INTERVIEW

こだわりと他者性を遊泳するバンド - ペペッターズ『KUCD』リリースインタビュー

MUSIC 2020.02.02 Written By マーガレット 安井

神戸に面白いバンドが存在する。名前はペペッターズ。広村康平(Vo / Gt)、中西幸宏(Ba / Cho)、國乘豪(Dr / Cho)の3人によって、2011年活動をスタートし、2015年には日本最大のチャリティーロックフェス『COMIN’KOBE』の公開ライヴ・オーディションにてグランプリ、同年の『RO69JACK 2015』でも入賞する。また2018年にはチャットモンチーのトリビュートアルバムへの参加オーディションで最優秀賞を受賞し、カヴァーした楽曲“こころとあたま”が『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』に収録された。

 

彼らの面白さは数え上げるとキリがない。幾重にもフィルターを通した言葉で出来た歌詞、ヘッドホンから漏れるくらい音数の多いサウンド、それをライブでは同期を使わずに3人だけで体現しようとする姿勢など、「なぜこのようなことが出来るのか」という説明がつかない瞬間がある。今回アンテナでは最新アルバム『KUCD』のリリースに伴い、彼らにインタビューを敢行した。そこで見えてきたのは、音源は打ち込みを入れながらも、ライブでは人力でやるというようなこだわりと、広村康平が楽曲をつくりながらもメンバーの発想を取り入れたりエンジニアをコーラスに起用するといった他者性の間を遊泳し、自分たちにしか出来ない音楽を突き詰めようとするバンドの姿であった。

人間がやっていることがわかるバンドとして活動したい

──

ペペッターズが結成した経緯を教えて下さい。

広村康平(以下、広村)

僕は高校生の頃からバンドをやりたいと思っていたんですけど、タイミングが合わず出来なかったんです。それで卒業してから、もともとドラムをやっていた友人の國乘と、楽器は触ったことはないがライブに一緒に行くリスナー仲間だった中西を誘い、ペペッターズを結成しました。

中西幸宏(以下、中西)

広村が「どこかにベースを弾ける人はいないかな」と僕に聞いてきたので、経験はなかったんですけど気軽に「探しているんだったら、僕がベース弾くよ」と言いました。それ以降、広村が先生となって、僕にベースを教えてくれてます。

──

ペペッターズはどんな音楽性を目指されていますか?

広村

僕はペトロールズが好きで、最初は長岡亮介さんみたいな音楽をやりたいと思っていたんです。しかし彼らの音楽は玄人を唸らせることをやっているので、よりポピュラリティのある音楽にしたいと思いました。そこでチャットモンチーのような、はっきりとメンバー個々がやろうとしていることがわかり、様々なリスナーに笑顔で楽しんでもらえる音楽を作りを目指しています。

──

チャットモンチーといえば、2018年に『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』の一般公募で最優秀賞を受賞し“こころとあたま”が収録されましたね。

中西

このことで、関西以外でも自分たちのことを知ってくれている人が増えましたね。

広村

高校生のときに初めてチャットモンチーを聴くまでは、オーケストラや打ち込みなど、誰が何をやっているか判らないものばかりを聴いていました。でもチャットモンチーの音楽は、ギターを弾いている、ドラムを叩いている、など「誰が何をやっているか」が分かったんです。だから自分たちも「人間がやっていることが分かるバンド」をやろうと思い、活動しています。

──

ペペッターズの楽曲は音数がとても多いですよね。それは「誰が何をやっているか分からない音楽」だとも言えませんか?

広村

音源ではそうかもしれません。でもライブで演奏しているという部分では、一貫性があるとは思っていて。音源には打ち込みもありますが、ライブでは同期を一切使わず、エフェクターを使用して3人だけで鳴らしています。

──

ではなぜ、音源では打ち込みを入れるのですか?

広村

8年くらい前、“アザラシ”という楽曲を録音することがあったんですけど、ライブで演奏するとミスをすることもあって。エンジニアさんに「ライブでは出来ないような演奏で録りたい」と言ったんですけど、エンジニアさんから「音源はライブと同じように録音して、ライブのクオリティーを上げた方がいいのでは?」と言われてしまったんです。

 

そこから好きなバンドの音源とライブ音源を聴き比べて研究しましたが、どのバンドも良い音楽を作ることしか考えていなくて、ライブと音源が必ずしも同じである必要はないんだなと思いました。だから自分たちの音源も良いものを作ることに注力し、ライブとは違うものを作った方が楽曲の魅力を十分伝えられると思い、打ち込みも入れています。

──

ちなみにバンドの音楽性はメンバー全員で共有されていましたか?

中西

たぶん今、初めて聴きました。ただ僕は共有以前に、バンドをやり始めた当初はベースを弾くだけで頭がいっぱいで。弾いた音が半音ズレていたりもわからない状態で、いつも不安でした。

國乘豪(以下、國乘)

僕はそもそもメタルとかハードロックが好きだったので、広村の音楽はそれまで聴いていたものとは全く違うことをやっているとは思っていました。

國乘豪(Dr / Cho)

自分の思い通りに出来た楽曲よりも、メンバーの個性が色濃く出た作品の方がすごく瑞々しかった

──

RO69JACK2015のインタビューのなかで、楽曲制作に関して「広村さんが打ち込みツールで曲をある程度作り、全員でアレンジ」と「スタジオで広村さんがコードやメロディーを直感で考え、それを全員でアレンジ」の2つの手法を取られているように語られていましたね。

広村

打ち込みツールを使う理由に関しては、「このタイミングでシンバル」とか、「ここでシンコペーション」「ここで休符」という曲の構成を2人に伝えることが苦手で。それでざっくりとしたソングマップを作り、Aメロ、Bメロ、サビと伝えています。そうすることで、自分の頭の中も整理できるし、曲の概要を2人に素早く伝えることができるんです。

 

あと「メロディーを直感で考え」と格好良く言っていますが、実際は思いついたコードに適当にドラムを叩いて、それが合えばルート(根音)を確認して、中西にどのベース音を弾いたらいいかを伝えます。そういう作業を積み重ねると、パズルのピースみたいにフレーズの断片がいくつも出来上がるんです。それである時に「あ、このフレーズって、1週間前にできたフレーズと繋がるんじゃない?」とパズルのピース同士が合ったりして、それで1曲できるという感じです。

ただソングマップや曲の断片が出来るたびに、必ず2人に曲作りを進めて良いかを確認します。まあ國乘は何を持ってきても「いいやん!」と言いますが、中西は「うーん、広村ならもうちょっと良い音楽作れるんやない?」と言うことが多いですね。そこで、みんなが納得しなかったら曲を作り直します。

──

その話を聴くと、ペペッターズは広村さんの頭の中の音楽を再現するというバンドだったりするのでしょうか?

広村

いや、そういうバンドではないからこそ、今まで続いていると思います。僕が指示したことを再現しようとしたけれど、個性が出て全然違うことになった。でも、それがかっこ良くて「自分にないことをやられた!」と思うことが多々ありました。それに自分だけで曲を作るよりも、2人と曲作りをすることがやっていて楽しいし、「ペペッターズの曲、良いよね」と言ってくれる人も、増えたように感じます。

 

バンドを始めた頃は「自分の思い通りにならないな」と思うことが何度もありました。ところが完璧に思い描いた通りに演奏できても、楽曲の出来がイマイチだった。それに比べて2人の個性が色濃く出た作品は、瑞々しいサウンドですごく良かったんです。なので確かに曲は僕が作っていますが、曲の成分にはメンバー全員のエッセンスが含まれています。

國乘

広村の音を再現しようとは思うのですが、ハードロック、ヘビーメタルなど、聴いてきた音楽が違うので、そのエッセンスがビートに出ているとは思います。

中西

僕の場合は個性ではなく、例えば弾き間違えがあったら、広村から「あ、それもいいやん。それに変えてくれない?」と言われて採用されたことはありました。

中西幸宏(Ba / Cho)

かっこよくて必要であれば、音数が多くても邪魔にはならない

──

ペペッターズの特徴は音数の多い所だと思います。特に先程も話に出された、“アザラシ”という曲はYouTubeで公開されているものと『materia=material』のバージョンを比較すると、明らかに音数が増えたことがわかります。

広村

音数を多くしている理由はペトロールズの影響なんです。彼らの楽曲は「最低限の機能美」と言えるほど音数が少ないじゃないですか。ただ『Problems』(2012年)というアルバムはギターが10本以上ダビングされているんですね。これがとてもカッコ良かったし「本当に必要なギターなら、音数が多くても邪魔にはならない」と感じて、音数を増やしました。

──

どの辺りからそれを実践しようと思われました?

広村

1stミニ・アルバムの『andP』ぐらいからですね。ただ今から思えば、多重録音することに焦点を置きすぎて、ギターが少しうるさい作りになったと思っていて。だから今は音数は多くしながら、ギターが邪魔にならない音作りを心がけています。

──

音数の多さの要因の一つはコーラスもあると思います。ペペッターズのコーラスは「ハーモニー」の要素よりもビートや楽器的な扱いをされてる印象が強いのかなと。

広村

それは2人がハモりが苦手なので、独立したメロディーをコーラスに入れる方が良い、という考えでやっていました。

國乘

コーラスは特に難しいですね。そもそも僕は歌が嫌いだったので(笑)。コーラスにも最初は抵抗ありましたが、今は「自分のコーラスがないと楽曲が成立しない」と思いやっています。

中西

僕も歌は苦手で、特に弾きながらコーラスをすることが全くできなかったんですけど試行錯誤して、今は少しはマシになったのかなと思います。

──

どういう試行錯誤をしたのですか?

中西

とりあえず楽器を触り、楽曲を体に覚えさせました。コードとか以前に、ベースの弦の場所を覚えて何度も練習をし、体にベース弦の場所を染み込ませたら、口をついてこさせるよう特訓しました。

──

2人とも苦手なことを、チャレンジしているじゃないですか。そこまでして、広村さんの楽曲をやろうと思う理由は一体なんですか?

國乘

それは広村には無限に可能性があると思っているからです。彼には常人とは違う感性があると思うし、このバンドの音楽が世の中に広まっていく可能性を感じているので、僕はやっています。

中西

僕は自分が「ベースをやる」と言ったからです。不意に言ってしまった言葉ですが、それを言った以上は続けないといけないと思っています。それにメンバーのことが僕は好きなので。だからペペッターズがあるから音楽を続けていると言ってもいいと思います。

エンジニアさんとのお近づきの印として、コーラスに参加してもらいました

──

今回の『KUCD』は前作の『materia=material』から、1年足らずリリースとなりましたね。急ピッチで作られたのには何か理由があるのでしょうか?

広村

僕たちは毎年レコーディングをしたいと思うバンドでして。僕自身が曲を作るのがすごく好きで、気がつけば1年に一度はレコーディングをしようというという暗黙のルールみたなものが出来上がっています。

中西

毎年、スタジオに楽器を置いて毎日レコーディングして終わったら飲んで、というのを夏にやっています。まあ夏合宿みたいなものですね。

広村

僕らレコーディングが本当に楽しいんですよ。エンジニアさんにも「他のバンドは緊張感もあるのに、ペペッターズは本当に楽しそうだよね」と言われます。だから毎年やりたいなと思い、定期的にアルバムを出しています。

──

普通アルバムを作るとなると、何年もかかるアーティストもいるじゃないですか。産みの苦しみ、みたいなものはありませんか?

広村

不思議なもので、納期が決まるとアイデアが出てくるんです。『KUCD』はレコーディング段階で6曲しかアイデアはなかったんですが、1ヶ月のレコーディング期間で「この間に頑張ったらアルバムできるんじゃない」という話になって、間奏曲的な“allude Op.1”“allude Op.2”を含めて4曲作りました。

──

『KUCD』に“Dynamo FOR PINE”という曲がありますが、この曲はシングル『1312 or 13』に収録されている“Dynamo”をアルバム用にアレンジした作品ですよね。

広村

そうです。僕らエンジニアさんとすごく仲良くさせてもらっていて。「FOR PINE」と書いているじゃないですか。それはPINEから始まるエンジニアさんの会社があって、その人たちがコーラスに参加しているんです。

──

なぜエンジニアさんをコーラスにいれようと思ったんですか?

広村

うちは親がお土産を持たせるタイプだったので、僕たちレコーディングの度にエンジニアさんにお土産を持っていくんです。ただお土産って1度きりだと社交辞令だし、何度も持っていくと気を使わせる。エンジニアさんも喜んでは下さっているんですが、より距離を縮めたいと考えた時に、お近づきの印に僕たちの音源に参加してもらおうと思ったんです。

──

最近のアルバム(『KUCD』と『materia=material』)と昔のアルバム(『Croftick』『andP』)と比較すると打ち込みを多用されているように思います。楽曲に打ち込みを導入しようとしたきっかけとかありますか。

広村

それもエンジニアさんが関係していて。最近のアルバムと昔のアルバムのちょうど架け橋になっているシングル『1414 or 15』という作品がありまして。この作品はレコーディング日数が2枚のミニアルバムとくらべて短かったんです。それでシングル2曲にしようかと思っていたら、エンジニアさんが「打ち込みでよかったら、ドラムとベースを録っている間に別のエンジニアさんと一緒に曲を作れる」と言ってくれて。それで出来たのが3曲目“dosei”という曲です。

その経験もあって『materia=material』を録る時に、打ち込み曲を入れたほうが少ない時間でたくさん録れるし、ミックス、マスタリングに2人のエンジニアさんを内包することで、その違いを聴き比べる楽しさも作品に収められる。更に打ち込みの曲をライブでやるならどうしたらいいか考えるのもワクワクしたので、打ち込み曲を増やしました。

──

打ち込み曲は広村さん1人で作っていますか?

広村

いえ。打ち込みの曲も3人で作り、それを生でレコーディングするか打ち込みで作るかを判断しています。その判断は、例えばこのベースラインをよりエグくしたいとか、ノイズを入れたい、と思ったら打ち込みにするんです。

研究してつきつめた先に、僕らにしか出来ない音楽が出来たら最高なのかな

──

2曲目の“STINT”のについてTwitterで「説明できない気持ちを説明つかないことばかりに置き換えて歌たった」と書いていましたが、ペペッターズの曲は「説明のつかない言葉」を歌詞に取り入れることが多い気がします。

広村

歌詞の一個、一個に僕だけがわかる意味が紛れ込んだりしています。それこそ「説明してください」と言われたら、全部説明したいんですけど、初めて聴いてくれる人には疑問に思ってくれた方がいいなと感じていて。

 

人って、何かに引っかかった時に、その原因を考えると思うんです。そうすると頭の中に迷路みたいなものが出来上がり、それを紐解くことでその人なりの解釈や答えが出ると思うんです。これは自分のことを歌った曲だ、○○のことを歌った曲だ、とか。僕たちの曲は受け取りかたは自由ですし、僕と考えが違っていたら嬉しいですね。

──

解釈が違うと「伝えたいことが、伝わっていない」と思いガッカリされると感じていましたが、嬉しいんですね。

広村

僕はペトロールズとチャットモンチーの他に、People In The Boxにも影響を受けていて。ただ初めてライブで観た時には理解が出来なかったんです。言葉の内容や、演奏の展開、曲調とか、全てが分からなかったんですけど、何か引っかかるものを感じて。もう一度音源で彼らの曲を聴いたら、ライブで観た時と印象が違って、すごくカッコいいと思って。その時に「好きな物やカッコいいものって、最初から理解出来ないこともあるのでは」と気付いたんです。

 

自分の中で理解出来ないものが表れた時、「わからない」と突っぱねるか、「なんか引っかかる」の2つに分けられると思うんです。突っぱねられたら、それは必要ないもの。だけど内容が伝わっていないのに、気になる、知りたい、と思わせる曲を作れていたら、それはガッカリすることではなく、素晴らしいことだと思うんです。

──

最後に今後の展望を、それぞれお聞かせください。

中西

常に「変わったね」と言われたいです。良いところは残しつつ、新たなエッセンスを入れて、それが活きるようにしたい。そして個人的なインプットをもっとしっかりと行って、それをバンドへアウトプットしていきたいと思います。

國乘

個人的には野外フェスに出たいです。あとはクリエイティブな人間になりたいなと思っています。ドラマーってプレイヤーになりがちなので、今年1年は音楽だけでなく、絵画に挑戦するなど新しいことをやって、クリエイティブな力を養いたい。

広村

僕はエンジニアさんを通さないで、自分でマスタリング、ミックスまでして作品を出したいです。それがミュージシャンのレベルを上げられる方法の1つだと思っていて。僕たちの作品は、ペペッターズの3人だけでは出来なかったものばかりですし、人との関わりの中で作られた素晴らしいものではあります。でも個人の突き詰めを怠ってはいけないし、まだ3人とも掘り下げられていない部分もあると思うんです。僕はペペッターズにしか作り出せない物を作りたいと思っていて、そのためにもっと研究して、つきつめた先に僕らにしか出来ない音楽が出来たら最高なのかなと思います。

作品情報

 

 

アーティスト:ペペッターズ
タイトル:KUCD
レーベル:健友レコード
発売日:2019年11月02日
価格:2,500円(税別)
品番:KUCD-006 

 

収録曲

 

01. allude Op.1
02. STINT
03. 鉄球
04. コルト
05. PAULA
06. 朝を手に持って
07. Dynamo FOR PINE
08. Cenote
09. allude Op.2
10. ごく自然な秘密

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