REPORT

ボロフェスタ2014 day2-9m stage編-

【Center stage】ゆーきゃん

本祭一日目、バンド形態のライブセットでBee-Lowステージに暖かな夕べをもたらしたゆーきゃんがcenterステージにソロで登場。左右を愛しの愛DOLL BiSが固めるシュールな舞台セッティング、客席前方には続いて登場するプラニメのファンがガッツリ待機しているというボロフェスタならではの混沌とした光景が広がっていた。

 

”サイダー”、”0764”などの楽曲に加え、ボブ・ディランの”くよくよするなよ”のカバーも披露、京都に慣れ親しんだ人にはもはや生活の一部と化しているであろう、静かな重奏のような彼の歌声がホールにゆったりと響き渡った。このイベントの最重要人物ともいえるゆーきゃん、2003年の開催直前に作ったという”明けない夜”で最終日の幕開けをそっと、しかし誰よりも力強く祝福してオープニングを飾ったのだった。(text:高石瑞希)

【Center stage】プラニメ

カミヤサキ(ex-BiS)とミズタマリ(ex-いずこねこ)からなる2人組ユニット、プラニメが最終日の一番手を務める。最終日ということもあってすでにたくさんの人が会場に集まりプラニメの登場を待ちわびていた。そしてMC土龍の煽りとともに、ボロフェスタ最終日が始まりを告げる。

 

ステージに登場したプラニメは、アイドルの持つ女の子の愛らしさとは一転、強さを象徴していた。曲だけでなく振り付けや彼女らの声からもその強さは受け取れる。2曲目は9月30日にリリースしたばかりの1st singleから”Plastic 2 Mercy”。はしごでステージの上に登り、どんどん煽りを入れると、フロアは一体感を増していく。気づけば、フロアは人で埋まり、前だけでなく後ろのほうでも手があがる。

 

過去は超えられないと言われ続ける彼女らの自らとの戦いは彼女たちを強くさせ、その強さは彼女たちの自信へとつながっていくだろう。大盛り上がりを見せたプラニメ。初のボロフェスタであり、初の京都でのライブは成功を収めた。(text:アンテナ編集部)

jizue

ギター、ベース、ドラム、ピアノこの4つの楽器で結晶のような音楽を紡ぎ出すインストバンド、それがjizueである。ピアノの柔らかい光のようなメロディが印象的な曲からライブは始まった。その気持ちよい空気にずっと体をゆだねていたいと思える心地よい空間を作り上げる。

 

先ほどのゆったりとした曲とは一変、ドラムが打ち出すビートがだんだんと早くなり激しくなる曲へ。周りの熱量もそれに比例し、体を揺らし始める。Pf.片木は体を前のめりにさせ情熱的にピアノを鳴らしている。Pf.片木とDr.粉川が向かい合うようにセットが組まれ、見つめあう姿は2人とも負けん気強いこどもの様な表情を浮かべていたのが印象的だ。そんな風に無邪気に壮大な音塊を生み出す、まるで彼らは音で遊んでいるように見えた。ラストの曲では4人それぞれが速弾きのソロ演奏を披露し、会場からは大歓声があがる。最後の一音までもが全身全霊で一瞬の狂いも見せない演奏は圧倒的であり、終わった後もこの場からなかなか離れることができなかった。(text:アンテナ編集部)

大森靖子&THEピンクトカレフ

会場に入った瞬間、ステージ前には人、人、人。ステージの真ん中に立った彼女はギターをギャンギャンと弾き鳴らし、殺気立つハイトーンボイスをフロアいっぱいに響かせていた。そう、彼女とは大森靖子のことである。“Over TheParty”ではシンガロングが起こり、彼女は完全にこの空間を支配。MCで「セトリなんて変えればいいんだよ!」と言いそこから会場の空気が一変。爆発したみたいに会場の熱量が一気に高まり、大森は勢いよく客席にダイブする。そのあとの“きゅるきゅる”や“絶対彼女”との流れでフロアには張り詰めたような緊張感が充満。瞬きするのも忘れるくらい彼女の圧倒的な歌唱力に呑み込まれたような気分であった。

音楽という表現方法で自分の心の奥そこを隠しもせずこれでもかと見せつける。10年代における新しい表現者として今後もますます彼女から目が離せない。(text:アンテナ編集部)

八十八ヶ所巡礼

「八十八ヶ所巡礼による!貴様らのための!!攻撃的国民的音楽!!!」Ba./Vo.マーガレット廣井の一声で泣く子も黙るプログレショウが幕を開ける。このフェスティバルで最も浮世離れしたその演奏テクニックとエキセントリックな存在感。実は老若男女に愛されるキャッチーさまでも兼ね備えた彼らのパフォーマンスは圧巻としか言いようがない。

 

Gt.Katzuya Shimizuの超絶技巧が全編にわたり流麗に展開されるなか、ライブ中盤の”仏滅トリシュナー”で観客を沸かすと、Dr. 賢三の骨太ソロプレイでねじ伏せるようにこれまた中毒必至の”PALAMA JIPANG”へとつないでゆく。曲中アンプによじ登り、してやったりの表情を浮かべるマーガレット。キャラ立ち甚だしい3人が織り成すグルーヴにホールは支配され、ラスト”日本”ではまさかの国歌斉唱。妖艶さと凶暴さ、浮き浮きとバキバキが渾然一体となる地獄の祭りを目の当たりにした気分だ。(text:高石瑞希)

odd eys×contact Gonzo

京都のodd eyesと新進気鋭の破壊的パフォーマンス集団contact Gonzoの奇跡のコラボレーションが実現した。初めに言っておきたいのだが、ものすごいパフォーマンスであった。

 

中央フロアに突如現れたのは大量の段ボール箱。それを塔のように積み上げ、フィールドを作り上げる。さらにフィールドを囲むようにバンドセットが配置された図を見たときは、この後何が起こるのか全く想像ができなかった。odd eyesの激しく凶暴なサウンドが鳴り出した途端、contact Gonzoが暴動のようなパフォーマンスを始めた。一触即発で殴り合い、タックルのような体当たりを屈強な男たちが何度もしつこく続ける。一人が飛び蹴りを食らわせたかと思いきや、連鎖反応のように同じ人に次々と飛び蹴りが食らわされる。さらには用意された段ボールを全員でぼこぼこにし、観客に向かって投げつけ、威嚇を繰り返す。暴動さながらの殺気放っているが単なるモッシュとは違って、全員が怪我をしない暴れ方を熟知している動き。それはある種ダンスのようだ。彼らのパフォーマンスこそ最先端の芸術作品であろう。

 

今までに見たこともないようなパフォーマンスが繰り広げられ、ただただ呆気にとられてしまった。激しい嵐のような時間はアッと言う間に過ぎていった。まさかこんなパフォーマンスをボロフェスタで見れるなんて思ってもみなかった。彼らの奇跡のパフォーマンスは多くの人の記憶に衝撃として残されたはずだ。(text:岡安いつ美)

Limited Express(has gone?)

ボロフェスタ主催のGt/Vo.JJの在籍する、ボロフェスタに欠かせない存在Limited Express(has gone?)が9mステージに現れた。と思ったのもつかの間、一曲目から脳の処理が追いつかないほどのお祭り騒ぎである。Vo.YUKARIの叫び声を引き金にフロアはモッシュでパニック状態、メンバー全員が楽しそうに演奏する反面MCでは「風の吹きが足んねえんだよ!」とBa.谷ぐちがフロアもメンバーも煽り、さらに熱量は加速する。

 

YUKARIがステージでもフロアでも縦横無尽に走り回り髪をかき乱し、あんなに叫んで酸欠になるのでは、と一周回って不安になるほど圧倒的に声を張り上げてる傍らで、同じように踊りながら演奏している楽器隊がなんとも渋い。最後の曲ではフロアにいる人間をステージに乗れる限り乗せ、最初は遠慮し困惑する人たちも登ってしまえば、またそれを見届けてしまえばもうリミテッドエクスプレスの虜だ。満員電車のようにパンパンになったステージで暴れるお客さんと顔をほころばせながら演奏しているメンバー。爆発するような大盛り上がりを見せ、JJが「来年また会いましょう」と満面の笑みで告げた。(text:うえこ)

川本真琴withゴロニャンず

セクシーなランジェリーみたいな格好と頭にデビルカチューシャをつけて登場したのは川本真琴。キュートな歌声とともに愛らしい子供みたいな笑顔を客席にふりまいていた。途中川本が話しているのにも関わらずゴロニャンずのGt.三沢が中島みゆきの“悪女”をBGMとして歌いだす場面もあり、会場からは爆笑が起こった。勢いづいたままダンサブルなナンバー“DNA”を披露。“まわってまわって”では会場の一体感がぐっと増し、みなが手のひらを天井に向け体をゆらゆらと揺らしていた。それはまるで見えないものを触れようとしているように。

 

最後は“やきそばパン”をプレイ!グルービーにかき鳴らされるギターと安定感のあるリズム隊とともに彼女の小悪魔的歌声が攻撃的に私たちにシャワーみたいに降ってくる。それはそれは気持ちの良いノリノリな雨だ。彼女は気持ちよさそうに何度も「Yeah!」と叫んでいた。帰り際には「ごめん、京都また来ていい?」とこの言葉が何よりも思う存分この瞬間歌いつくし遊びつくし楽しんだ証拠だろう。(text:アンテナ編集部)

WRITER

RECENT POST

COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.1
INTERVIEW
激しい音像で奏でる包み込むサウンドと蒼く優しい世界線 – とがるインタビュー
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #6
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.1
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #5
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #4
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #3
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #2
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #1
INTERVIEW
MCUはどこへ向かう?ミュージシャン・アーティストが語るフェーズ4の今とこれから
REVIEW
折坂悠太 – 心理
REVIEW
STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence
REVIEW
中村佳穂 – アイミル
COLUMN
YMB 作品ガイド 2014~2020
REVIEW
YMB – トンネルの向こう
REVIEW
さとうもかとDENIMS – Loop with DENIMS
REVIEW
Homecomings – Herge
REVIEW
Easycome – Easycome
REVIEW
pont – ぽ
REVIEW
Curtis Mayfield – Something to Believe in
REVIEW
Bill LaBounty – Bill LaBounty
REVIEW
Norman Connors – Take It to the Limit
REVIEW
Leroy Hutson – Closer to the Source
REVIEW
Zac Apollo – Loveset
REVIEW
シュガー・ベイブ – SONGS
REVIEW
Ginger Root – Mahjong Room
REVIEW
大貫妙子 – MIGNONNE
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:下飼 凌太】THE TOMBOYS:多様な音楽を飲み込んだ四人組…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:小川 あかね】Alice Longyu gao:セーラームーンか…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:キドウシンペイ】Emma Jean Thackray:UKジャズ…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:高田 和行】Shygirl:UKでも最もホットなスポットとされて…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:今岡 陽菜】Pom Poko:ノルウェー出身、北欧のジャズ名門校…
COLUMN
【まとめ】編集部員が選ぶ2019年ベスト記事
REVIEW
jizue – Book shelf
REVIEW
Any Luck To You – ベランダ
REVIEW
中村佳穂 – リピー塔がたつ
REVIEW
DENIMS − DENIMS
REVIEW
Creepy Nuts – たりないふたり
REVIEW
Soft Laws – Easy Yoke
REVIEW
ナードマグネット – 透明になったあなたへ
REPORT
『言志の学校』第一回レポート – 作ったからには読んで欲しい!読み手に届くフリーペーパー…
REPORT
映画『明日にかける橋 1989年の想い出』舞台挨拶レポート
REVIEW
King of Gold / Amia Calva
COLUMN
「働きながら音楽活動をする」トークイベント② -小川保幸(DEEPSLAUTER)-
REPORT
「働きながら音楽活動をする」トークイベント① -上杉隆史(Endzweck)-
INTERVIEW
音楽レーベル 「セイカレコード」の活動を追う vol.1 対談レポート -京都のいち芸術大学がレーベ…
INTERVIEW
「MVは誰のもの?」インストバンドsowの企画、”1song,2videos”…
REPORT
コンクリートバー 15周年祭 @KYOTO MUSE 2016.11.11
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day2】生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / man…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day2】ミノウラヒロキマジックショー / POLYSIC…
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day1】never young beach / 空きっ…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day1】And Summer Club / 岡崎体育 …
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / 前夜祭】はちみつぱい / cero / Homecomin…
REPORT
color chord × ベランダ × Amia Calva『時計じかけのオレたち』ツアー @Ur…
REPORT
これからミュージックFESTA 2016 @ Live House nano 16.06.26
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】OGRE YOU ASSHOLE / フラ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】キュウソネコカミ / 清竜人25 / I …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】Amia Calva / NATURE D…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】BiSH / メシアと人人 / 夜の本気ダ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Beelow stage】ボギー / 中村佳穂 / ONIGA…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】eastern youth…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】NOT WONK / FL…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】THE FULL TEEN…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 夜露死苦】@ Club Metro
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 1st stage】パスピエ / フレデリック / 在日ファン…
REPORT
【ボロフェスタ2015Day1 / 1st stage】Homecomings / Brian th…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】ミライスカート / 黒猫チェルシー / ト…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】neco眠る / Baa Baa Blac…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / Beelow stage】DOTAMA / ミノウラヒロキマジックショー…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Pygtant!! / S…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】ヤングパーソンクラブ / …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Seuss / Noise…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 前夜祭】Nabowa / ゆるめるモ! / 渋さ知らズオーケストラ
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】後編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】前編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】花泥棒 / my letter / never young…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】渚のベートーベンズ / ナードマグネット / Seuss …
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】Baa Baa Blacksheeps / ONIGAW…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】カトキット / Spacetime And Stream…
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-Underground Stage,Bee-low stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 夜露死苦 @ CLUB METRO
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day.1-9m stage,Center stage編- @KBSホール 2…
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-Underground Stage,Bee-low Stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-9m stage編- ライブレポート
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-Underground Stage,Bee-low stage編- …
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-10m stage編- ライブレポート
REPORT
マドナシ(キツネの嫁入り)@ 京都GROWLY
REPORT
Amia Calva @ 京都GROWLY ライブレポート
REPORT
wave of mutilation(波)@ 京都GROWLY ライブレポート

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年7月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
東京であぐねる一人の社会人による暮向の記録-砂の壁『都市漂流のために』

何かを期待して上京したある若者。数年過ぎて、東京での生活は慣れたもんだし、仕事に追われる毎日にすら何…

COLUMN
『まちの映画館 踊るマサラシネマ』 – 人生が上手く行かないあなたに贈る、映画館の奮闘記

〈塚口サンサン劇場〉はテーマパークのような映画館だ。スタッフや観客がステージで踊る。ゾンビメイクをし…

COLUMN
【2024年7月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

COLUMN
【2024年7月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…