田嶋太一(Vo / Gt)、安東瑞登(Vo / Gt)、ねぎ(Ba)、むげん(Dr)による京都を中心に活動しているバンド、水平線。楽曲により田島と安東がボーカルとリードギターを入れ替えるスタイルをとっている。2月5日に配信でリリースされた“stove”は田島がボーカルをとった、ポップな楽曲だ。
オルタナティブで歪んだギターサウンドが印象的なイントロから、〈ひび割れた指先なぞる 退屈な にびいろのまち〉〈錆びたstove 日々の化石〉と退廃的な自身の心情を、少しけだるく熱量を抑えて歌う。サビに入ってから、サウンドはエモーショナルになるが、歌声をかき消すことなくバランスが取れたサウンド、キャッチーなメロディがリスナーを引き付ける。
彼らのこれまでの楽曲にはOASIS(オアシス)からの影響が垣間見える。1st demo『ブルー・アワー』の“ロールオーヴァー”では〈サリーは待ってくれないから〉と“Don’t Look Back in Anger”を引き合いに出したり、“旅ははじまり”のイントロは、“Wonderwall”や“Cigarettes & Alcohol”のように楽曲がスタートする数秒前から録音していたり。また“時間飛行”でのリズムパターンやサビまでの展開には“Champagne Supernova”を思わせる。
今回の“stove”も聴き終えた後には不思議とOASISの楽曲を聴いた後のような高揚感が残る。だが、この高揚感がOASISのオマージュからきてるものかといえば、そうではない。歌詞、リズムパターン、コード進行にあからさまな引用はないし、退廃的な心情描写は自己肯定を歌うOASISと対極にあるものだ。ここではOASISの持つ要素、整理整頓されたアンサンブルやキャッチーなメロディ、フラットな楽曲構成を自分の物にしている。オルタナティブだが歌声がしっかりと聴こえるサウンドや、リスナーを引き付けるようなメロディはその賜物であるし、OASISらしさがないのに同様の高揚感が得られたのは水平線の音楽がOASISを血肉化させた証明である。オマージュから、血肉となり、さらなる音楽を作っていくであろう水平線。彼らが京都の音楽シーンのNew Horizonとなる日も近いのかもしれない。
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関西インディーズの水先案内人。音楽ライターとして関西のインディーズバンドを中心にレビューやインタビュー、コラムを書いたりしてます。
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