2023第二回ロマンチック台三線芸術祭
台湾の西側を南北およそ440キロに貫く国道「台三線」。そのうち桃園市と台中市をつなぐ150キロの区間は「台三線ロマンチック街道」と呼ばれ、街道に沿って16-17世紀頃に台湾に多く渡ってきた客家(ハッカ)と呼ばれる民族の文化が息づいている。そのような歴史と文化の根付いた場所で、90を超える作品と100のイベントが集まる大規模な芸術祭『2023ロマンチック台三線芸術祭』が開催される。
会期は6月24日〜8月27日の約2ヶ月間。第一回が行われた2019年から、4年ぶりの開催となる今回は「彩りが多く美しい」という意味の客家語「ファラビボ(Falabidbog)」が合言葉。
筆者は、客家文化と聞くと、土と木材でできた集合住宅である土楼(ドロウ)や、レトロな客家花布が思い浮かべたが、総合プロデューサーの陳邦畛(チェン・バンジェン)のコメント、「客家文化に対する伝統的な認識を覆し、これまでになくイメージを打破したものとなっている」からは、取り組みを通じて、新しい解釈を行い、これまでの客家文化をより発展させることへの意欲が垣間見える。
そうした方向性は、キービジュアルのモダンな仕上がりからも伝わる石虎(タイワンヤマネコ)、「柿」、「椿」、「桂竹」などのクラシックなモチーフを、3Dを用いた立体的なビジュアルに落とし込むプロセスを客家の新しい一面を表す試みととらえてもいいはずだ。定着したイメージを塗り替えることが、合言葉の「彩りの多さ」に繋がっていると想像できる。
台湾国内外のアーティスト、デザイングループが客家文化をモチーフに、客家文化園区や産業史跡、客家の寺院、歴史建造物などで作品を展示し、日本からは瀬戸内国際芸術祭に出展のゴヤ・フリオや久保寛子、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に出展経験のある岡部昌生などが参加。展示のほか、現地のレストランと共同して開発された30種の客家グルメも目玉の一つ。
コンテンツの多さ、フィールドの広さに「どこから回るべきか」戸惑う人もいるかもしれないが、60のモデルコースが設定され、公式シャトルバスの運行や台湾最大手の旅行会社ライオントラベルのアートツアーも用意されている。台湾に何度も足を運んだ人が楽しめることはもちろんのこと、初めての海外旅行となる方も安心して回ることができそうだ。
この夏、アート・デザイン・食を混ぜ合わせた客家文化を楽しみながら巡るロード・トリップに出かけてみてはいかがだろうか。
2023第二回ロマンチック台三線芸術祭
日時 |
6月24日(土)〜8月27日(日) |
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場所 | 台湾5県市各地(台北、桃園、新竹、苗栗、台中) |
参加アーティスト |
岡部昌生 西田秀己 久保寛子 kugenuma Julio Goya 伊豆見彩 景山健 |
Webサイト |
WRITER
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2002年生まれ。京都市立芸術大学 美術学部 総合芸術学科在学。つよくてやさしい言葉が好き。休日は窓のない部屋で本を読んでいます。
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