Kaikado Café
1875年創業、初代からの手作り製法を貫く茶筒の老舗・開化堂。その開化堂が2016年にオープンしたのがKaikado Caféだ。旧京都市電の車庫兼事務所を改装した店内に入ると、高い窓から差しこんだ光に包まれる。カウンターで個人焙煎のパイオニア・中川ワニさん焙煎のKaikadoブレンドコーヒーを注文して席に着くと、茶筒をはじめ、さまざまな工芸品が店内のそこかしこに置かれていることに気づく。POPや看板を最小限に留め、余白をもたせた空間だからこそ、工芸品一つひとつの存在に自然と意識が向くようだ。
余白は私たちの心にもゆとりをもたらし、工芸品と向き合う時間をつくる。決して押し付けがましくなく、あくまで自然体な場作りを行うKaikado Caféは、”今の時代の生活がどのように工芸品を取り戻していくのか”のヒントを示しているのかもしれない。
INFORMATION
住所 | 京都市下京区河原町通七条上ル住吉町352 |
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営業時間 | 11:00~18:00 L.O. (18:30 close) |
定休日 | 水曜日、木曜日 |
お問い合わせ | TEL:075-353-5668 |
リンク | Kaikado café:http://www.kaikado-cafe.jp/ 開化堂:https://www.kaikado.jp/japanese/ オンラインショップ:https://kaikadocafe.handcrafted.jp/ Instagram:https://www.instagram.com/kaikadocafe/ |
「心を亡くすと書いて『忙しい』」とは言い尽くされた言葉だが、忙しい日々は時に身の回りにある”良いもの”を感じとる私たちの心を奪ってしまうのかもしれない。しかしカフェで珈琲を飲みながらひと息つく時間的余白は心のゆとりを生み、身の回りの”良いもの”に心を寄せられるようになる。Kaikado Caféはそんな気持ちがふとゆるんだ瞬間に工芸品との素敵な出会いを提供してくれるお店だ。
その出会いの橋渡しをしてくれるのが店長の川口さんだ。「茶筒を集めすぎてオーナーから買うのを止められた」と言うほどの開化堂のファンだった川口さん。今も愛好家の目線で、工芸品の魅力や暮らしに取り入れる方法をお店の中で提案してくれる。
「工芸品を”展示”していると、時に見る人との間に距離ができてしまう。でも実際にカフェで使ううちに、手になじむ感覚や使い勝手を五感で味わうことができます」と川口さんは語る。取材のついでにお店で珈琲をいただいていると、カップの飲みごこちの良さに驚いた。聞けば宇治市〈朝日焼〉の珈琲カップらしく、口当たりと持ちやすさを徹底的に追究して生まれた一品とのこと。 他にも店内に置かれたものをなんとなく眺めていると、工芸品を暮らしに心地よく取り入れる形を静かに提案してくれていることが伝わってきた。
高度経済成長期から機械化による大量生産やライフスタイルの変化で手作りのものが売れにくい時代となり、伝統産業は私たちの暮らしから姿を消しつつある。開化堂もその煽りを受けて一時は売上が低迷したものの、手作り製法を貫き、海外進出や商品開発で生き残る道を模索。現在は注文待ちが出るほど人気となった。 機械が生み出す製品は確かに便利でリーズナブルだ。反面、無機質で味気なく、製品だけに囲まれると人間らしさを失うような錯覚に陥ることがある。私たちはその反動で無意識に生の実感を求めているのだろうか?そんな時、工芸品に刻まれた職人の手あとや、使う中で変化するツヤや手ざわりは私たちに生の実感を与え、ほっとさせてくれているのかもしれない。
そんなことを感じられるのも、Kaikado Caféが忙しさに埋没しがちな私たちの感性を優しく掘り起こしてくれる場所だからこそ。「良いものは良い」。そんな単純なことも繰り返しの生活では忘れてしまいがちなのだ。その時に「良いものは良い」と思える感性を家に持って帰りたくなるのだろう。2度3度とKaikado Caféを訪れるうちに茶筒を買ってしまう人の気持ちがわかったような気がした。(時に大切な人に贈るのだろう)。
私もKaikado Caféの余白の心地よさと茶筒の美しい佇まいが忘れられず、特に忙しい時にはあの空間を求めてしまう。Kaikado Caféを再訪する日も、我が家に茶筒を迎える日も近いかもしれない。
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WRITER
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91年生、岡山出身、京都在住。平日は大阪で会社員、土日はカメラ片手に京都を徘徊、たまに着物で出没します。ビール、歴史、工芸を愛してやみません。
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