兵庫県・神戸市を中心に活動するバンド、OLD SCHOOLが3月1日に2nd E.P『I Keep The Fire Alive』をリリースした。
2016年に前身バンドからOLD SCHOOLに改名し、2018年には現在の5人体制になる。昨年春にリリースされた3曲入りの1st E.P.『A Dull Beginning』では、Knuckle PuckやThe Story So Farをはじめとする2010年以降のポップ・パンクを基軸にエモの要素を多大に取り入れた、メロディアスなサウンドを見せつけるような作品だった。リリース直後から、バンドマン、ポップ・パンク・キッズたちの耳に止まり、IN HER OWN WORDSやAs It Isなど世界的なポップ・パンクシーンで活躍するバンドと同じステージにも立った。2019年は、彼らにとって忘れがたい一年になっただろう。
本作にも収録されている、2019年の秋に配信限定でリリースされた“Ashley”は、これまで軸としてきたサウンドに、JAWSやThe 1975のようなUKのインディー・ロックの要素を加えた一曲だ。クリーントーンで深くリバーヴがかかったギターやアウトロの緩やかで心地よいリズム、さらには内省的な歌詞からもその影響は感じられる。前作で叙情的なサウンドを突き詰めたこのバンドは、この楽曲を始点に新たな音楽性へ展開していくのだと予感した。
しかし本作は、インディー・ロックだけでなく、より多くの側面を持っていた。3曲目“I’m Outstripped”は、SUM41やNo Use For A Nameを彷彿とさせるギターのリフレインや、メロディック・ハードコアのエッセンスを感じる激情的かつ攻撃的なサウンドが、心を刺激する。Issa(Vo)の、声を張り上げたボーカルも加わることで、より熱のこもった一曲になっている。MVもアップされている“Cattleya”は、その熱を逃すまいと重厚感のあるフレーズからBPM190の2ビートに展開していく緊張感迸る楽曲だ。サビでは、その緊張感がポップで温かみのメロディへと昇華されていく。まさに、ポップパンクを主軸に据えるOLD SCHOOLの代名詞的な楽曲だ。この二曲が持つ緊迫感や勢いは“Ashley”が持っていた緩やかな空気を一気にパンクの渦へと引き戻している。
そしてラストを飾る“Doubt(with yacca)”では、シンセで奏でるストリングスのサウンドと煌びやかなギターのアルペジオから始まるエモ・トラップだ。ここまでの流れからは考えもしなかった展開だが、マイナー調で翳りのあるビートトラックは直前までの2曲との高い親和性を持ち、先程までの興奮の余韻を感じさせながらも、一気に上がった熱を緩やかにクールダウンさせてくれる。EPのラストの曲としてふさわしい楽曲だ。
ポップパンクは、約30年の歴史の中でエモやメタルコアと融合しながら多様化してきた。そして近年では、As It Isが2018年に発表したアルバム『The Great Depression』を、自らエモ・トラップの要素を組み込みリマジンしたアルバムをリリース。さらには、Blink-182のドラマーであるTravis Barkerが、Lil peepの楽曲をリミックスするなど、ポップパンクはエモトラップとの接近を見せ、新たな局面を迎えようとしている。本作に収録されている楽曲は、こういった今日のポップ・パンクの世界的な流れを映し出しているといっても過言ではないだろう。自らが軸とする音楽を客観的に見据えて、ビビッドに取り入れていく彼らの貪欲な姿勢の結晶こそがこのEPなのだ。
OLD SCHOOL『I Keep The Fire Alive』
リリース:2020年3月1日
定価:1,000円(税込み)
フォーマット:CD / Digital
販売:OLD SCHOOL Online store
配信:Apple Music、Spotify 等、各種配信サービスにて配信
収録曲:
1.Intro
2.Ashley
3.I’m Outstripped
4.Cattleya
5.Doubt(with yacca)
WRITER
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98年京都市生まれ京都市育ち。左京区の某芸術系大学に通いながら、毎日楽しく暮らしています。心が踊る音楽が大好きです。
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