳を傾けるようになったに違いない。MCはライブにおいて非常に重要なファクターである。落語そのものももちろんだが、ライブにも作用する事になり、結果ボロフェスタを倍楽しめることになったのである。

ときめき☆ジャンボジャンボ

彼らもまたUnderGroundステージを自ら志願したバンドの一つである。久しぶりにボロフェスタへの出演となった彼らがなぜそこを選んだのか。それはきっとUnderGroundステージの魔法である。

 

インストロックバンドである彼らの音が一たびなるとステージ前では笑顔が弾け、それを見た彼らもまた笑顔になる。この距離感によってUnderGroundステージではフロアとステージでお互いに感情が高ぶっていく。そしてステージ上の四者はそれぞれが鍵となり物語を展開していくまさに映画のような楽曲。凄まじい音圧が僕たちに襲い掛かる。これは単純に音量の問題だけではなくボロフェスタとともに歩いてきた彼らの経験とボロフェスタへの愛によるものである。様々な感情が4つの楽器から押しては返す波のようにフロアに充満し、僕らはただその波に漂えば良いだけだった。この感覚はUnderGroundステージでしか味わえない特別なものである。それを最大限に活かした素晴らしい演奏であった。

井出ちよの (3776)

3776は富士山ご当地アイドルでメンバーは募集しているものの現在ソロユニットとして活動するアイドルである。井出ちよの(3776)はなんとそのソロユニットからソロデビューというなんとも不思議な活動形態をするアイドル。そんな彼女がボロフェスタに初登場である。

 

1曲目”ハートの五線譜”から始まり、2曲目の”カードリーダー”との間での自己紹介ではフロアとのコンボ技が炸裂。非常にアイドル然としている。そして曲の前には「来年高校生になったら」というシチュエーションの寸劇も交えてステージは展開された。ギャルや女子力高めの高校生など清純で幼い印象の彼女からは想像できないものである。さらに少し昭和を思わせる不思議なメロディの楽曲が、大人たちの心を鷲掴みにしたのは間違いないだろう。幼さ故、音出しや挨拶の際に見せる素顔に近い顔はまだかなり危うい。しかし、よく考えてみると若干15歳の彼女が、大きなフェスにたった一人でステージに上がっているのだ。もしかすると僕たちは歴史の1ページを見ているのかもしれないと、彼女のステージからは感じられた。今後の彼女の動向に注目したい。

花泥棒

この日特に注目していたのはホールステージに初登場の花泥棒だ。彼らがまだ京都にいて、ボロフェスタのUnderGroundステージに出演していた頃、ライブハウスでも仲良くしていた僕にとってはとても思い入れが深いバンドの一つである。京都から東京に行ったバンドを僕はたくさん見てきたけれど、何だか心配になってしまうのは僕も少し年を取ってきたからかもしれない。しかし、そんな心配を1曲目の”デイドリーム”から吹き飛ばしてくれた。なんてスマートな演奏になったのだろう。Ba イラミナは大きなステージからフロアのお客さん一人ひとりに笑顔を振りまき、Gt /Vo 稲本は持ち前のポップセンスで結い上げられたメロディを以前よりも伸びのある声でクールに歌いあげる。ポップな楽曲もロックな楽曲も4人それぞれが弾きすぎない、大事なところに適格なフレーズが入り、歌を柱にアレンジが構成されている。東京に行ってからバンド全体のアレンジ能力が格段に上がっているのが窺えた。そしてベーシックだが非常に耳なじみの良いコーラスワークで楽曲の風景を彩っていく。

 

最後のMCでボロフェスタへの愛を語った稲本。その表情からこの15周年のボロフェスタが花泥棒の新たなスタートになった事をフロアの全員が感じたのではなかろうか。そして誰よりも感じていたのは、ラストの”渚”で1stステージと2ndステージの間にあるセットの上で誰よりも拳を上げていたMC土竜だった事を最後に記しておきたい。

 

こうして僕の一日目は終わった。大きな愛と大きなドラマがステージとフロアでぶつかり合う。全てが手作りのボロフェスタだからこその距離感と空気感がその環境を作り出しているのだと思う。毎年僕はボロフェスタで音楽が好きで良かったと改めて実感をする。明日も同じように素敵な音楽がKBSホールに響くのが楽しみでならない。

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