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東北酒肴EAGLE

FOOD 2016.11.03 Written By 森下 優月

ここ東北酒肴EAGLEはその名のとおり、山形を中心とした東北の料理とお酒を提供している飲食店ですが、売りにしているのはそれだけではありません。店内はアニメのポスターとフィギュアに埋め尽くされており、アニメ好きのお客さんが多く訪れます。またスポーツバーとしての催しも行っており、店内でスポーツの試合観戦をすることもあります。さらにはミュージシャンを招いてインストアライブを行う日もあります。

 

多種多様なコンテンツが入り混じった東北酒肴EAGLE。初めは「結局何をメインに置いているお店なのか……」という思いが頭をよぎりますが、しばらく居ると分かってくるのはそんな疑問自体が野暮だということ。このカオスな状態はまさに店長の高橋さんが作り上げたかった店舗スタイルであり、「何の店か分からないこと」こそがコンセプトなのです。取材をする間にも続々と人が集まり、コミュニティ関係なく高橋さんを中心に次から次へ話に花が咲いていった店内。ひとつの趣味がきっかけでお店に足を運び、そこからさらに世界が広がってゆくという素敵な空間がここにはありました。おもしろければ何でもありで、高橋さんが興味を持てば今後さらにジャンルが広がってゆくという東北酒肴EAGLE。5年後、10年後いったいどんな空間になっているのか楽しみになるお店です。

住所

〒600-8802 京都府京都市中京区四条木屋町上ル13番路地東入ル2F

定休日

不定休

営業時間

20:00 ~ 5:00

電話番号

TEL:075-212-2523

HP

https://www.facebook.com/tohoku.syukou.eagle/

THE 左京区、みたいなお店をやりたかった

──

お店を始められたきっかけを教えてください。

高橋さん

今は『二条nano』(ライブハウス) の上階に『ラクボウズ』という飲食店がありますが、元々その1号店がここにあったんです。僕は大学生の時からその1号店で数年間バイトしていました。それである時オーナーから2号店を開くので1号店を誰か受け持たないかという話が来たんですが、当時バイトしていたのは僕しかいなかったし、大学も辞めて仕事もなかったから二つ返事で了承したんです。そんなわけで最初は雇われ店長としてラクボウズを経営するところから始め、しばらく経って店名も変えて完全に自分のお店として持つことになったという流れです。

──

地元が東北で、大学時代は京都にいらっしゃったということですか?

高橋さん

そうそう。山形県出身なんです。だから東北楽天ゴールデンイーグルスから取ってEAGLEという店名にしました。

──

もともと飲食店に興味はあったのですか?自分でお店を持つにあたって勇気はいりませんでしたか?

高橋さん

飲食店は自分がお客さんとして行くのは好きだったけど、本格的に働きたいとは思っていなかったな。でもずっと一緒に働いていたバイト仲間が自分がお店を引き継いだ時もいてくれたので、そんなに勇気は必要ではなかったですよ。

──

大学時代、バイト以外に何かされていたことはありましたか?

高橋さん

昔からいろんなことに首を突っ込むのが好きだったんで、学生時代はいくつかの団体を掛け持ちしていました。主には大学生が運営・発行している『ガクシン』というフリーペーパーの団体でライターをしていましたね。他には安い価格で若い人にも着物を着てもらいたいという試みで、古着屋さんのサークルなんかもやっていました。

──

いろいろなことに興味がおありなんですね。このお店にも高橋さんの趣味が色濃く反映されていると思いますが、趣味やものの好みに共通する軸はありますか?

高橋さん

ないですね。たとえば音楽にしても、はっきりと「このジャンルが好き」というものはないんです。自分がかっこいいと思えたらそれでいい。かっこいい・かっこ悪いの基準も明確には無くて直感で決めてますね。人間でも「この人好きだな」と思えたらそれでいいのでなぜ好きなのかはあまり考えないタイプですね。

──

アニメ、東北、音楽、スポーツといろいろなジャンルのものが混ざり合って、本当にカオティックなお店ですよね (笑) 。もともとコンセプトというのはあったのでしょうか?

高橋さん

「THE・左京区」みたいなお店をやりたかったんです。左京区ってごった煮感のあるお店が多いんですよ。雑然としてるけど皆が集まってアホみたいに笑っているというスタイルのお店が好きで、ここもそんな感じにしたかった。ただ左京区、特に木屋町の飲食店がどこもこういう形という訳ではないので、このあたりに初めて来た人にこれがスタンダードだと捉えられると困っちゃいますけどね。どこもこんなにカオティックな訳ではないですよ!

──

あえてコンセプトの中心軸になるものを決めず、雑多な雰囲気にしているのでしょうか?

高橋さん

うん。それぞれのジャンルに親和性があるから、どんなお店かというジャンル特化はしないでおきたいなと思っているんですよね。たとえば、僕がアニメを好きになったのは音楽がきっかけなんですよ。音楽繋がりで仲良くなったバンドマンとガンダムのゲームをするようになってハマったんです。

──

では、バーとしてのコンセプトやこだわりはありますか?

高橋さん

ない!そもそもバーと思ってやっていないから。アニメ・スポーツとは書いてあるけどバーとはどこにも書いていないでしょ?東北の酒と東北のアテを楽しんでもらいたいなというのがメインで、その上で一応カクテルぐらいは作りますよという感じでやっているので、バーという形態には重きを置いていないんです。

──

このお店のお酒で一番のおすすめは?

高橋さん

ジントニック。単純に美味しいから!あと日本酒はけっこうこだわって置いていますよ。特に山形の日本酒は美味しさに自信があります。京都では手に入りにくいこともあって、山形の酒屋から直接仕入れているんです。郷土愛をうたっている以上は少しでも山形に利益還元したいですからね。

──

お客さんの層は、アニメ・ライブ・スポーツの3つの軸で考えるとどの軸の方が一番多いですか?

高橋さん

僅差だけどアニメかなあ。今の時期はアニメの新クールが始まるからアニメファンがたくさん来ます。「高橋さん、今クール何が良さそうですかね?」って (笑) 。音楽関係者がライブの打ち上げに来たりするし、木屋町の同業者がお店を閉めたあとに来たりもする。あとは山形県人会っていうのに入っているから、山形県の人もけっこう来てくれるんです。山形県民ウェルカムですよ!

──

アニメは今でもよく観られますか?

高橋さん

よく観ますよ!観る番組のうち6割ぐらいはアニメです。アニメを観るのも、ライブに行くのも仕事のうちですからね。

──

一番好きなアニメを教えてください。

高橋さん

一番好きなのは『カウボーイビバップ』!ハードボイルドかつ音楽がすごくかっこいいんですよ。ビバップっていうジャムセッションみたいな感じの音楽が使われていて、それがとても好き。

山形はホームタウン、京都は生きていくところ

──

山形県出身の方もよく来られるということですが、この近辺でほかに山形をテーマとしたお店はありますか?

高橋さん

少ないけどありますよ。近くに山形の蕎麦が食べられる『マルセイ最上』さんというお店があります。

──

郷土愛の強い高橋さんですが、山形に帰ってお店をするということは考えられなかったんですか?

高橋さん

考えなかったですね。山形県人会をやっている理由と一緒で「山形県を広めたい」というのが根底にありますから。山形をアピールできるきっかけは山形にはないんですよ。ここでこういうお店をやっていたら、食べ物ひとつとっても「何これ?」って京都の人は興味を持ってくれるでしょう?結果的にその方が山形のためになると思っています。

──

高橋さんが考える山形の良さとはどんなところですか?

高橋さん

うーん……山形に生まれたから山形が良いという以外に答えようがないんですよ。それって例えば女の子が「彼氏の好きなところを教えて」って聞かれるのと同じような質問だと思うんです。地元の良いところを聞かれてパッと思いつくのって、あくまでもおすすめの観光スポットとかでしょう。僕が山形に対して抱いている感情はもう、愛なんですよね。山形の良い面だけじゃなくて悪い面もたくさん知っているけどそこも含めて愛しているし、だからこそ貢献していきたいという気持ちなので、良いところと聞かれて具体的に「ここ」とは答えられないですね。

──

では、高橋さんにとって京都はどんな場所ですか?

高橋さん

ホームタウンですね。山形は自分のルーツという意味でふるさとだとすると、京都は住んで生きていくところという感じです。長い人生で考えたらいつか山形に帰りたくなるかもしれないけど、今はやりたいことがこっちにあるし京都で暮らしていきたいと思っています。

──

これから先、どんなお店にしていきたいですか?

高橋さん

やっぱりカオスなお店にしていきたいですね。何でもあり・ごった煮の空間が好きだから、僕が興味を持ったらここからさらにジャンルが広がる可能性もありますよ。僕にとってのおもちゃ箱です、ここは。

──

ありがとうございました!

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