REPORT

ボロフェスタ2014 day1-10m stage編-

MUSIC 2014.10.27 Written By アンテナ編集部

片想い

ある人はホルン、ある人は鍵盤ハーモニカ、ある人は三味線、等々、それぞれがそれぞれの楽器を担う街の楽団、片想いがやって来た。のっけからハッピームード全開なのに、そんな中日常をちくりと刺す言葉を陽気な音楽に乗せて潜ませるんだから見てるこっちがはっとなる。そして何より彼らは演奏中にも関わらず楽器を置いて踊り出したり、人間紙相撲をしだしたりとこの空間にいる誰よりも彼らが一番楽しそうなのだ。なんだかずるい。小憎たらしい。こうなったら負けじとこっちも楽しんでやったらいいのだ。実際彼らはライブ中「楽しんでね」と何度も何度も繰り返していた。楽しむということこそ彼らのライブの根幹なのだろう。

 

楽しい時間というのはあっという間で……終演後の私は視覚的にも聴覚的にも感覚的にも楽しさに包まれているなか、ちょっぴり切なさといとおしさを感じた。それは彼らが陽気なメロディーの中に潜ましたちくり刺さる言葉の力なのかもしれない。終演後までほんとに憎い。楽しいだけじゃ終わらせないなんて。東からの楽団は色んなものを京の都へ置いていってくれた。(text:アンテナ編集部)

Baa Baa Blacksheeps

今回、ホストバンドとして主催者らとともにこのボロフェスタを作り上げてきたBaa Baa Blacksheepsが10mステージの2番手を務めた。MC土竜の前説が終わるとともに、Gt.コニーの切ないギターの音が鳴り響く。最初は、まばらだった観客が徐々に集まってき、タイミングを見計らったかのように”耳鳴り”が始まる。『しあわせになりたい』と歌うVo.神部のその言葉たちを前にして、思わず呆然と立ち尽くしてしまった。欲というのは、弱さでもあり、強さでもあると思うのだが、彼の歌声や彼らの曲たちからは、その弱さと強さの両方を感じることができる。だからこそ、彼らの音楽は、人の心に響き震わせ、そしてぎゅーっと締め付けるのだ。

 

最後の曲”Blacksheep”では、なんと後ろの幕が引かれステンドグラスが現れる。不安をすべて曝け出すように歌う神部。このときには、もうすでに観客がフロアを埋め尽くし、多くの人が彼らの勇姿を目にしたはずだ。ボロフェスタの10mステージという大舞台で、ボロフェスタが多くの人に知ってもらいたいという思いは大勢の観客に届いたのではないだろうか。(text:アンテナ編集部)

N’夙川BOYS

期待通り、と言うべきか。”プラネットマジック”からスタートしたN’夙川BOYS。リンダのキュートなVoと入れ替わりにマーヤのがなり声が響き渡ると力強い拳がフロアから一斉にあがる。キンブラだけでなく夙川BOYSでも、確かな骨太なロックリスナーの支持を得ていることが感じられる瞬間であった。2曲目では左右の巨大なスピーカーの上にマーヤとシンノスケがまるで仁王像の如くよじ登り、ツイン背面ギター弾きを披露。「久しぶりのライブが楽しくて楽しくて仕方ない。鬱憤を晴らしにきたぜ、ボロフェスタ!!」とまるで子どもみたいにはしゃぎまくる3人。観客も勿論盛り上がっていたが、彼らの全力っぷりはフロアの熱量をも遙かに越えていたかもしれない。

 

ライブの終盤では、マーヤは「そっちに行っていいですか?」の一言で一瞬で客を前に集めダイブ。例えどんなにキャリアを積んでいても、観客と同じテンション・目線でライブをしてくれる、そんな彼らを身近に感じるライブであった。こんなにアーティストとオーディエンスが通じ合うことができるなんてボロフェスタならではであろうし、それを叶えてくれた夙川BOYSには全京都から心からの拍手を贈りたい。そんな気持ちでフロア中が手拍子に沸いていた。(text:山田和季)

envy

結成して20年を超えてなお、日本のハードコアシーンのトップを走り続け孤高の輝きを放つenvy。そんな彼らのライブを一目見るために集まった多くの人の期待がKBSホールのフロアに充満していた。

 

深く怪しげな森の中を彷徨い、不安を煽るようにひずむ音の波の中から一筋の光のように鳴り響くギターの音色。息を飲むほど緊迫した空気を切り裂くのは、激しい轟音と絶望を一手に背負ったような咆哮だ。そんな“深く彷徨う連鎖”からライブはスタート。押しつぶされそうな圧力を徐々に解放させていくように“時は終わる”へとなだれ込む。衝動を爆発させるような激しさを持つ“NURO DEVILMAN”ではステージ後方のカーテンが開帳、美しいステンドグラスがむき出しになる。想像以上に彼らのステージにしっくりとくるカラフルなステンドグラスが高揚感を生み出し、心が震えた。ラストには“暖かい部屋”を披露。嵐が過ぎ去ったあとのようなやすらぎをもたらすアルペジオが鳴り響く中、Vo.Fukagawaが一言「ありがとう」とつぶやく。長い余韻に浸れるほど感動する時間であった。(text:岡安いつ美)

七尾旅人

「ピースフルなコースと暗黒のコースどっちがいい?どっちも出来る用意はしてるんだけど」そんな提案から始まった。OPは”星に願いを”。流れる星、爆発する星、巨大な星、いろんな星をホール内に声とギターとエフェクトのみで次々と誕生させていく。流れ星なんて可愛いものではない。子供の頃、宇宙や死について考えてしまって真夜中に大泣きしたあの日を思い出すような、信じられないほどのエネルギーを七尾旅人は一人で放出し続けていた。彼が漏らす吐息ですら聞き逃さないように、と感じる程フロアは静まり返っていた。しかし”サーカスナイト”のイントロが流れ出すとゆらゆらと一人、また一人と止めていた呼吸を吹き返すように動き出した。その呼吸に返事するように、七尾はゆっくりとステージを降り、観客の上にまたがるとそのままゆっくりと人の群の中を歌いながら流れていく。あんなにやさしく穏やかなダイブは初めて見た。

 

「やっぱり暗黒コースはやめておきます。」と言って歌い始めたのは”tender games”。ギター一本でトリッキーな音を鳴らしていた先ほどとは打って変わって、SSWらしい暖かみのある音色と哀愁漂う歌詞がホール中に響き渡っていく。最後の曲”Memory Lane”を歌い終えた後、まだ時間があるからと観客と話を始めた。「ボロフェスタ、本当にたのしみで正直帰りたくない。ただステージを降りたくない。」散々くだらないおしゃべりを観客と繰り広げたあとようやく始まった”Rollin’ Rollin’”はなんだろう、この人の言うことなら信じてみよう、そんな気分になった。(text:山田和季)

NAMBA69

本祭一日目のトリ、全キッズの王様NAMBA69の登場だ。爆裂的に体の芯まで震わせてくるような音の勢いは体感してみると本当に洒落にならない。もはやフロアは一触即発状態!と思うもつかの間。「みんなも歌える曲やるよ?」との難波の一言で”カントリーロード”が始まると、一瞬にしてKBSホールが人間闘牛場に……!!一度こうなるともう客の勢いは誰にも止められない。およそ40~50人がステンドガラスの下で跳ねるわ転ぶわぶつかり合うわのエネルギーは半端じゃない。曲が終わると難波もGt.K5も客の功績に思わず大拍手、「すごいね!」の一言である。

 

超メロディックなギターで始まる夏の新曲”SUMMER TIME”では、重めのズンズンくるサウンドの中にも軽やかなメロディラインとギャインギャインなのになぜか爽やかなギターが合わさり、フロアのキッズたちもまるで夏フェスに戻ったかの如くはしゃぎまわる。

 

「未来で待ってるぜ」と一言放ち、12月発売のアルバムからの新曲を演奏。これでもかというほどサークルモッシュ・ダイブしまくる観客たち。これだけ長い間メロコア・パンク界を牽引し続けた挙句、まだお前らよりずーっと先で待っててやるぜと難波は言うのだ。なんて頼もしく、かっこよく、男気に溢れているのだろうか。(text:山田和季)

WRITER

RECENT POST

COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる、2023年なんでもベスト1 Part.1
INTERVIEW
激しい音像で奏でる包み込むサウンドと蒼く優しい世界線 – とがるインタビュー
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #6
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.2
COLUMN
お歳暮企画 | ANTENNAとつくる2022年の5曲 Part.1
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #5
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #4
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #3
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #2
COLUMN
ANTENNA Writer’s Voice #1
INTERVIEW
MCUはどこへ向かう?ミュージシャン・アーティストが語るフェーズ4の今とこれから
REVIEW
折坂悠太 – 心理
REVIEW
STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence
REVIEW
中村佳穂 – アイミル
COLUMN
YMB 作品ガイド 2014~2020
REVIEW
YMB – トンネルの向こう
REVIEW
さとうもかとDENIMS – Loop with DENIMS
REVIEW
Homecomings – Herge
REVIEW
Easycome – Easycome
REVIEW
pont – ぽ
REVIEW
Curtis Mayfield – Something to Believe in
REVIEW
Bill LaBounty – Bill LaBounty
REVIEW
Norman Connors – Take It to the Limit
REVIEW
Leroy Hutson – Closer to the Source
REVIEW
Zac Apollo – Loveset
REVIEW
シュガー・ベイブ – SONGS
REVIEW
Ginger Root – Mahjong Room
REVIEW
大貫妙子 – MIGNONNE
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:下飼 凌太】THE TOMBOYS:多様な音楽を飲み込んだ四人組…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:小川 あかね】Alice Longyu gao:セーラームーンか…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:キドウシンペイ】Emma Jean Thackray:UKジャズ…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:高田 和行】Shygirl:UKでも最もホットなスポットとされて…
COLUMN
【SXSW2020私ならこれを見る:今岡 陽菜】Pom Poko:ノルウェー出身、北欧のジャズ名門校…
COLUMN
【まとめ】編集部員が選ぶ2019年ベスト記事
REVIEW
jizue – Book shelf
REVIEW
Any Luck To You – ベランダ
REVIEW
中村佳穂 – リピー塔がたつ
REVIEW
DENIMS − DENIMS
REVIEW
Creepy Nuts – たりないふたり
REVIEW
Soft Laws – Easy Yoke
REVIEW
ナードマグネット – 透明になったあなたへ
REPORT
『言志の学校』第一回レポート – 作ったからには読んで欲しい!読み手に届くフリーペーパー…
REPORT
映画『明日にかける橋 1989年の想い出』舞台挨拶レポート
REVIEW
King of Gold / Amia Calva
COLUMN
「働きながら音楽活動をする」トークイベント② -小川保幸(DEEPSLAUTER)-
REPORT
「働きながら音楽活動をする」トークイベント① -上杉隆史(Endzweck)-
INTERVIEW
音楽レーベル 「セイカレコード」の活動を追う vol.1 対談レポート -京都のいち芸術大学がレーベ…
INTERVIEW
「MVは誰のもの?」インストバンドsowの企画、”1song,2videos”…
REPORT
コンクリートバー 15周年祭 @KYOTO MUSE 2016.11.11
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day2】生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / man…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day2】ミノウラヒロキマジックショー / POLYSIC…
REPORT
【稲本百合香の見たボロフェスタ2016 / Day1】never young beach / 空きっ…
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / Day1】And Summer Club / 岡崎体育 …
REPORT
【則松弘二の見たボロフェスタ2016 / 前夜祭】はちみつぱい / cero / Homecomin…
REPORT
color chord × ベランダ × Amia Calva『時計じかけのオレたち』ツアー @Ur…
REPORT
これからミュージックFESTA 2016 @ Live House nano 16.06.26
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】OGRE YOU ASSHOLE / フラ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 1st stage】キュウソネコカミ / 清竜人25 / I …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】Amia Calva / NATURE D…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / 2nd stage】BiSH / メシアと人人 / 夜の本気ダ…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Beelow stage】ボギー / 中村佳穂 / ONIGA…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】eastern youth…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】NOT WONK / FL…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day2 / Underground stage】THE FULL TEEN…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 夜露死苦】@ Club Metro
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 1st stage】パスピエ / フレデリック / 在日ファン…
REPORT
【ボロフェスタ2015Day1 / 1st stage】Homecomings / Brian th…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】ミライスカート / 黒猫チェルシー / ト…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / 2nd stage】neco眠る / Baa Baa Blac…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / Beelow stage】DOTAMA / ミノウラヒロキマジックショー…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Pygtant!! / S…
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】ヤングパーソンクラブ / …
REPORT
【ボロフェスタ2015 Day1 / Underground stage】Seuss / Noise…
REPORT
【ボロフェスタ2015 / 前夜祭】Nabowa / ゆるめるモ! / 渋さ知らズオーケストラ
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】後編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY2】前編
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】花泥棒 / my letter / never young…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1】渚のベートーベンズ / ナードマグネット / Seuss …
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】Baa Baa Blacksheeps / ONIGAW…
REPORT
【ナノボロフェスタ2015 / DAY1 】カトキット / Spacetime And Stream…
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-10m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-9m stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 day2-Underground Stage,Bee-low stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 夜露死苦 @ CLUB METRO
REPORT
ボロフェスタ2014 day.1-9m stage,Center stage編- @KBSホール 2…
REPORT
ボロフェスタ2014 day1-Underground Stage,Bee-low Stage編-
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-9m stage編- ライブレポート
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-Underground Stage,Bee-low stage編- …
REPORT
ボロフェスタ2014 大前夜祭-10m stage編- ライブレポート
REPORT
マドナシ(キツネの嫁入り)@ 京都GROWLY
REPORT
Amia Calva @ 京都GROWLY ライブレポート
REPORT
wave of mutilation(波)@ 京都GROWLY ライブレポート

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年4月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…

REVIEW
aieum『sangatsu』―絶えず姿形を変え動き続ける、その音の正体は果たして

沖縄出身の4人組バンド、aieumが初となるEP『sangatsu』を2024年3月20日にリリース…

INTERVIEW
新たな名曲がベランダを繋ぎとめた。 新作『Spirit』に至る6年間の紆余曲折を辿る

京都で結成されたバンド、ベランダが3rdアルバム『Spirit』を2024年4月17日にリリースした…

COLUMN
【2024年4月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

COLUMN
【2024年4月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…