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【マグナム本田の妄想続編 〜今度は戦争だ!~】サイコ・ゴアマン

不惑になってしまった。儒教の祖、かの孔子が「四十而不惑(四十にして惑わず)」と語った年齢である。実際は数え年で40歳、満年齢で39歳のことではあるが、細かいことには目をつぶって欲しい。不惑になった朝、雲ひとつない青空を見上げ「『不惑』と『FUCK』で韻が踏めるなんて、神様もよほどブラックジョークがお好きなようだな……」などと嘯きながら出勤の準備をし、その道中、これまで、そしてこれからのことを少し考えた。

MOVIE 2021.08.18 Written By マグナム本田

まずはこれまでのこと。最初に「もうちょっとモテたかったな……」という考えが浮かび、その後「あの時ああしてたらあの娘抱けてたかもなァ……」というダブル二十歳の人間に相応しくない思考がチラつき、自身の矮小かつ俗悪な人間性を自覚させられそうになったので即座に思考を停止した。「人生で今が一番若いんだから!これからこれから!」とありきたり、世俗的な言葉で自らを鼓舞し、これからの残りの人生を考えたところ、環境問題、労働問題、年金問題、健康寿命問題(特に下半身の)などなどが山積していることに気づき、これまでの人生について考えるよりも暗澹たる気分になった。

 

うむ、現世は諦めた。かの岡村靖幸御大だって「諦めて構わない 大事なことはそんなじゃにぁい」と言ってくれている。そこで思考を切り替え、「子供達、そして若者達がより良い未来を生きていけるようにするのが不惑の大人たる私の残りの人生の使命ではなかろうか」という考えに至り、そのために私ができることを考えた。

子供のことを知りたければジュブナイル映画

若年層に私ができること、それはやはりアドバイスだろう。なんてったってこちとら20歳の若者の2倍、なんなら10歳の子供の4倍、そしてなんと5歳の子供の8倍、1歳児にとっては40倍も生きているのである。あれ、では0歳児にとって私は何倍生きているのか? 0になにを掛けても0になってしまう……「これがもしかしてあの『ツェノンの逆説』なのか……?違う? 」と脱線しそうになったが、若者にとって私が何倍も生きているのは間違いない。

 

長く生きた人間はその分、経験に裏打ちされた有益なアドバイスができるはずであり、若者達もありがたく聴いてくれるであろう。

 

そこで私がこの40年で学んだことを思い返し、若者に伝えたい二つの人生訓が浮かんだ。その二つとは「結局コンビニのおにぎりは安い具の方がうまい」と「おでんを作っていてどうにも出汁の味がキマらないときは小匙一杯のオイスターソースを入れるといい」である。なにが「である」だ。40年も生きてきてそれだけしか浮かばないのか。しかもこんなことを生き馬の目を抜く現代に生きるデジタルネイティブな若者に言おうものなら「そんなもんググれば出てくるし。老害ワロスw」などと嘲笑されるのは火を見るより明らかだ。嗚呼、私は若者にアドバイスがしたい。ではどうすればいいのか。そこで私は若者、子供のことを学ぶことにした、映画によって。

 

「子供のことを知りたければジュブナイル映画だろう」と考えた私は公開予定の作品群の中からジュブナイル映画を探したところ「グーニーズ+死霊のはらわた」というキャッチコピーを発見。その作品のタイトルは『サイコ・ゴアマン』であった。

 

『グーニーズ』といえば『スーパーマン』『リーサル・ウェポン』で知られるリチャード・ドナー監督によるジュブナイルの傑作、そして『死霊のはらわた』は世界中にスプラッター映画を広めたサム・ライミ監督のホラー作品。『グーニーズ』はもちろん大好き、そしてオールタイムベストに必ず『死霊のはらわた2』を入れる私(ホラーとコメディのバランスが一作目より好み、三作目『キャプテン・スーパーマーケット』はふざけすぎだと思う)としては見逃せないコピーである。しかも制作はあのアストロン6ではないか!

 

怒りと憎しみの感情しか持たない残虐な宇宙人が地球を危機に陥れる様子を描いたSFスプラッター。幼い兄妹によって偶然にもよみがえった宇宙人が、妹が偶然手にした彼を操る不思議な宝石によって、子供たちの言いなりとなる。監督はカナダの映像制作会社「アストロン6」のメンバーで、『ファーザーズ・デイ/野獣のはらわた』『ザ・ヴォイド 変異世界』などのスティーヴン・コスタンスキ。ニタ=ジョゼ・ハンナ、オーウェン・マイア、アダム・ブルックスなどが出演する。

 

配給:アンプラグド
公式サイト:http://pg-jp.com/

「アストロン6」と聴いてピンとくる方は日本ではまだまだ少ないと思われるのでご説明申し上げると、『パシフィック・リム』『バイオハザードⅤ』に特殊効果として参加したスティーヴン・コスタンスキをエースとする映像作家集団であり、初の長編作品『マンボーグ』や『バイオ・コップ』のニセ予告編で注目を集め、特に『マンボーグ』は公称制作費8万円と言われており(さすがにそれはハッタリだとは思う)、日本の特撮ヒーロー風着ぐるみやストップモーションアニメを多用した低予算ではあるが志の高さだけは伝わる作品であり、なにが言いたいかと言えば実に私好みな作風を持つチームだということだ。

というわけで喜び勇んで『サイコ・ゴアマン』を観賞。「あー、おもしろかった!」と実際に声に出した私は続編を妄想し始めた。「ん? 当初の観賞目的は近年の若者像を知るためだったのではないのか?」と訝しむ御仁もおられようが、私は言いたい。「なにかを得るためにアートや芸術を消費しようとするなど誠に下品で唾棄すべき行為ではないかね」と。決して…… 決してこの『サイコ・ゴアマン』に学ぶべき内容がまったくなかったという訳ではないことは強調しておく。マジで。

続編のために「S・S」のイニシャルを持つ俳優を思い浮かべてみた

それでは妄想続編を考えていこう。もうすでにタイトルは決まっている。『サイコ・ゴアマンSS』だ。「ヒーローものの続編にはなんか適当なアルファベットをつければ良い感じになる」という安直な考えは私が『仮面ライダーブラックRX』世代だからであろう。ただしこの『SS』にはちゃんと意味がある。本作のコピーに「近所中で燃え上がる」とあるようにこの『サイコ・ゴアマン』という作品は非常にスケールの小さい、おそらく半径500メートルくらいの範囲内の出来事を描いているのだが、続編では更にスケール小さくいこうと考えている。つまり『SS』は「スモール・サイズ」「スモール・スケール」「スーパー・スモール」といった意味だ。そして実はもうひとつこの『SS』には意味が込められている。それは「ダブルイニシャルのジンクス」だ。

 

ダブルイニシャル、つまり姓と名が同じアルファベットを持つ人物は波乱万丈、燃えるような人生を送るというジンクスがある(似たようなジンクスに「横綱土俵入りの際に雲竜型ではなく不知火型を選ぶ力士は短命に終わる」というものもある)。代表的なダブルイニシャリストとしてはマリリン・モンロー、ブリジット・バルドーなどがよく引き合いに出される。果たしてこのジンクスは正しいのか、私も思いつく限りダブルイニシャリストを紙に書き出してみた。

 

朝青龍明徳(元力士)、豪栄道豪太郎(力士)、上田馬之助(元プロレスラー)、小橋健太(元プロレスラー)、佐山聡(元プロレスラー、初代タイガーマスク)、坂口征二(元プロレスラー)、ボボ・ブラジル(元プロレスラー)、今いくよ。人選に若干の偏りがなくはないが、なるほどどの人物も波乱万丈ありそうな者ばかりである(関係ないが今回朝青龍のことを調べてみると意外にも土俵入りの際は雲竜型を選択していたようだ。どうでもいいが)。つまりこの続編にもジャンル映画最大の成功といえる波乱万丈、炎上上等の記録ではなく記憶に残る、歴史の徒花的作品になってほしいという願いも込められており、主演にもやはりダブルイニシャリストを迎えたいところだ。そこで「S・S」のイニシャルを持つ俳優を思い浮かべてみたところ、ある男の姿が浮かんだ。そう、スティーヴン・セガールである。

セガールとサイコ・ゴアマンは非常に親和性が高い

スティーヴン・セガールを起用する理由は単にダブルイニシャリストであるからだけではない。私が「スティーヴン・セガール研究家」という肩書を名乗り始めて10年ほど経った頃、ある動画がネット上に公開され日本に4人程いるセガールファン達の間で話題になったことがある。それがこの『The Steven Seagal Show』である。

1話

2話

セガールの何気ない1日を描いた3分ほどのショートアニメなのであるが、アニメーションの分野にはあまり明るくない私にもおそらくこれが「日常系アニメ」というやつだろうことはわかる。この『The Steven Seagal Show』は2話まで更新されたもののそれ以降続編が作られることはなかったのだか、この作品内でやっていることはほぼ『サイコ・ゴアマン』と同じ(特に2話)であることからセガールとサイコ・ゴアマンは非常に親和性が高いと思われる。

 

それではここから具体的な内容を考えていこう。1作目で宿敵を倒したサイコ・ゴアマン(これはさすがにネタバレの範疇ではないですよね?)、その前に1人の男が立ちはだかる。地球人最強の男スティーヴン・セガールだ。それまでは無敵の強さを誇るサイコ・ゴアマンだったがパンチを繰り出すも変な方向に手首を捻られて投げ飛ばされ、ビームを放つも「貫通しているので撃たれたうちに入らない」と言われてしまう。しかし1作目で「とある力」を得たサイコ・ゴアマンも負けてはいない。拮抗する戦いの中で2人の間に奇妙な友情にも似た感情が芽生えてゆく。そして1作目のクライマックスで起きたことと同じことが2人に起こる。具体的なことはぜひ1作目を劇場で観て確かめてほしいのだが、一応ヒントとなる動画を置いておこう。

因みにこの動画のコメント欄に「なぜこのビデオではセガールは誰も殺してないの?」というのがあってたいへん笑った。

 

意気投合した2人は「とある力」の起こす奇跡によって融合。サイコ・ゴアマンSSの誕生だ。着ぐるみのデザインは1作目のものにチョンマゲをつければいいだけなので予算的にも安心だ。では宇宙最強の生物と化したサイコ・ゴアマンSSが宇宙征服に乗り出すかといえば答えは否だ。それはなぜか?

 

皆さんはこんな経験がないだろうか。ロールプレイングゲームをやっていてレベルも充分以上に上げ、あとはラスボスに挑むのみ、となった時にはもはやゲームをやる気を失っていることに気付くこと。この心境にサイコ・ゴアマンSSも達するのである。あとはエピローグとして『Steven Seagal Show』のような日常を描けばいい。なので脚本は『Steven Seagal Show』の作者であるケン・マッキンタイア氏に依頼、監督はもちろんスティーヴン・コスタンスキ続投で。今気付いたが監督の名前も「スティーヴン」縁起がいい。

 

以上が妄想続編『サイコ・ゴアマンSS 〜沈黙の歌声〜』の概要である。おお、完璧ではないか。もはや『サイコ・ゴアマン』はスティーヴン・セガールが続編を演じる為に作られた企画であると思えてならない。アストロン6様には続編製作が決定した際はぜひアンテナ編集部にご一報頂きたい。

 

というわけで『サイコ・ゴアマンSS 〜沈黙の歌声〜』(製作・公開未定)をお楽しみ頂くためにも京都みなみ会館にて公開中の『サイコ・ゴアマン』にぜひ足をお運び頂きたい!

 

京都みなみ会館の上映スケジュールはこちら

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