REVIEW
HAO
NYAI
MUSIC 2020.08.11 Written By 岡本 海平

新しく生まれるギター・ロックは、いつの時代も若者の共感によって育っていくところがある。2010年後半から、My Hair is BadやHump Back、Yonigeといったバンドが支持を集めているが、これらのバンドに共通しているのは「若さゆえに負う恋愛での傷」や「いつか前に進むことができなくなることを予見しながらも前を向く姿勢」を歌っているところだ。そういった歌詞を勢いのあるハイテンポな楽曲や繊細なバラードに乗せた、表情豊かな楽曲が若者の日常とともにある。

そんな2010年代最後の夏に、福岡を拠点に活動するNYAIがリリースした2ndフルアルバム『HAO』は、これらのバンドの楽曲とは対極をなすような、手の届かないモノに無理に手を伸ばそうとせず、今自分の手の中にあるものを活かして「良くも悪くも常にクール」に前進する、大人な印象のギター・ロックだ。

このアルバムを再生しM1“Jackie chan’s J”が流れた瞬間、私はスーパーカーの『スリーアウトチェンジ』の楽曲を思い出した。音粒が潰れてしまう寸前まで歪みかかったギターは“Lucky”、体が勝手に踊り出してしまう軽快に跳ね回るビートは“Hello”を彷彿とさせる。1990年代後半に「青春バンド」や「スニーカーバンド」と呼ばれたSUPERCARからの影響を感じるサウンドは、大人っぽさの中に爽やかさを与えている。

 

また、M2“Noise”の中で「狂騒はまた僕らを置いていく」と歌うように過ぎ去った青春や熱量に憧れを持ちながらも、たくさんのことを乗り越えてきたからこそ生まれる余裕や冷静さのようなものが、現代のギターロックに新鮮さをもたらしている。

この大人な印象は楽曲だけでなく、NYAIの活動スタイルからも感じる。メジャー・インディーズに関わらず、バンドがリリースをすれば様々な都市をツアーしてライブを行うことが多いが、NYAIはあくまで福岡でのライブを中心に、ごく限られた他の都市でのリリースライブに留めた。「今手元にあるものを活かして無理なく前進する」ことは、NYAIが示しているバンドを続ける策のひとつであり、長く良い作品と向き合っていくことに繋がっていくのかもしれない。

 

福岡で活動することに重きを置いていても、今は様々な手段でたくさんの人に音楽を届けることができる。何より、京都に住む私が彼らの音楽を聴いていることがその証拠だ。彼らの音楽は、音楽を始めるタイミングや生活する場所に制限を加えず、自らのペースやスタイルで音楽を鳴らし続けることができるという証明であり、「若さ」という刹那的要素が中心にあるロック・シーンに吹く、爽やかな新しい風だ。

HAO

 

 

アーティスト:NYAI

仕様:CD

発売:2019年7月3日

価格:¥2,200(税抜)

ANTENNA mall購入リンク:NYAI – HAO | mall ANTENNA WEB SHOP

 

収録曲

 

1.Jackie Chan’s J

2.Noise

3.Buckwheat

4.Yumeshibai

5.Boredom

6.22column

7.Chinese daughter

8.Spicy beans

9.Circuiar saw

10.Ghostly turn

11.Meaningless

 

Webサイト:https://takumahatensi.wixsite.com/nyai-on-web

Twitter:https://twitter.com/nyaiband

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