REPORT

color chord × ベランダ × Amia Calva『時計じかけのオレたち』ツアー @UrBANGUILD  2016.09.04

color chord、ベランダそしてAmia Calvaの3つのバンド共同開催「時計じかけのオレたち」ツアーの千秋楽が木屋町UrBANGUILDにて開催された。今回は出演者にとっても少しいつもと違うライブだったのではないだろうか。各地で活躍するアーティストのライブペイントがステージのバックで演奏と並行して行われていたからである。

トップバッターは今回唯一の女性メンバーが活躍するベランダwith高石瑞希。始まった一曲目“野球部のノリ”のライブペイントでは青いクレヨンの線がさらに薄い青色で縁取られていく。音が激しく、しかし優しい轟音になっていくと青色が見渡す限りオレンジ色に染められていくと、二曲目“レッツサマー”が始まった。安定感のある演奏に一見あわなさそうなオルタナ感満載のリードギターが絡みつく。Ba.鈴子「ライブペイントなんて初めて」とは言うもののここまで曲や歌詞のイメージと合ったのはメンバーが言うように「控え目に言っても最高」だったのではないか。そして最後の“巨大魚の夢”では歌詞の湖のようにペイントも淡く、激しくなっていく演奏の裏で名前の無い「湖の色」へと収束していった。

 

二番手はその日唯一のシンガーソングライターであり、二回出演予定の長谷川健一。今回のライブでは他と違い、ライブペインティングなどのパフォーマンスはなく、薄い電機燈の下でテレキャスター一本のみを片手に弾き語るスタイルだった。しかし、一曲目の「海のうた」を聞いた途端、「シンプルに曲を弾き語るだけ」そのことが逆にその日の彼の存在感を強く示していたと感じた。三曲目は東北で活躍するアーティストKUDANZと共同で作ったという“最後の江ノ島”。「街」東京から「空と海」江ノ島を想う風景を歌った曲であり、その歌詞とメロディーは僕に綺麗な切なさを感じさせてくれた。 今回のイベントで最後に演った“うたうは喜び”の「うたをうたう喜び 生きる喜び」という歌詞。短い曲ではあったが、歌詞を噛み締めながら歌っていたように思える。

その次に出演したのは、Vo.アベフミヒコによる中性的なテナーボイスが特徴なSIRMO STADwithうえこ(VJ)。7月にベースの長友が正式加入したばかりの京都で活躍しているバンドだ。VJのうえこによるライブペイントはベランダの時の高石瑞希のそれよりさらに抽象的で曲の歌詞やイメージとVo.アベの声によってペイントにストーリーが付加されていくようだった。3ピースとは思えない音圧とクオリティーに圧倒されるばかりだった。“Narcissus”の疾走感はライブで見るとさらに強く感じる。フィードバックする音圧は聞き手の体を触るように突き抜けていった。

四組目は北海道札幌を拠点に活動する3ピースのcolor chord with yellow jam(VJ)。yellow jamによるライブペイントはアーティストの歌詞や唄を際立たせるという点では今回のイベントで一番だったと感じる。今回のイベントではオルタナティブロックの影響を感じさせるバンドが多い中、color chordのようなシンプルなパワーポップのバンドは新鮮だった。「ロードムービーはいつまでも続く」という歌詞はこれまでツアーを廻っていた三組、特に惜しくも活動休止してしまう彼らにとっては、とても意味のあるものだったのではないだろうか。今回のイベントはcolor chordの曲のメロディセンスとポップさのおかげで観客を特に熱狂させたと感じる。

この日のトリを務めたのはAmia Calva with 岡本梨奈(VJ)。ライブペイントはライブのバックを埋め尽くすほど大きい「Amia Calva」と描かれたキャンバスが使われた。Vo.堤による「ベランダに捧げる曲」とのMCで始まった“far side”。「言いたいことの一つくらいできるかな」「いつかまたこの場所で会おう」という詩は、ベランダ、color chordとともにツアーを廻ってきたことを聞き手にも感慨深くさせ、Vo.堤の優しくも叫ぶような歌声と歌詞のイメージをそのまま音にしているような楽器隊も相まって、フロアも大いに盛り上がった。そしてさっきまでとは違い一曲一曲では曲のストーリーとは関係がないよいうに思えたライブペイント。しかし本編が終わってみたらAmia Calvaという「魚」のそして「バンド」という作品全体を描いていたことがわかった。曲が終わっても鳴り止まない拍手にアンコールで応えるのだった。

今回のイベントは、ライブペイントが演奏と並行して行われたのもあってかなり新鮮だった。それぞれの個性があるバンドに、ライブペイントは合っていたと思う。ベランダ、color chord、そしてAmia Calva。三組のバンドがツアーを回る最終日がここ京都、UrBANGUILDだったのはすごく良かったし、嬉しかった。さらに、京都で活躍するSIRMO STADと長谷川健一のような今まであまり聞いてこなかった音楽に触れ合えたのも新鮮だった。僕にとっても初めて見るアーティストと初めて見るライブペイントは音楽×即興芸術に対する興味を奮い立たせてくれたと感じる。もちろん、お客さんの目にもこの日は新鮮に見えて、忘れられない日になったと思う。

 

text:則松弘二

photo:岡安いつ美

 

★この日のすべての写真は以下のページでご覧ください

https://www.facebook.com/Amia-Calva-1537288133154991/photos/?tab=album&album_id=1778557989028003

WRITER

RECENT POST

COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.1
INTERVIEW
激しい音像で奏でる包み込むサウンドと蒼く優しい世界線 – とがるインタビュー
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #6
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.1
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #5
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #4
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #3
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #2
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #1
INTERVIEW
MCUはどこへ向かう?ミュージシャン・アーティストが語るフェーズ4の今とこれから
REVIEW
折坂悠太 – 心理
REVIEW
STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence
REVIEW
中村佳穂 – アイミル
COLUMN
YMB 作品ガイド 2014~2020
REVIEW
YMB – トンネルの向こう
REVIEW
さとうもかとDENIMS – Loop with DENIMS
REVIEW
Homecomings – Herge
REVIEW
Easycome – Easycome
REVIEW
pont – ぽ
REVIEW
Curtis Mayfield – Something to Believe in
REVIEW
Bill LaBounty – Bill LaBounty
REVIEW
Norman Connors – Take It to the Limit
REVIEW
Leroy Hutson – Closer to the Source
REVIEW
Zac Apollo – Loveset
REVIEW
シュガー・ベイブ – SONGS
REVIEW
Ginger Root – Mahjong Room
REVIEW
大貫妙子 – MIGNONNE
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:下飼 凌太】THE TOMBOYS:多様な音楽を飲み込んだ四人組…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:小川 あかね】Alice Longyu gao:セーラームーンか…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:キドウシンペイ】Emma Jean Thackray:UKジャズ…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:高田 和行】Shygirl:UKでも最もホットなスポットとされて…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:今岡 陽菜】Pom Poko:ノルウェー出身、北欧のジャズ名門校…
COLUMN
【まとめ】編集部員が選ぶ2019年ベスト記事
REVIEW
jizue – Book shelf
REVIEW
Any Luck To You – ベランダ
REVIEW
中村佳穂 – リピー塔がたつ
REVIEW
DENIMS − DENIMS
REVIEW
Creepy Nuts – たりないふたり
REVIEW
Soft Laws – Easy Yoke
REVIEW
ナードマグネット – 透明になったあなたへ
REPORT
『言志の学校』第一回レポート – 作ったからには読んで欲しい!読み手に届くフリーペーパー…
REPORT
映画『明日にかける橋 1989年の想い出』舞台挨拶レポート
REVIEW
King of Gold / Amia Calva
COLUMN
「働きながら音楽活動をする」トークイベント② -小川保幸(DEEPSLAUTER)-
REPORT
「働きながら音楽活動をする」トークイベント① -上杉隆史(Endzweck)-
INTERVIEW
音楽レーベル 「セイカレコード」の活動を追う vol.1 対談レポート -京都のいち芸術大学がレーベ…
INTERVIEW
「MVは誰のもの?」インストバンドsowの企画、”1song,2videos”…
REPORT
コンクリートバー 15周年祭 @KYOTO MUSE 2016.11.11
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day2】生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / man…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day2】ミノウラヒロキマジックショー / POLYSIC…
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day1】never young beach / 空きっ…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day1】And Summer Club / 岡崎体育 …
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / 前夜祭】はちみつぱい / cero / Homecomin…
REPORT
これからミュージックFESTA 2016 @ Live House nano 16.06.26
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】OGRE YOU ASSHOLE / フラ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】キュウソネコカミ / 清竜人25 / I …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】Amia Calva / NATURE D…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】BiSH / メシアと人人 / 夜の本気ダ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Beelow stage】ボギー / 中村佳穂 / ONIGA…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】eastern youth…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】NOT WONK / FL…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】THE FULL TEEN…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 夜露死苦】@ Club Metro
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 1st stage】パスピエ / フレデリック / 在日ファン…
REPORT
【ボロフェスタ2015Day1 / 1st stage】Homecomings / Brian th…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】ミライスカート / 黒猫チェルシー / ト…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】neco眠る / Baa Baa Blac…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / Beelow stage】DOTAMA / ミノウラヒロキマジックショー…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Pygtant!! / S…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】ヤングパーソンクラブ / …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Seuss / Noise…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 前夜祭】Nabowa / ゆるめるモ! / 渋さ知らズオーケストラ
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】後編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】前編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】花泥棒 / my letter / never young…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】渚のベートーベンズ / ナードマグネット / Seuss …
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】Baa Baa Blacksheeps / ONIGAW…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】カトキット / Spacetime And Stream…
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-9m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-Underground Stage,Bee-low stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 夜露死苦 @ CLUB METRO
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day.1-9m stage,Center stage編- @KBSホール 2…
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-Underground Stage,Bee-low Stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-9m stage編- ライブレポート
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-Underground Stage,Bee-low stage編- …
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-10m stage編- ライブレポート
REPORT
マドナシ(キツネの嫁入り)@ 京都GROWLY
REPORT
Amia Calva @ 京都GROWLY ライブレポート
REPORT
wave of mutilation(波)@ 京都GROWLY ライブレポート

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年7月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
東京であぐねる一人の社会人による暮向の記録-砂の壁『都市漂流のために』

何かを期待して上京したある若者。数年過ぎて、東京での生活は慣れたもんだし、仕事に追われる毎日にすら何…

COLUMN
『まちの映画館 踊るマサラシネマ』 – 人生が上手く行かないあなたに贈る、映画館の奮闘記

〈塚口サンサン劇場〉はテーマパークのような映画館だ。スタッフや観客がステージで踊る。ゾンビメイクをし…

COLUMN
【2024年7月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

COLUMN
【2024年7月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…