REPORT

【森下優月の見たボロフェスタ2016 / Day2】天才バンド / 忘れらんねえよ / Have a nice day! / nim / 銀杏BOYZ (弾き語り)

 

 

 

 

アンテナでは今年のボロフェスタのレポートを、ステージごとにアップするのではなくライブを見たライター別にアーティストをまとめています。少々探しにくいかもしれませんが、これはボロフェスタの掲げる”あなたの好きな音楽”と”私の好きな音楽”を繋げるというテーマを、ライブレポートでもなんとか再現したいと思ったからです。
各ライターのシフトは本人たちに決めてもらっていて、個人の趣味や趣向を反映させました。この記事を見る人が「このライターの趣味は自分に似ているから、レポートに載っている見れなかったバンドをチェックしてみよう」と、ライターというフィルターを通して新しい音楽との出会いの場所にしていただけたら幸いです。

 

 

森下優月のボロフェスタ2日目

天才バンド ⇒ 忘れらんねえよ ⇒ Have a nice day! ⇒ nim ⇒ 銀杏BOYZ (弾き語り)

 

 

 

■天才バンド

 

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Gt. / Vo.奇妙礼太郎、Ba. / Key. / Vo.Sundayカミデ、Dr.テシマコージという、その名の通り関西で活躍する天才たちが集まった天才バンドは、MC土龍の紹介に応える形で、迫力満点のドラムソロで2日目開始の合図を告げた。“DANCE MUSIC FOR ME!!”、フェスの幕開けには打ってつけの縦ノリの強制的に身体が揺れるダンスチューンだ。初っ端から煽る、煽る!1分半ほどのイントロの間にみるみるうちに客席に熱が広がっていく。

 

 

Sundayのスラップベースソロから始まる“SHIBUYA STRUT”、代表曲ともいえる“天王寺ガール”では、奇妙とSundayの歌の掛け合いを見ることができた。時にはおどけながらも、しっかりと歌い上げる奇妙と、それに応えようと多彩なパターンを繰り出すSunday、2人とも心底楽しそうで、見ているこちらもなんだか楽しくなってしまう。

 

 

SundayがいつになってもKBSホールの最寄り駅を覚えられない話や、西院TSUTAYAでゆーきゃんに会った話などボロフェスタならではの面白いMCを即興で曲にしたり、奇妙が曲に合わせてダンスをしたり、時にはSundayの謎の逆立ち (?) も……。それが生きるのもきっちり演奏で魅せているからこそだろう。数多くライブをしているはずの3人だが、何よりも彼ら自身がその場限りのライブを思い切り楽しんでいるのが伝わってくる。天才たちが繰り広げる本気の遊びに心が躍らされっぱなしの30分間だった。

 

 

 

■忘れらんねえよ

 

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終始Gt. / Vo.柴田の言動から目が離せないライブだった。まずは観客席後方からの登場!「みんなの力で俺をステージまで運んでくれぇ~!」と絶叫する柴田を観客たちが手に手に押し流し、“ばかもののすべて” からライブがスタート!柴田もBa.梅津もステージギリギリまで前のめりになり、旬を取り入れた (?)「PPAPコール」であっという間に観客との一体感を作り出す。演奏も勢いがよく、前のめりに走る!その熱量に負けじと、自然とこちらも足に力が入った。

 

 

途中突然お金を右手に掲げたかと思えば、「俺はビールを買いたくなった!お前らのロックンロールで俺を届けてくれぇ~ (デジャヴ)」と、またもフロアに躍り出ていく。ビール片手に戻ってきては観客の頭上に立ち上がり、イッキで周囲に撒き散らすも、それを浴びた観客もハイになって叫び散らしていた。

 

 

MCでは「最近もやもやしたことがあって……ずっと好きだった子に会ったら薬指に指輪が」とまさかのカミングアウト!一緒にライブで俺の中のあの子をぶっ殺して欲しいという柴田は、「個人的な悩みですみません」と笑うが、忘れらんねえよの魅力はこの人間臭さだと感じた。

 

 

“この高鳴りを何と呼ぶ” の「世界は僕らのために変わったんだ」というその言葉、具体的な根拠はないけれども、フレーズを反芻するうちに言い様のない力強い自信に満ちてくる。どうしようもなくかっこ悪くても、「あの子」のことを心から忘れられる日なんて来なくても、そんな自分と世界を愛せるような気がしてくる。心に響くのは、きっと本人たちが誰よりもそんな思いを知っているからだろう。一度間近で彼らのライブを見たら好きにならずにはいられない、「愛すべきばか」とはきっと彼らのような人間をいうのだ。

 

 

 

■Have a nice day!

 

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東京を騒がせているHave a nice day!が満を持して登場すると、この日もKBSホールを一瞬でダンスホールに変えた。ズンズンと響く4ビートに合わせて、ツインボーカルの浅見と内藤が踊りだすと、観客も上下に飛び跳ねる。ハロウィン前日にぴったりな“ゾンビパーティー”、シンセのリフレインが気持ち良い“ロックンロールの恋人”とたたみかけるような選曲に初っ端からボルテージは最高潮に!その後もまったくテンションを落とすことなく、ド迫力のステージが続いていった。

 

 

彼らの見どころは何といっても、観客と殴り合いをしているようなステージングである。浅見と内藤の2人が入れ替わり立ち替わり、ステージ前方を端から端まで歌い、歩き、踊り、全力でパワーをぶつけてくる。挑発的な視線で中指を突き立てる内藤と、「お前らそんなんで俺を (東京へ) 返すなよ!」と煽りながらペットボトルを投げまくる浅見に、観客も「うるせえ、なめんな!」と負けじと暴れ回る。

 

 

低音ボーカルがフェードアウトして “blood on the mosh pit ” が始まり、だんだんと明るい旋律が顔を出すと、それを見計らったかのように2日目初のステンドグラスがオープンした。先程までの鬼気迫る様子から一転して、笑顔で観客と歌う内藤や、ステージが暗転したあと観客とハイタッチを交わす浅見は、殴り合ったあと急激に心の距離が縮まる”マンガによくあるあの光景”を体現しているようだった。こんなにも高ぶるビートを目の前に突きつけられて踊らないのは損だ!そう思わされるステージだった。

 

 

 

■nim

 

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日本全国をハードなスケジュールで飛び回り、中国ツアーも成功させて今京都で最も精力的に活動しているバンドの1つnim。それだけあって、始まる前からnimのファンが多く詰め掛けていた。「新たな自分を探しにいく」という覚悟を英詞にのせた、“Not to late”では鬱々としたメロディーと、希望をのぞかせるようなフレーズが交互に展開され、その上にGt. /Vo.かとうの真っ直ぐで熱いボーカルが乗せた演奏を披露した。

 

 

「ボロフェスタに出られて本当に嬉しいです。よろしくお願いします!」かとうが笑顔でそう言うと“not in me”が始まる。間奏からCメロにかけてのギター2本のユニゾンが、狭いUndergroundステージに心地よく響いた。彼らの楽曲は英詞を用いたものが多いので気付きにくいかもしれないが、よく聴くとドライでひりついたことを歌っている。この曲も親しい人に向けてさんざん「つまらない人間だな、好きだと思ったことなんてないよ」と吐いたあとで「ま、冗談だけどね」と締めくくる。恋人に向けて歌ったとも取れるが、どこかのバンドへ向けたものなのか……なんて思いながら聴くとひやっとするし、彼らのパンクス精神を垣間見たような気分にさせられた。

 

 

「久しぶりに人に手紙を書いた」というエピソードと、手作りのフェスであるボロフェスタを重ね合わせたMCでは「皆も何かを自分の手で作ってみてほしい」と伝え、さらにDr.nongが、nimのステージを選んで足を運んでくれた観客へ感謝の想いを伝える。熱い演奏そのままに、やはり彼ら自身も熱い心根の持ち主だった。

 

 

 

■銀杏BOYZ (弾き語り)

 

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ボロフェスタ15周年の大トリを飾るのが弾き語り?と、意外に思った人も少なくなかっただろう。たとえそれが圧倒的カリスマ性を誇る伝説のバンド・銀杏BOYZの峯田和伸だったとしてもだ。 広いステージの上にはモッズコートを着てギターを抱えた峯田がひとり。いたってシンプルなセットの中、おもむろに奏で始めたのは“光”だった。

 

 

吠えるように、絞り出すように歌う「光」というフレーズを聴いていると、あたたかい光に体中を満たされるような感覚になる。1人の人間から放出されるエネルギーで、こんなに強いものを間近に感じたのは初めてだった。1曲目からあまりにも濃厚すぎて、「今この1曲だけでライブが終わってしまってもいいや」なんてことをぼんやり感じるほどだった。

 

 

青春パンクというジャンルに対して、「若い頃を思い出して懐かしい」なんて感想をきくが、本当はそんな生やさしいものではないと思う。特に峯田の吐き出す歌は、誰しもの心の中に眠っている、熱くドロドロしたどうにもできない気持ちに訴えかけてくる。「大人になってそんなもの出すのは恥ずかしい」と心の奥に押し込めたはずの気持ちを、「かっこつけんなよ」と遠慮なくえぐってくる。これだけ多くの人の耳に響くのは、きっとみんな心のどこかでそんな自分を引っ張り出してくれる誰かを待っているからなのだろうか。

 

 

「どんな汚い手を使ってもいいから、どうか死なないでください、そしたらまた会えますから」。濡れたような目でそう語りかける峯田は、観客から受け取った1輪のバラを手に去っていった。 鼻水を振り飛ばしながら歌っていた峯田だが、あとで聞いた話によるとこの時高熱があったとかなかったとか。こんな15周年の終幕に立ち会えたことを嬉しく思う。フロアが明るくなったあと、赤い目をしていたのは私だけではないはずだ。

 

 

photo:

岡安いつ美( 天才バンド / 忘れらんねえよ / 銀杏BOYZ(弾き語り) )

大西晴菜( Have a nice day! / nim)

 

 

【Day1】

▼山田和季:渡辺シュンスケ / jizue / ゆーきゃん 明るい部屋バンド / Gateballers / DENIMS

▼小倉陽子:台風クラブ / あっこゴリラ / CHAI / 夜の本気ダンス / クラムボン

▼山田克基:BiS / 立川吉笑 / ときめき☆ジャンボジャンボ / 井出ちよの (3776) / 花泥棒

▼稲本百合香:never young beach / 空きっ腹に酒 / 中村佳穗 / 3776

▼則松弘二: And summer club / 岡崎体育  / クリトリック・リス / tofubeats

▼森下優月:天才バンド / 忘れらんねえよ / Have a nice day! / nim / 銀杏BOYZ (弾き語り)

 

 

【夜露死苦】

山田克基:mogran’BAR / YeYe / ナカシマセイジ (Alffo Records)  / Seuss / PARKGOLF / 踊ってばかりの国 / HALFBY / どついたるねん / DJ言うこと聞くよな奴らじゃないぞズ / メシアと人人

 

 

【Day2】

▼山田和季:渡辺シュンスケ / jizue / ゆーきゃん 明るい部屋バンド / Gateballers / DENIMS

▼小倉陽子:Limited Express (has gone?) / 女王蜂 / グッドモーニングアメリカ / ナードマグネット / ワンダフルボーイズ

▼山田克基:BiSH / チプルソ / 加藤隆生 (ロボピッチャー) / 渡辺シュンスケ (Shroeder-Headz、cafelon)

▼稲本百合香:生ハムと焼うどん / 愛はズボーン / manchester school≡ / yonige

▼則松弘二: ミノウラヒロキマジックショー / POLYSICS / MOROHA / eastern youth / THE FULLTEENZ

▼森下優月:天才バンド / 忘れらんねえよ / Have a nice day! / nim / 銀杏BOYZ (弾き語り)

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