2022年4月に結成した、大阪を拠点に活動する4人組バンドoOo(オー)。結成1年余りではあるが、2023年に行われた関西最大の十代才能発掘プロジェクト『十代白書』で決勝に進出するなど、すでに関西では頭角を現しているバンドである。そんな彼・彼女らの音楽の特徴は、本人たちの言葉を借りるならば「ノスタルジー」というのがあげられる。
5月8日にリリースした1st EP『New Jeans』を聴くと、サウンド自体はインディーロックやポップ・パンク的な要素を持ち合わせており、カラっと明るい。またそれに輪をかけて、女性ボーカルのちゃな(Vo / Gt)による瑞々しくも堂々とした歌声がより明るく、きらびやかなものにしていく。ただ一方で男性ボーカルのリイマ(Vo / Gt)の声は若干の気だるさや、ぼくとつさを感じさせる陰のエッセンスを含む。すなわちちゃなとリイマ、陽と陰が掛け合いをするとそのコントラストが、oOoの音楽の彩りとなっている。
またこの陰陽が交錯していく心地はリイマが書く歌詞にも表れている。
踏まれた花気にしてSlowl
気にしないでSay bye bye “girl”
いつも私は何処にいるの 枯れた胸の中にある物 忘れそうな忘れそうな この想い
ずっと私はここにいるよ 離ればなれでも守るから 溢れそうな溢れそうな この想い 飛ばして “What feeling”
これらの歌詞に共通するのは私のネガティブな意見に対して、それを打ち消すポジティブな意見を提示するあなたの存在がいる。また二人以外の存在は描かれない。oOoの提示するもの、それは「YOU&Iのセカイ」というイノセントな恋愛関係だ。思慮も打算も、その歌詞世界には存在しない。初々しい無邪気さみたいなものが、私たちリスナーの過去とリンクし、懐かしさへと変換されるのではないだろうか。
さらにどれだけ自己を否定しても、無条件で肯定するという構造自体、「恋愛」ではなく「母性的」である。この母性的な構造は例えば高橋留美子の『うる星やつら』『めぞん一刻』、宮崎駿の『天空の城ラピュタ』等、思春期の少年像とそのヒロインとの関係性を描く際に使われる。そういう意味では本作は恋愛のリアリティよりも、宮崎、高橋のように母性に惹かれることをテーマとすることで、まだ大人になりきれていない僕という存在を表現したのではないか。
まだ10代でありながら陰と陽の対比でサウンドや歌詞を作り、ポップソングを構築していくoOo。関西にはEasycome、ベルマインツ、Nagakumoなど極上のポップスを歌うバンドたちがいるが、また一組、新しいバンドが加わった。そのように感じさせてくれるには申し分のない作品だ。
New Jeans
アーティスト:oOo(オー)
発売:2023年5月8日
フォーマット:デジタル
収録曲
1.girl
2.What feeling
3.フレンチガーリー
4.ニュージーンズ
oOo(オー)
2022年4月に結成。ちゃな(Vo / Gt)、リイマ(Vo / Gt)、odmi(Ba / Cho)、Sinon(Dr)の4人で大阪を拠点とし、精力的に活動している4ピースインディーロック、インディーポップバンド。心地良く、時には力強いサウンドと頭に残るグッドメロディ、 男女ツインボーカル で人々の心を魅了する。
Twitter:https://twitter.com/oOo_band
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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