REVIEW
wander packsシリーズ
Noranekoguts
MUSIC 2022.05.08 Written By マーガレット 安井

向き合うことで拡張していく音楽

「こんなロックンロールが聴きたかった」

 

私は初めて観た2ピースバンドに胸を揺さぶられていた。彼女たちの名前は Noranekoguts。京都精華大学出身で2015年に結成。元々は野良猫ガッツ名義で3人組で活動をしていたが、メンバーが脱退し、現在はガッツ(Vo / Gt)とぽてと(Dr)のツーピースでオルタナティブなサウンドをかき鳴らす。現在、彼女たちは『wander packs』というDIYで作られたシングルを4枚リリースしている。私はライブ終了後に、物販へと駆け込んで彼女たちの『wander packs』シリーズを全作品購入し、帰宅後全作品を聴いた。そこで分かったのは Noranekoguts は1つの音楽を深堀するバンドではなく、常に自分たちの今と向き合い音楽性を拡張しているということだ。

『wander packs 02』以前の音楽は打ち込み音も多用し、余白の多い曲作りをしていた。またガッツのボーカルは芯は強いが、気だるく素朴な歌声である。以前、ANTENNAの『今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト』のなかでLive House Pangeaの店長である吉條 壽記氏が彼女たちについて「初期のYeah Yeah Yeahs(ヤー・ヤー・ヤーズ)にハルカリ風味を足したような空気」と語っていたが、それはまさにこの頃のことを指すように思われる。Yeah Yeah Yeahsの持つパンキッシュでチープながらも推進力のある音楽とハルカリの可愛げと気だるさが同居する音楽が合わさった。それがこの時期の彼女たちの音楽であった。

ところが『wander packs 03』以降、Noranekoguts は力強くしなやかなサウンドへと変化する。1曲目のインストナンバーである“rude”はエッジを利かせたような鋭いギターと力強いビートで、Lenny Kravitz(レニー・クラヴィッツ)を彷彿とさせるような濃厚なロックンロールをリスナーへと叩きつける。さらに『wander packs 04』の“らしいどこ”はリバーブをかけたボーカルと歪むギター音が華麗なサイケデリアを生みながらも、その力強いグルーヴで前進していくナンバーだ。この濃厚なサウンドは、それまでの気だるげなパンキッシュさには含まれていなかった要素である。だが『wander packs 04』には、『wander packs 02』以前の要素を継いだ“できないわ”のような曲もあり、彼女たちの音楽性が変化したというよりも、自身の音楽性を拡張したと言ったほうが正しいであろう。

 

今回このコラムを書くにあたり、彼女たちの過去の音楽性を知るため野良猫ガッツの時代の音源を聴こうと考えたのだが、すでにストリーミング配信は終了し、CDも今は扱っている店はほぼない状態であった。だが、たまたま普段からお世話になっている HOOK UP RECORDS でシングル『魚よ/泣かなくちゃ』を手に入れたのと、動画で唯一公開されている“本気の見せ方”。その3曲と Noranekoguts の楽曲を聴いた私の印象は Ramones(ラモーンズ)であった。荒っぽいが勢いがあり、ロックンロールのグルーヴで初期衝動を歌にする野良猫ガッツはRamonesが体現したアメリカンパンクスのようであった。

だが2人組となり、今まで培ったものを活かしながらも、3人時代とは違った新しい方向性を模索した。その結果が1つのスタイルにこだわらず、貪欲に先人たちの音楽を取り込んで常に進化をする今の Noranekoguts の音楽になったのかもしれない。正直まだまだ私は Noranekoguts のことはわからないことだらけだ。だが、今も自分たちの型をさがして試行錯誤しているということは音楽を聴けばわかる。自分たちの今と向き合い、音楽性を拡張するバンド。次なる音源が出た時、彼女たちの音楽がどう変化するのか楽しみだ。

『wander packs』シリーズ

 

フォーマット:CD

価格:各¥500(税込)

販売:THISTIME ONLINE STORE motion records

 

 

収録曲

wander packs 01

1.opening

2.こどものようでいて

3.気まぐれのセンス

 

wander packs 02

1.onsen

2.あの日のサンダル

3.なみだの肴

 

wander packs 03

1.rude

2.でもね、言葉じゃあらわせない

3.おいとま

 

wander packs 04

1.らしいどこ

2.できないわ

3.Pleats

 

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