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タイと関西のインディーが交差した2日間 – 『Morning Tide』大阪・京都公演ライブレポート

ANTENNA主催のライブイベント『Morning Tide』が、5月11日(月)に大阪・〈LIVE SPACE CONPASS〉、5月12日(火)に京都・〈livehouse nano〉で開催された。タイのインディーソウルバンド・Supergoods(スーパーグッズ)を迎え、大阪公演にはTAMIWとDENIMS、京都公演にはAbove Oak Fields、踊る!ディスコ室町、NABOWAが出演。国やジャンルを越えた2日間の模様をレポートする。

MUSIC 2026.06.11 Written By マーガレット 安井

『Morning Tide』と聞いて、懐かしさを覚えた。

 

ANTENNAが2019年に立ち上げたこのイベントは、関西を中心に活動する“これから”のアーティストを紹介するライブ企画だった。第1回は「長く愛される(音楽)」をテーマに、バレーボウイズといちやなぎのツーマンライブが開催。その後、コロナ禍などを経てしばらく開催が途絶えていたが、今回7年ぶりに復活した。

 

もともとは関西のアーティストを軸にした企画だったが、ここ数年、ANTENNAはアジアの音楽シーンにも目を向けてきた。その流れの中で、今回メインアクトとして迎えられたのが、タイのインディーシーンで注目を集めるバンド、Supergoodsである。

Supergoodsは、My(Vo)、Arm(Dr)、Erm(Gt)による3人組バンド。2025年にはフル・アルバム『Fabulous Forever』を発表し、タイ音楽シーンを代表するアワード『TOTY MUSIC AWARDS』で「RECORD OF THE YEAR」「GROUP ARTIST OF THE YEAR」の2部門を受賞している。今回はキーボード、ベース、コーラスのサポートメンバーを迎えた6人編成での来日ツアーとなった。

 

また今回は、大阪公演と京都公演に、それぞれの地域を拠点とするアーティストが出演。大阪公演には、関西のみならず海外でも活躍するポスト・トリップホップバンドのTAMIW、ファンクやブルースをルーツに日常の喜怒哀楽に寄り添うDENIMSが出演した。京都公演には、ブラジル音楽に魅了された京都出身の4人組バンド・Above Oak Fields、ファンキーなチューンで会場をパーティー空間へと誘う踊る!ディスコ室町、そして3人体制で活動を再開するNABOWAが新体制のお披露目として出演した。

 

会場全体が踊り出すような熱気に包まれた2日間。その模様を、大阪公演から振り返っていく。

張りつめた空気が、歌にほどかれ、グルーヴへと変わる大阪公演(TAMIW、DENIMS、Supergoods)

大阪公演は、一言でいえば三者三様の音が交わり、高揚へと向かっていく一夜だった。TAMIWが強靭な音像でフロアに緊張感をもたらし、DENIMSが人懐っこい歌で親密な空気を生み、最後はSupergoodsのグルーヴによって、その緊張感と親密さがダンスの熱気へと一気に解放されていった。

大阪公演の幕開けを担ったのはTAMIW。この日はUKツアー開催直前で、ライブ当日の深夜26時の便でロンドンへ旅立つ予定だったという。一度は出演を迷ったそうだが、Supergoodsの音楽に惹かれ、出演を決めたという。そうした経緯もあってか、この日の演奏にはいつにも増して集中力が宿っていた。

 

重厚なベースとサイケデリックな音像が印象的な“Anthem of Sutra”で始まると、フロアには張り詰めた緊張感が広がっていく。TamiKeem(Vo)のラップが絡む“Deep ‘n’ Shallow”では、ソリッドなビートと声が有機的に混ざり合い、バンドの硬質な魅力が際立った。

 

オルタナティブ、サイケデリック、ハードロック、ヒップホップなど、さまざまな要素を取り込みながらも、どの曲にもTAMIWならではの硬質な質感が貫かれている。曲ごとに表情を変えながら、その緊張感は最後まで途切れない。ラストの“Protest you”では、力強い音が会場全体を包み込んだ。

DENIMSのステージで印象的だったのは、〈LIVE SPACE CONPASS〉という場所と、彼らの歌が自然に重なっていたことだった。この日演奏された“夜にとけて”は、同会場でMVが撮影された楽曲でもある。ライブハウスで過ごす一夜と、祭りのあとに残る名残惜しさ。その歌がCONPASSで鳴ることで、会場そのものの記憶を呼び起こすような時間が生まれていた。

 

そこに至るまでの流れもDENIMSらしい。“Life Is Good”では、ブルージーで心地よいサウンドが広がり、TAMIWが張りつめさせた空気を少しずつほぐしていく。釜中健伍(Vo / Gt)の歌には、楽しさ、わびしさ、切なさといった日々の感情が、飾らない言葉で刻まれている。

 

終盤の“Song For You & Me”で歌われた「往生際悪く奏でよう こんな歌が今必要なんだ」という一節には、今も昔も変わらないDENIMSの芯がにじんでいた。その「あるがまま」を肯定する歌は、TAMIWが生み出した緊張感を、ゆっくりとほどいていくようだった。

Supergoodsは「インディーソウルバンド」と形容されることが多い。だが、実際にライブを観ると、ソウルという言葉だけでは括れない奥行きがあることに気づかされる。

 

“Discoentelechy”や“Take Me”など、『Fabulous Forever』の楽曲を中心に展開されたステージでは、神秘的でアシッドを感じるサウンドの中に、Pファンク的な素養がにじんでいた。一方で、Armのビートはとにかくクールで、リズムマシンのような硬質さを持っている。さらに、要所で飛び出すシンセの音色には、どこかモールス信号のような無機質なニュアンスも感じられた。

 

その電子的な質感はどこから来ているのか。そんなことを考えながら観ていると、終盤にはKraftwerk(クラフトワーク)の“The Robots”をカバー。そこで初めて、Supergoodsの音楽には、ジャーマン・テクノの感覚も流れ込んでいるのだ。

 

ソウル、Pファンク、テクノを自然に接続しながら演奏する。そのジャンルの越境感こそ、Supergoodsの面白さなのだろう。そしてグルーヴは、大阪公演の最後に、それまでのステージで生まれていた緊張感と温かさを、ダンスという形で一気に解放していったかのようだった。

京都公演に広がった、陽気なグルーヴと変化し続ける音像(Above Oak Fields、踊る!ディスコ室町、NABOWA、Supergoods)

京都公演は、大阪公演とはまた違う多彩さを持った夜だった。Above Oak Fieldsが会場にメロウな夏の空気を広げ、踊る!ディスコ室町がローカルな祝祭感を生み出す。そこにNABOWAが3人体制での新たな音像を提示し、最後はSupergoodsがその多彩な流れをダンスの熱気へとまとめていった。

京都公演のトップバッターを担ったのはAbove Oak Fields。ボサノヴァやカリプソなどのブラジル音楽を参照しながらも、そのサウンドは単に明るく乾いたものではない。初期キリンジを思わせるAOR感と、歌謡曲的な湿り気が混ざり合った音像には、どこかメロウで、日本の夏を思わせる余韻が漂っていた。

 

また、美しく重なるツインボーカルも印象的だ。軽やかなリズムに乗るメロディには、明るさの中にほのかな切なさがあり、会場の空気は少しずつ柔らかくなっていく。派手にフロアを沸かせるのではなく、聴き手の身体をゆっくりとほぐしながら、京都公演の入口を作っていくようなステージだった。

踊る!ディスコ室町のごきげんなグルーヴは、いつだって会場をダンスホールに変える。前口上を含めたユーモラスな語り口に、一糸乱れぬアンサンブル。そしてフロアに極上のファンクネスをたたきつける彼らは、単なるパーティーバンドでは終わらない。

 

この日も、リハーサルの段階から本番さながらの演奏で会場の空気を変え、「京都は上京区、室町通り、武者小路を下がったところ、アパートディスコ室町の420号室からやってきた」というお決まりの口上で、フロアを自分たちのムードへ引き込んでいく。

 

こうなれば、もはや彼らの独壇場。“(A BOWL OF)RICE”や“PLAY”では、ミドルテンポながらキレのいい演奏で会場を揺らし、“スイカ”では鉄壁のアンサンブルを披露。ラストに披露された新曲でも、そのハピネスは変わらなかった。気がつけば、フロアのあちこちで自然と身体が揺れている。今宵もディスコ室町は会場をパーティーへと変えてみせた。

 

演奏後にあちらこちらから「あんな音楽だったっけ?」という声が聞こえてきたのはNABOWAだった。2024年にドラムの川上優が卒業し、活動を休止。ここ最近は「活動再開直前Trio set」として、3人編成で実験的な音楽を試みている。今回のライブは、その試みが新たな形へと結びつきつつあることを実感させるものだった。

 

新曲だけでなく、“揺らぐ魚”や“SUN”といった既存曲も披露されたが、その印象は4人編成の時代とは大きく変わっていた。かつてドラムが担っていた肉体的なグルーヴはブレイクビートへと置き換わり、ノイズやアンビエントの要素が前面に出ることで、これまでにないアバンギャルドな表情を見せていた。

 

ただ、実験的でありながら、NABOWAらしい情景が失われているわけではない。山本啓(Vn)のバイオリンが重なると、楽曲の輪郭はいっそう鮮明になり、豊かなメロディーが会場の色彩を変えていった。結成から20年以上を経てもなお変化を重ねるNABOWA。その現在地を体感するライブだった。

そして京都公演のトリを務めたSupergoodsは、Above Oak Fieldsの夏の空気、踊る!ディスコ室町の祝祭感、NABOWAのエクスペリメンタルな音像を受けて、フロアをダンスの熱気へと導いていった。

 

ライブでは大阪公演と同様に『Fabulous Forever』からのナンバーを立て続けに披露。Myの可愛らしさと艶やかさを併せ持つ歌声も素晴らしかったが、何よりもバンド全体で作り上げるサイケデリックな音像に驚かされた。冷静なビート運びと熱量の高いパフォーマンスが噛み合い、満員の会場は徐々に熱を帯びていく。終盤には、大阪公演に続いてKraftwerk(クラフトワーク)の“The Robots”をカバー。だが、圧巻だったのはその後だ。

 

ヴォーカルがステージから下がると、Supergoodsはジャムバンドのような表情を見せていく。クールに刻まれるビートの上で演奏は確かな推進力を増し、そこにErmのギターソロが重なることで、フロアの熱はさらに上がっていった。会場には大きなグルーヴが生まれ、京都公演のクライマックスにふさわしい高揚感が広がっていた。

大阪公演では、TAMIWの緊張感とDENIMSの親密さをダンスの熱気へと変えていたSupergoods。一方の京都公演では、各アクトが生み出した多彩な空気に、ひとつの到達点を与えるように響いていた。それでも両日ともに、国やジャンルを越えてフロアをひとつにする力をまざまざと見せつけた。

 

関西のアクトとタイのインディーシーンが同じフロアで交わり、観客を踊らせた2日間。7年ぶりに帰ってきた『Morning Tide』は、その名前の通り、新しい潮の気配を感じさせるイベントだった。

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