ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022 at 京都みなみ会館
『孤高の天才』という言葉を聴いたとき、真先に誰を思い浮かべるか。筆者にとってそれは田村潔司ではなくジョン・カーペンターである。
監督作はすべて低予算、かつSF、ホラー、アクションといった所謂「ジャンル映画」ばかりでありながら、芸術的、文学的にも評価されている映画監督はそうはいない。匹敵するのはロメロくらいであろうか。
筆者のカーペンターとの出会いは中学生の時、テレビで深夜に放映されていた『ゼイリブ』だった。日雇い労働者のネイダがひょんなことから手に入れたサングラスをかけてみると、なんの変哲もない街中の看板や雑誌に「OBEY(従え)」「CONSUME(消費しろ)」、紙幣には「THIS IS YOUR GOD」といったメッセージが隠されており、街行く人々の中に異形の者たちが紛れ込み、そして彼ら異形の者たちによって知らず知らずのうちに地球は支配されていることに気付く。
SF映画の傑作『マトリックス』がQアノン等の陰謀論者に悪用されたのも記憶に新しく、若干デリケートに扱わざるをえない内容ではあるが、レーガン政権以降からフェイクニュース溢れる現代まで通ずる消費社会を徹底的に戯画化、風刺した大傑作である。ジャンル映画界、低予算映画界に関わらず「カーペンター以前と以後」といった映画観、社会観が醸成されたと言っても過言ではないだろう。
以降、筆者は『ダーク・スター』『要塞警察』『遊星からの物体X』『ニューヨーク1997』『エスケープ・フロム・LA』『ゴーストハンターズ』等のカーペンター作品をヒマを見つけては観返し、スクリーンで上映されると聞けば、金沢まで足を運ぶ立派なボンクラ中年と成り果てた。
そんなジョン・カーペンター作品が「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022」と題して劇場スクリーンに帰ってくる。上映作品は『ゼイリブ』『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』の3作品だ。
京都での上映は京都みなみ会館にて3月18日~4月7日まで。なおかつみなみ会館では上記3作品に加え、みんな大好きダン・オバノンの演技と特撮光る『ダーク・スター』とアンスラックスも音楽を手がけた『ゴースト・オブ・マーズ』も併映、さらにさらに作品ごとに最適なイコライズ、大音量化されたboid soundでの上映と大盤振る舞い。監督作のほぼ全てで音楽も手がけるカーペンター御大によるあの重厚感溢れるシンセベースが劇場の椅子をビリビリと震えさせるのが今から楽しみでしかたない。ぜひとも皆さん、特に春休み中の学生の皆さんには社会のなんたるかを学びに劇場に足をお運び頂きたい!
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プロフィール“19XX年、京都府北部に落ちた隕石の落下現場にて発見され施設で育つ。
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14歳の時にカート・コバーンに憧れ施設から脱走。紆余曲折を経てシアトリカル・テクノ・ポップ(TTP)バンド「マグナム本田と14人の悪魔」を結成。
京都のバンドシーン関係者8割くらいから嫌われている。
https://youtu.be/1tYuVpXR1qY