EVENT

2023第二回ロマンチック台三線芸術祭

ART 2023.05.09 Written By 大城咲和

台湾の西側を南北およそ440キロに貫く国道「台三線」。そのうち桃園市と台中市をつなぐ150キロの区間は「台三線ロマンチック街道」と呼ばれ、街道に沿って16-17世紀頃に台湾に多く渡ってきた客家(ハッカ)と呼ばれる民族の文化が息づいている。そのような歴史と文化の根付いた場所で、90を超える作品と100のイベントが集まる大規模な芸術祭『2023ロマンチック台三線芸術祭』が開催される。

 

会期は6月24日〜8月27日の約2ヶ月間。第一回が行われた2019年から、4年ぶりの開催となる今回は「彩りが多く美しい」という意味の客家語​​「ファラビボ(Falabidbog)」​​が合言葉。

筆者は、客家文化と聞くと、土と木材でできた集合住宅である土楼(ドロウ)や、レトロな客家花布​​が思い浮かべたが、総合プロデューサーの陳邦畛(チェン・バンジェン)のコメント、「客家文化に対する伝統的な認識を覆し、これまでになくイメージを打破したものとなっている」からは、取り組みを通じて、新しい解釈を行い、これまでの客家文化をより発展させることへの意欲が垣間見える。

 

そうした方向性は、キービジュアルのモダンな仕上がりからも伝わる石虎(タイワンヤマネコ)、「柿」、​​「椿」、「桂竹」などのクラシックなモチーフを、3Dを用いた立体的なビジュアルに落とし込むプロセスを客家の新しい一面を表す試みととらえてもいいはずだ。定着したイメージを塗り替えることが、合言葉の「彩りの多さ」に繋がっていると想像できる。

台湾国内外のアーティスト、デザイングループが客家文化をモチーフに、客家文化園区や産業史跡、客家の寺院、歴史建造物などで作品を展示し、日本からは瀬戸内国際芸術祭に出展のゴヤ・フリオ​​や久保寛子​​、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展​​に出展経験のある岡部昌生​​などが参加。展示のほか、現地のレストランと共同して開発された30種の客家グルメも目玉の一つ。

 

コンテンツの多さ、フィールドの広さに「どこから回るべきか」戸惑う人もいるかもしれないが、60のモデルコースが設定され、公式シャトルバスの運行や台湾最大手の旅行会社ライオントラベルのアートツアーも用意されている。台湾に何度も足を運んだ人が楽しめることはもちろんのこと、初めての海外旅行となる方も安心して回ることができそうだ。

 

この夏、アート・デザイン・食を混ぜ合わせた客家文化を楽しみながら巡るロード・トリップに出かけてみてはいかがだろうか。

2023第二回ロマンチック台三線芸術祭

日時

6月24日(土)〜8月27日(日)

場所

台湾5県市各地(台北、桃園、新竹、苗栗、台中)

参加アーティスト

岡部昌生

西田秀己

久保寛子

kugenuma

Julio Goya

伊豆見彩

景山健

Webサイト

https://www.romantic3.tw/index-ja.php

WRITER

LATEST POSTS

REVIEW
とがる『この愛が終わったら、さようなら。』 -別れと向き合いながら、それでも共に生きていこうとする

新たに立ち上げた自主レーベルの《luv》からリリースする、とがるの3rdアルバム『この愛が終わったら…

REPORT
【もっと身近なクラブカルチャー】vol.7 BRITISH PAVILION OSAKA

2002年に〈HUB渋谷店〉でスタートしたロックDJパーティー『BRITISH PAVILION』。…

REPORT
余暇の別府を満喫する、ユニバーサル観光×クリエイティブ -『おんせん都市型音楽祭 いい湯だな!』イベントレポート

10月28日(土)に大分県別府市の繁華街・別府北浜の4会場で初開催された、サーキットフェス『おんせん…

REPORT
2日目の『京都音博』に感じた“らしさ”の理由 -『京都音楽博覧会2023』ライブレポートDay2

昨日の雨から曇りへと空模様も変わり、初めての2日目を迎えた17回目となるくるり主催の『京都音楽博覧会…

REPORT
邂逅の先に芽吹いた、 新しい景色-『京都音楽博覧会2023』ライブレポートDay1

「すごいぞ、くるり」。この名キャッチフレーズで1999年に1stアルバム『さよならストレンジャー』を…