REPORT

【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day1】never young beach / 空きっ腹に酒 / 中村佳穗 / 3776

MUSIC 2016.11.01 Written By アンテナ編集部

 

 

 

アンテナでは今年のボロフェスタのレポートを、ステージごとにアップするのではなくライブを見たライター別にアーティストをまとめています。少々探しにくいかもしれませんが、これはボロフェスタの掲げる”あなたの好きな音楽”と”私の好きな音楽”を繋げるというテーマを、ライブレポートでもなんとか再現したいと思ったからです。
各ライターのシフトは本人たちに決めてもらっていて、個人の趣味や趣向を反映させました。この記事を見る人が「このライターの趣味は自分に似ているから、レポートに載っている見れなかったバンドをチェックしてみよう」と、ライターというフィルターを通して新しい音楽との出会いの場所にしていただけたら幸いです。

 

 

 

稲本 百合香のボロフェスタ一日目

 

never young beach ⇒ 空きっ腹に酒 ⇒ 中村佳穂 ⇒ 3776

 

 

 

15周年。この歴史の裏にどんなドラマがあったのか。どれ程の人の努力・繋がり・出会いがあったのかだろうか。そして、今年はどんな未来が・景色が生まれるのであろう。まだ見ぬ期待と興奮を抱き、OPENINGから足を運んだボロフェスタ1日目。ライブイベントが始まる時の高揚感と終わりが近付く切なさがやっぱりたまらない。それが止められなくて、多くの人々が今年もKBSホールに、ボロフェスタにやってきた。もちろん私もそのひとり。

 

 

 

■never young beach

 

never-young-beach_1

 

 

テーマはゴジラというパンチの効いたOPENING後に、モスラに扮したMC土龍はこう語る。「観るたび観るたびかっこよくなっていく。コイツらのことがボロフェスタは大好きです」このラブコールに応えるべく登場したのは never young beach。哀愁漂う歌声とどこか懐かしいフォークサウンドに私たちは聴けば聴くほど惹き込まれていく。“自転車に乗って”でつくりだされた緩やかなサウンドは今日みたいな秋晴れの気候にぴったりだった。

 

 

こうして穏やかな瞬間を楽しんでいると油断は禁物。「もっと元気よく!ぴょんぴょんできるやつ!」と“あまり行かない喫茶店で”でVo.松島がさらに会場を温める。「明るい未来の話 寒い夜でも君とふたりで ふざけたダンスを踊ろう いつまでも側にいてくれよ」と “明るい未来”の優しいフレーズが追い打ちをかけるように心に沁みる。そしてラスト“お別れの歌”を聞き終えた私は確信した。

 

 

自然と笑顔が綻んでいる。こんなライブでフェスのスタートを切ることもまた素晴らしいのだと。こうして、トップバッターはただの盛り上げ役ではないことを彼らが教えてくれたように思う。

 

 

 

■空きっ腹に酒

 

sukipparanisake_1

 

 

間髪入れずに2nd STAGEに登場したのは、初登場である空きっ腹に酒。つい数日前、自身のツアーファイナルを迎えたばかりということもあり、キレッキレのステージングが初っ端から光る。一曲目“音楽と才能”ではいきなり煽り立てるようなコール&レスポンス。こうしてステージとフロアの真っ向勝負がスタートした。「楽しみ方は自由だ」とオーディエンスを誘う一面もたまらなくアガるではないか。“Pa”ではもうお客さんはお祭り騒ぎだった。

 

 

……といった様子でライブが展開されてきたのだが、「この日のハイライトはラストの“夜のベイビー”に尽きるのだ」ときっと私と同じ気持ちの方も多いのではないだろうか。ワンダフルボーイズのカヴァー曲であるがもうそんなことは忘れてしまう、それくらい彼らの色に染まりきっていた。「今日はご存じボロフェスタ。身も心もボロボロでした。だけど受け止めてくれた京都に感謝」とVo.田中によって紡がれたこの日限りの歌詞が愛に溢れ、突き刺さった。

 

 

ロックで感極まるのは初めてだった。まるで壮大なバラードを聴き終えたような感覚が不思議と走っていた。こんな感覚もこれまでにない。ラストには「京都また来るのでよろしくお願いします」と語ってくれた彼らに「この場所でまた会いたい」と心の中で大きく呟いた。

 

 

 

■中村佳穂

 

nakamurakaho_1

 

 

瞬間的な気持ちをありのままに歌う。それが中村佳穂にとっての自己紹介。念願であり、待望の1stSTAGEの大舞台で観客の心をグッと引き寄せる。

 

 

「やって参りましたボロフェスタ!大人の文化祭。やっぱり大きなところは楽しいですね」と気合いも充分の中、“POiNT”“夜のダンス”と立て続けに代表曲を披露。これまでに幾度とステージを共にしてきた自慢のバンドメンバーとともに独自のグルーヴで圧倒していく。

 

 

そしてこの日、ハプニングをチャンスに変えるこんな出来事も。ラストの曲と惜しみつつ、“口うつしロマンス”が始まったかと思いきや、出演時間オーバーが発覚。“72億人分のあの人”に急遽曲目を変更した。それでも何もなかったかのように奏でるのが彼女の底力。自由であることは難しいけれど、自由であるからこそ素晴らしい。そう、ライブに定型なんて最初から存在しないのだ。

 

 

昨年のBeelow stageで一耳惚れした彼女の歌。そのときから「大きなステージもきっと似合う」と感じていた。だからこそ私は「こんな景色を見れるとは思っていませんでした」と語る彼女に「1年後こんな景色が観れて良かった」と盛大な拍手を送った。

 

 

 

■3776

 

3776_1

 

 

土俵が配置されているどすこいSTAGEに突如アイドルが登場した。静岡県富士宮市のご当地アイドルその名も3776 (みななろ) だ。一曲目“登らない理由があるとすれば”が始まると堂々としたステージングに圧倒された。その反面「緊張してるんです」とMCで明かすあどけなさも。そうか。このギャップがきっとファンの心をくすぐっているに違いない。

 

 

“生徒の本業”ではまるで各分野の授業をレクチャーするような場面も。「ひぃ・ふぅ・みぃ……今日もみんなで数えることができます」とまるで授業参観いや、公開授業のようだ。テンポ良い展開がきっと魅力なのであろう。約20分間のステージがあっという間に感じた。「もっと彼女のその先を知りたい」この余韻がその後出逢う井出ちよの (3776) というステージに繋がっていることもまた憎めない。「ライブで京都に来るのが初めて」と話す彼女だったが、確実に足跡をボロフェスタに刻んでいた。現在はソロ活動中とのことだが新メンバー加入予定の今後も楽しみだ。

 

 

 

全4組ではあるがとても見応えがあったDay1。バンド、弾き語り、アイドルとジャンルが違うからこそ面白みと新鮮さを増す。何があるか分からないからこそ探究心はまだまだ続く。Day2でもボロフェスタならではの発見と出逢いに大いに期待したい。

 

 

 

【Day1】

▼山田和季:渡辺シュンスケ / jizue / ゆーきゃん 明るい部屋バンド / Gateballers / DENIMS

▼小倉陽子:台風クラブ / あっこゴリラ / CHAI / 夜の本気ダンス / クラムボン

▼山田克基:BiS / 立川吉笑 / ときめき☆ジャンボジャンボ / 井出ちよの (3776) / 花泥棒

▼稲本百合香:never young beach / 空きっ腹に酒 / 中村佳穗 / 3776

▼則松弘二: And summer club / 岡崎体育  / クリトリック・リス / tofubeats

▼森下優月:TheSpringSummer / bed / サニーデイ・サービス / スカート

 

 

【夜露死苦】

山田克基:mogran’BAR / YeYe / ナカシマセイジ (Alffo Records)  / Seuss / PARKGOLF / 踊ってばかりの国 / HALFBY / どついたるねん / DJ言うこと聞くよな奴らじゃないぞズ / メシアと人人

 

 

【Day2】

▼山田和季:渡辺シュンスケ / jizue / ゆーきゃん 明るい部屋バンド / Gateballers / DENIMS

▼小倉陽子:Limited Express (has gone?) / 女王蜂 / グッドモーニングアメリカ / ナードマグネット / ワンダフルボーイズ

▼山田克基:BiSH / チプルソ / 加藤隆生 (ロボピッチャー) / 渡辺シュンスケ (Shroeder-Headz、cafelon)

▼稲本百合香:生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / manchester school≡ / yonige

▼則松弘二: ミノウラヒロキマジックショー / POLYSICS / MOROHA / eastern youth / THE FULLTEENZ

▼森下優月:天才バンド / 忘れらんねえよ / Have a nice day! / nim / 銀杏BOYZ (弾き語り)

 

WRITER

RECENT POST

COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.1
INTERVIEW
激しい音像で奏でる包み込むサウンドと蒼く優しい世界線 – とがるインタビュー
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #6
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.1
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #5
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #4
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #3
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #2
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #1
INTERVIEW
MCUはどこへ向かう?ミュージシャン・アーティストが語るフェーズ4の今とこれから
REVIEW
折坂悠太 – 心理
REVIEW
STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence
REVIEW
中村佳穂 – アイミル
COLUMN
YMB 作品ガイド 2014~2020
REVIEW
YMB – トンネルの向こう
REVIEW
さとうもかとDENIMS – Loop with DENIMS
REVIEW
Homecomings – Herge
REVIEW
Easycome – Easycome
REVIEW
pont – ぽ
REVIEW
Curtis Mayfield – Something to Believe in
REVIEW
Bill LaBounty – Bill LaBounty
REVIEW
Norman Connors – Take It to the Limit
REVIEW
Leroy Hutson – Closer to the Source
REVIEW
Zac Apollo – Loveset
REVIEW
シュガー・ベイブ – SONGS
REVIEW
Ginger Root – Mahjong Room
REVIEW
大貫妙子 – MIGNONNE
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:下飼 凌太】THE TOMBOYS:多様な音楽を飲み込んだ四人組…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:小川 あかね】Alice Longyu gao:セーラームーンか…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:キドウシンペイ】Emma Jean Thackray:UKジャズ…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:高田 和行】Shygirl:UKでも最もホットなスポットとされて…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:今岡 陽菜】Pom Poko:ノルウェー出身、北欧のジャズ名門校…
COLUMN
【まとめ】編集部員が選ぶ2019年ベスト記事
REVIEW
jizue – Book shelf
REVIEW
Any Luck To You – ベランダ
REVIEW
中村佳穂 – リピー塔がたつ
REVIEW
DENIMS − DENIMS
REVIEW
Creepy Nuts – たりないふたり
REVIEW
Soft Laws – Easy Yoke
REVIEW
ナードマグネット – 透明になったあなたへ
REPORT
『言志の学校』第一回レポート – 作ったからには読んで欲しい!読み手に届くフリーペーパー…
REPORT
映画『明日にかける橋 1989年の想い出』舞台挨拶レポート
REVIEW
King of Gold / Amia Calva
COLUMN
「働きながら音楽活動をする」トークイベント② -小川保幸(DEEPSLAUTER)-
REPORT
「働きながら音楽活動をする」トークイベント① -上杉隆史(Endzweck)-
INTERVIEW
音楽レーベル 「セイカレコード」の活動を追う vol.1 対談レポート -京都のいち芸術大学がレーベ…
INTERVIEW
「MVは誰のもの?」インストバンドsowの企画、”1song,2videos”…
REPORT
コンクリートバー 15周年祭 @KYOTO MUSE 2016.11.11
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day2】生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / man…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day2】ミノウラヒロキマジックショー / POLYSIC…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day1】And Summer Club / 岡崎体育 …
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / 前夜祭】はちみつぱい / cero / Homecomin…
REPORT
color chord × ベランダ × Amia Calva『時計じかけのオレたち』ツアー @Ur…
REPORT
これからミュージックFESTA 2016 @ Live House nano 16.06.26
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】OGRE YOU ASSHOLE / フラ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】キュウソネコカミ / 清竜人25 / I …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】Amia Calva / NATURE D…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】BiSH / メシアと人人 / 夜の本気ダ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Beelow stage】ボギー / 中村佳穂 / ONIGA…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】eastern youth…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】NOT WONK / FL…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】THE FULL TEEN…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 夜露死苦】@ Club Metro
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 1st stage】パスピエ / フレデリック / 在日ファン…
REPORT
【ボロフェスタ2015Day1 / 1st stage】Homecomings / Brian th…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】ミライスカート / 黒猫チェルシー / ト…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】neco眠る / Baa Baa Blac…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / Beelow stage】DOTAMA / ミノウラヒロキマジックショー…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Pygtant!! / S…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】ヤングパーソンクラブ / …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Seuss / Noise…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 前夜祭】Nabowa / ゆるめるモ! / 渋さ知らズオーケストラ
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】後編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】前編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】花泥棒 / my letter / never young…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】渚のベートーベンズ / ナードマグネット / Seuss …
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】Baa Baa Blacksheeps / ONIGAW…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】カトキット / Spacetime And Stream…
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-9m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-Underground Stage,Bee-low stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 夜露死苦 @ CLUB METRO
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day.1-9m stage,Center stage編- @KBSホール 2…
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-Underground Stage,Bee-low Stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-9m stage編- ライブレポート
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-Underground Stage,Bee-low stage編- …
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-10m stage編- ライブレポート
REPORT
マドナシ(キツネの嫁入り)@ 京都GROWLY
REPORT
Amia Calva @ 京都GROWLY ライブレポート
REPORT
wave of mutilation(波)@ 京都GROWLY ライブレポート

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年3月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
黒沼英之「Selfish」- 息苦しい時は、ただ環境が変わるのを待つだけでいいんだよ

シンガーソングライター・黒沼英之が10年振りとなる活動再開後、2作目としてリリースした“Selfis…

COLUMN
【2024年3月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

REVIEW
Forbear『8songs』―歪な自己内省の衝突音が、荒々しくもメランコリックに響き渡る

「Tokyo Positive Emogaze」を標榜する4人組、Forbearが2024年3月1日…

COLUMN
【2024年3月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…