REVIEW
Absolutely Imagination
GEZAN
MUSIC 2017.10.03 Written By 山口 将司

昨年、アルバム『NEVER END ROLL』発売と同時にドラムが脱退。その後公募を経て新ドラマー石原ロスカルが加入してから初のリリースとなるGEZAN7インチ。

 

GEZAN2009年に大阪で結成、関西アンダーグラウンドゼロ世代ムーブメントが終焉を迎えつつある頃(個人的な印象では2010年末ミドリの解散により関西ゼロ世代というムーブメント的なものは一段落した気がする)から活動した後、2012年に上京。

 

十三月の甲虫としてリリースやイベント開催も積極的に行い、セミファイナルジャンキーや全感覚祭といった独創性溢れるイベントは各所で大きな反響を呼び、音楽性やシーンといったものを飛び越えていくようなクロスオーバーを見せ、走り続けている。

 

と、ここまでは文字を通して得られる情報だ。実は僕は彼らのライブをちゃんと見たことがまだ無い。ただ、彼らのことを愛している人がたくさんいることは知っている。僕の友達にもたくさんいる。僕が知っている彼らは皆、ただ手放しで好き、とかいうだけではなく、より深い所でGEZANというバンドのことを考え理解しようとしていたり、色々な感情がないまぜになった状態でいたり、皆それぞれ自分なりのGEZANを持っているように見える。そしてそんな風に誰かの深い所に降りていけるバンドというのはそうそういないということは、僕は良く知っている。

 

『Absolutely Imagination』MVを初めて見た時、そんな彼らの感情の一端が少し掴めたような気がした。7インチを購入し、もっと深くその世界に入り込まなければ、と半ば衝動的にレコードショップへ走った。

ドラマーが変わっての今作には「赤」を強く意識した2曲が収められている。その「赤」は、血の赤であり、夕陽の赤であり、どこか決意めいたものを感じる強さと儚さが同居する「赤」である。そして2曲どちらも目まぐるしいほどの情報量を詰め込んだ6分近い曲であるが、その長尺をとてつもない集中力でもって駆け抜けていく恐るべき力作だ。

 

A面曲『Absolutely Imagination』は、「おわらない歌が終わったから 暗闇なんだ現在 リンダリンダじゃもう震えない心から今はじまる」という、言わずもがなTHE BLUE HEARTSからの大胆な引用と、その先へ進もうとする意志(「シティポップじゃなんか足りない」というフレーズまである)の表明と言っても良いほど力強く耳に残る歌い出しから始まる。マヒトのVoは一聴するとまず特徴的な甲高い声をしていることに耳を奪われるが、聴き進めればすぐに途轍もなく美しいメロディを歌っていることに気付かされる。口に出すのが恥ずかしくなってしまうかもしれない言葉を、必然性を持って歌い切れるのはこのメロディラインを創造することが出来るからに他ならない。

 

リフレインされる「Absolutely Imagination War」というフレーズ。想像することで全てを越えていけ、そしてその想像力をぶつけ合い、戦わせろと言わんばかりの熱量に圧倒される。さらにこの曲はそのまま走り抜けるのではなく一度ビートダウンし、

 

「MINOR THREAT 少数の脅威 汚れちまった昨日と今日に 幸せな奴はいないって論理 俺は知ってる全員lonely」

 

というパンチラインを叩き込んだり、

 

「PMA」

 

というシャウトを入れ込んだりと、まさにこちらの想像力を揺さぶりまくるのだ。僕らの世代のバンドで「P.M.A!」と確信を持ってシャウト出来た奴などいなかった。ドライヴしながら激しい歪みと疾走感で駆け抜けていくギターサウンドに、性急さと正確さを縦横無尽に行き来するドラムがどこまでも美しい。

 

新ドラマーを含めた4人で初めて音合わせをした時に出来たのがこの曲であるとマヒトが公言しているように、永遠に続いていくはずだと信じていたものが一度終わりを告げてしまった切なさとそれを越えていく想像力の強さを夕陽の赤や自らに流れ脈打つ血の赤という風景になぞらえながら鮮やかに歌い上げていくが、アウトロでマヒトは「狂い出した blue hour」という前作の収録曲『blue hour』のフレーズを絶叫しながら青と赤を対比して見せ、もう一度ここから新たなスタートを切る為の過去との決別を印象づける。

 

B面『Ambient Red』は一転、壮大な音像の中で夕焼けの赤を文字通りアンビエントな情景として捉えながら「Dance with me once more」と繰り返す。

 

喪失、終焉から新たに立ち上がること、そしてその傍らにいる人たちを優しく包み込むような、「赤」という色から想起出来る様々な風景をGEZANは鮮やかに、そして狂おしいほどに見事に表現しきっている。ロックバンドであれば誰もが憧れるそんな表現に達することが出来ているのは、

 

「相変わらず地面を踏む足取りは重いが 俺は音楽を使ってそれを羽に変えるのさ」

 

と言えてしまう、音楽を信じる強さ、そしてそれを人に納得させてしまうバンドとしての強さがあるが故だろう。全てのロックミュージックを愛する人はGEZANを聴いて打ちのめされ、嫉妬し、自らの想像力を試したくなるだろう。そんな2曲。

 

今年10月7日には前述した彼らの活動の大きなトピックの一つである「全感覚祭」がついに、初めて彼らの地元大阪の堺ROUTE26特設会場にて行われる。GEZANの持つ狂おしいまでの魅力を垣間見れるチャンスであると思うし、僕はこの目で、そのバンドの力を受け止め、自らの想像力をぶつけてみたい。

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