REVIEW
旅するギター
ラッキーオールドサン
MUSIC 2020.05.22 Written By 松原 芽未

本レビュー記事はHOLIDAY! RECORDSと共催した「レビュー公募企画」の第二弾として掲載します。

 

企画協力:HOLIDAY! RECORDS DISTRO

今すぐ旅に出られなくても、音楽は私たちを遠い場所まで運んでくれる。そんなことを思い出させてくれるのが、篠原良彰(Vo / Gt)とナナ(Vo)による男女デュオ、ラッキーオールドサンの3rdアルバム『旅するギター』だ。冒頭の表題曲は、からっとしたギターリフとタンバリンが心地よく、爽やかな海風が吹いてくるよう。Bメロのたたみかけるようなベースからサビへの流れは高揚感たっぷりで、“地球の上に朝がくる くるっと回って夜がくる”と歌うナナの青空のように澄んだ声を聴いていると、世界中どこへだって行けそうな気がする。

サポートメンバーの田中ヤコブ(Gt / 家主)、渡辺健太(Ba)をはじめ、京都の岩出拓十郎(Gt / 本日休演)、西村中毒(Dr / 渚のベートーベンズ)と東西のメンバーが集結した本作。優しくノスタルジックなサウンドにヤコブと岩出の骨太なツインギターが加わり、ラッキーオールドサン流のロックなアルバムに仕上がっている。ぽろぽろとこぼれるようなアルペジオがタイトルにぴったりの“とつとつ”から、ギター二人のひりつく掛け合いが痛快な“Rockin’ Rescue”までバラエティー豊かな楽曲たちは、まるでアルバム自体が起伏に富んだ旅のようだ。

 

日常の機微を丁寧にすくい取ってきたこれまでの歌詞と比べて、パワフルな単語が登場するのもこの作品ならでは。例えば“I Wanna Be Your Boyfriend”の“革命 これは恋なのさ 寝ても覚めても夢中”というフレーズは、歪んだギターの響きと相まって、熱く刹那的な衝動を感じさせる。

一方で、「喪失」や「終焉」を示唆する言葉がサラリと歌われている曲もある。“ヤッホー”は人懐っこいカントリー調の楽曲でありながら、“憧れたあの人も今は遠い昔”や“ヤッホー どんな日も いつか終わるとしっていても 今日はいいお天気ですね”という歌詞にドキッとさせられる。そう、どんなに楽しい旅も、いつか必ず終わりがくる。

 

実際、篠原は本作について、「録り終わったタイミングで(このレコーディングメンバーでのバンドは)解散した感じがある。普通に演奏もするし、やっていくんだけど、あの時の感じはなかなか出せない」(ドキュメンタリーフィルム『「旅するギター」の旅』)と語っている。この作品のために結成されたスペシャルチームは、切磋琢磨し、時にぶつかりながら1枚のアルバムを作り上げた。音楽と人に向き合った熱い日々の軌跡をたどったのが、『旅するギター』なのだ。彼らの旅路は二度と戻らないからこそ、閉じ込めた光は一層輝きを放つ。

 

だけど、本当にドラマティックなのはきっとその先だ。本作の制作中に篠原とナナは結婚し、夫婦となった。ラッキーオールドサンという二人の旅は、これからも続いていく。

 

束ねる夢は船を進ませ
その次はどこへ行こうか
許しあうこころも そのしるし
“愛はとこしえ”

 

ラッキーオールドサン『旅するギター』

 

 

収録曲

1.旅するギター

2.I wanna be your boyfriend

3.夜は短し

4.とつとつ

5.愛はとこしえ

6.ヤッホー

7.渡り鳥と愛の薔薇

8.ワンモアチャンス!

9.Rockin’ Rescue

10.Saturday Night

 

定価:2,420円(税込)

フォーマット:CD

HOLIDAY!RECORDS購入リンク:HOLIDAY! RECORDS

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