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マグナム本田の妄想続編 〜今度は戦争だ!~『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』

今年も馬齢を重ねてしまった。36歳。岡村靖幸御大の名曲『聖書〜バイブル〜』という曲における「35の中年と恋してる」という歌詞を基準とするなら立派な中年2年生である。この歳になると毎日目が覚めると身体のどこかしらが痛い。毎年健康診断の結果に怯え、「なにか健康にいいことを!」と決意し、ビールの代わりに炭酸水などを飲んでみるが結局「物足りねぇ!」とウィスキーを継ぎ足してしまう。社会的には給料はなかなか増えぬのに責任だけが増大、パートのおばちゃんにはどやされ、若手には「いつも目が死んでる」などと陰口を言われている。所謂「中年の危機」というやつだろうか。

 

そんな中年2年生の私がこの危機を乗り越える為にやっていること、それは「女子高生になる」ことである。いや、誤解を招く言い方であった。まあ我々中年男性の中にはセーラー服を着るなどして外見的に女子高生になる類の者もいるが、私の場合はあくまで精神的に、メンタル面で女子高生になって一日を過ごすのである。具体的にはネットでパンケーキの画像を検索してニヤニヤする(実際に食べると胸焼けするので見るだけ)、30センチ以下のものすべて、例えば小動物やカラフルな雑貨、道端に落ちている軍手などに対し「カワイイー!」と言う、誰にも明かしていないツイッターの女子高生設定の別アカウントでワタルという架空の彼氏(オラオラ系、エグザイルのオーディションに落ちた経験有り)への不満を綴るなどである。

 

こうして女子高生として過ごした一日は宇多田ヒカルの”First Love”を聴いてシメることにしている。年上の男性との少し背伸びした女子高生の恋の終わりを静かなピアノとストリングスが彩る名曲である。切なくも瑞々しい言葉が並ぶAメロが終わり、サビの寸前、さあここから盛り上がるぞ!というときにアレが来るのである。そう「だはぁ〜」である。歌詞カードには「だろう」と記されているのだがどう聴いても「だはぁ〜」である。この瞬間にそれまでステレオの前で膝を抱えて三角座りしていた私は「だはぁ〜!」と叫びながら後ろにのけぞり倒れ(手はせんだみつおが「ナハナハ」をやる時の角度)、自分がおっさんであったことを思い出し、翌日も続く中年としての日常に備えるのである。

映画『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』のあらすじ

ある日のことである。仕事でへとへとになって帰宅後、私はいつものように女子高生と化し、上記の女子高生アカウントで「う〜、夜寝れなくなるけどカフェオレ飲んじゃう〜(>_<)!」とツイートしていた。するとタイムラインに「『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』公開決定!」の文字を発見した。「JK」と言っても「ジャニー喜多川」のことではない。「女子高生」の略である(ジャニーさんは多分バイトとかしない)。女子高生モードであった私はすぐさまこれに反応。本連載を掲載するスタッフ、ライター共に美男美女しかいないウェブマガジン「アンテナ」の編集長に「やいボス(彼は「ボス」と呼ばれると喜ぶ)!次の妄想続編コレ書かせて〜!」とメールしたところ「いいだはぁ〜」との返信があった。

盗聴器を探すのはとりあえず後にして稿を進めることとする。

コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団

 

 

コリーン・コレット(リリー・ローズ・メロディ・デップ)とコリーン・マッケンジー(ハーレイ・クイン・スミス)は大のヨガ好きJK(女子高生)。怪しいヨガの先生(ジャスティン・ロング)に教えを請いながら怠惰なハイスクールライフを送っていた。ある日、2人は店長不在のバイト先のコンビニで学校のモテ男子とパーティを行おうとするが、誤って地下に眠っていた邪悪なミニナチ軍団を呼び起こしてしまう。長い眠りから覚めたミニナチ軍団は巨大な怪物を解放し、世界侵略へと動き出す。2人の女子高生VSミニナチ軍団。今、世界を守る戦いの火ぶたが切って落とされる―コンビニで。

 

HP:https://www.youtube.com/watch?v=27OFoFm9WUw

監督は『チェイシング・エイミー』で我々盆暗野朗どもの代弁者となったケヴィン・スミス。彼を知らない方はぜひ画像検索して頂きたい。ギレルモ・デル・トロ(『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』など)然り、ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなど)然り、こういうルックスの監督は間違いがない(ピーター・ジャクソンは後に胃バイパス手術によって激ヤセした)。

 

『C・W』は同監督のカナダを舞台にした前作『Mr.タスク』に脇役で登場した女子高生2人(演じるのはジョニー・デップとバネッサ・パラディの娘、リリー=ローズ・メロディ・デップとスミス監督の娘、ハーレイ・クイン・スミス)を主役に据えたスピンオフ作品であり、ジョニー・デップ、ケヴィン・スミスそれぞれの父子共演も見所である(監督はミニナチ軍団として出演)。

本編観賞後、私は感動に打ち震えていた。華奢で可憐なリリー=ローズ、「ボリューム」と言うよりは「体積!」と表現したくなる(とてもいい意味で!)ハーレイ・クインのボディ。この凸凹コンビが80年代角川学園映画のノリで頭の悪い台詞しか喋らず、また『死霊のはらわた3』や『ベストキッド』へのオマージュも見て取れる。私が嫌いなわけがない。ダニー・トレホの使いどころも100点だ。

 

ケヴィン・スミス監督は前作の『Mr.タスク』と今作を含めたカナダ三部作を考えているようで、完結編となる次回作は『Moose Jaws』(ヘラジカジョーズ)であることが予告されている。『ヘラジカジョーズ』もう字面だけで最高である。マジ卍。

『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』続編の舞台は日本

さて、マジ卍も出たところなので本稿の主題である『C・W』の続編を勝手に妄想することとしよう。

 

しばらく妄想した結果、私は本作の続編というよりは「日本版『C・W』が観たい」と思うようになった。つまりリメイクである。上記の通り80年代角川学園映画を想起したこともあり、より角川色を強めたくだらなく浮ついていて、でも嫌いになれない作品にしたいと考えた。

 

では主演の2人は誰にしようか。『C・W』の「二組の父子共演」というのはぜひとも継承したいところだ。

 

そこで私は藤谷文子(敬称略)を推したい。藤谷文子といえば三井のリハウスのCMで注目され、『平成ガメラシリーズ』三作でヒロインを演じ、関西では「見参!アルチュン」という深夜番組にも出演していたことでお馴染みである。2017年現在、37歳であり「女子高生役はどうなの?」と思われる方も出てくるだろうが、三十路を、なんなら四十路を過ぎた女性がセーラー服などを着たりするのが好きな私を含めたある一定の層にははなんの問題もない。

そんなことより大事なのは彼女の父親が誰かということだ。賢明な読者の皆様ならもうお気づきであろう。そう、スティーヴン・セガールである。

 

実はスティーヴン・セガールと藤谷文子は1999年の『沈黙の陰謀』と2005年の日本を舞台にした『イントゥ・ザ・サン』(当たり前だが両作ともセガール主演)で父子共演済なのだが、『沈黙〜』ではほんのチョイ役(クレジットは”Ayako Seagal”)、『イントゥ〜』ではセガールと敵対するヤクザがテレビで『ガメラ』の藤谷出演シーンを観ているだけなので、今作でガッツリと共演してもらおう。

 

もう一組の父子に関しては「監督とその娘」でパッと脳裏に浮かんだ王貞治とその娘である王理恵(野菜ソムリエ・雑穀料理研究家)でいこうと思う。皆さんも観たいはずである、王監督が演じるミニナチ軍団を。

 

ではここから『C・W』の日本版である『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS 沈黙のミニナチ軍団』の具体的なストーリーを述べていこうと思ったが、オリジナル版が「女子高生がバイト先の地下で目覚めたミニナチ軍団をやっつける」以上でも以下でもない内容なので省く。その代わり細部にはたくさんの小ネタを仕込んでいこうと思う。

ヒットした場合は日本編も三部作構成で

まず舞台はセガールが17歳から合気道を学び、また藤谷が生まれ育った大阪十三に設定する。セガールには全編日本語で演技してもらうことになるのだが、前述した『イントゥ・ザ・サン』で披露した日本語の台詞が久々の日本語だったからか全く聞き取れないという事態に陥った(一応日本語なので字幕も出ず、本当に困った)ので、声だけほぼ全てのセガール作品で吹き替えを担当している大塚明夫氏(代表作は日曜洋画劇場の「地上波初放送!」)にアフレコしてもらうことにする。

 

セガールの登場シーンは十三の立ち食いうどん屋。やはりセガールといえばうどんだ。そして十三といえばリドリー・スコット監督の『ブラック・レイン』のロケ地にもなった場所なので、無理な注文をするセガールに対し、店主に「2つで充分ですよ!」と言わせて同監督の『ブレードランナー』へのオマージュを捧げる。

またおもいっきり音をたててうどんをすすり、主演の一人である王理恵がかつて婚約者の医師(朝青龍の主治医として有名になったが、後に専門は男性器関係であったことが判明)の蕎麦の食べ方が汚くて婚約破棄した過去を観客に想起させるという悪意ある演出も入れておこう。

 

オリジナル版では主人公2人が習っているヨガの力でミニナチ軍団と戦うのだが、日本版のヨガ講師は「日本のラッセン」ことヨガに熱中しすぎて離婚までした片岡鶴太郎を配すこととする(「鶴太郎 ヨガ」で画像検索するととてもおもしろい画像が出てくるよ)。

 

王監督演じるミニナチ軍団であるが、オリジナル版では「ナチ=ドイツ=ソーセージ」ということでソーセージ型なのであるが、王監督といえば!ということで日本版はナボナ型ミニナチ軍団に改変。断末魔の叫び声は「森の詩もよろしく!」で決まりだ。

以上が概要である。万が一この内容で制作され、さらにヒットした場合は日本版も三部作構成で攻めるつもりである。向こうがカナダを舞台に『ヘラジカジョーズ』で来るならこっちは歓楽街十三を舞台にした『床ジョーズ』でどうだ!

 

東宝さん、『君の名は。』で儲けた金をドブに捨てませんか?制作決定の際はアンテナ編集部にご一報ください。脚本執筆の準備はできている。

 

というわけで『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS 沈黙のミニナチ軍団』(制作・公開未定)をお楽しみいただく為にも8月26日〜9月1日まで京都みなみ会館にて公開される『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』にぜひ足をお運び頂きたい!

上映作品

コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団

上映期間

2017年8月26日〜9月1日

会場

京都みなみ会館

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