INTERVIEW

捻くれたポップネスと気の抜けたマッドネスが生み出した珠玉のポップソング。YMBが語る、僕らの音楽。

MUSIC 2019.01.18 Written By マーガレット 安井

ドイツの哲学者ショーペン・ハウエルの言葉に「天才 は平均的な知性よりは、むしろ狂気に近い」というのがある。天才と言われる人間に出会ったことがないとわからない言葉だが、天才を目の当たりにすると偽りないと確信する。例えば大阪を拠点に活動するYMB(Yoshinao Miyamoto Band)のフロントマン、yoshinao miyamotoがそうであるように。
 
YMBはyoshinao miyamoto(Gt/Vo)と、mayu ito(Ba/Vo)、そしてサポートの2人で構成されている4人組インディーズバンドである。アンテナでは、今年ニューアルバム『CITY』をリリースした彼らにインタビューを敢行。最新作の話やバンドのこれまで、yoshinao miyamotoとはいったい何者か、について話を聴いてきた。

 

このバンドの特質すべきは、素晴らしいポップ・ソングを作りながら、「~らしい」という何かに影響された跡をあまり感じさせないところである。実際、インタビューのなかでyoshinao miyamotoは自分の影響を受けた音楽はわからないと答え、その理由を彼が持つマッドネスな部分が影響しているという。また彼の持つひねくれたポップネスが彼の音楽を作る上での原動力だと語る。今年、アンテナが自信を持ってお送りする極上のポップスを奏でるバンド、YMBの第一声を、ぜひ受け取ってもらいたい。

1日1曲作らないと気持ち悪くなり、ほぼ日記的に曲を作っていました。(宮本)

──

音楽を始めたのはいつ頃ですか?

yoshinao miyamoto(以下、宮本)

幼稚園の時に姉の影響でピアノを初めました。でも、ピアノ自体が好きではなく、中学2年生の時に完全にやめてしまって。ただ音楽に対するこだわりはあって、TSUTAYAに通っては当時のヒット・チャートの20位以内の音楽は借りて聴く、という生活をしていました。あと姉が買ってきたCDや、MDに録音をしてるのを聴いていました。多かったのは小沢健二とかChocolatといった渋谷系やキリンジで、あと一番聴いたのはMY LITTLE LOVERの『evergreen』ですね。今でもたまに聴きます。

──

そこから自分で音楽を作ろうと思ったきっかけは?

宮本

音楽をやり始めたのは、大学2回生の頃です。あんまり友達がいなかったんですけど、唯一の友達がバンドをやっていて「ピアノ弾けるし、ギターも弾けるならやってみろ」とマルチトラック・レコーダー(MTR)を教えてくれたんです。その頃、ギターもコードくらいは弾けていたので、エレキギターとMTRと小さなアンプを買って、そこから宅録をやり始めました。当時、MY LITTLE LOVERの流れで小林武史のプロデュースしたバンドが好きで、Mr.Childrenのシングルを発売日に買って、耳コピして全パート録音して一人で楽しんでいましたね。全く大学にも行かなくって、そればっかりやっていました。

──

バンドをやろうとは思わなかったのですか?

宮本

当時は思っていなかったです。宅録の方が自分に向いていると思っていたし、そればっかりやっていたら「いつか何とかなる」と無意識には思っていたかもしれない。

──

では、そこから「バンドとして発信しよう」となったのは、どういうきっかけだったのですか?

宮本

自分の周りにいる2,3人にコピーした音源を聴いてもらったんです。それを聴いた高校の同級生が「そんなん出来るんやったら、オリジナル曲を作ったらええやん」と言われて、曲を作って聴かせてみたら「やっぱりええやん」って言ってくれて。そこから徐々に曲を聴かせる人が増えていって、評価されることが楽しくなってきたんです。しまいにはオリジナル・ソングがだんだんコピーより上回ってきて、1日1曲作らないと気持ち悪くなるくらいまでなったんです。もう、ほぼ日記的に曲を作っていましたね。そんな時にその「オリジナル曲作ったら」と言った高校の同級生の紹介でいとっちと出会ったんです。

mayu ito(以下、いとっち)

私はそれまでバンド経験はなかったんですけど、子供の頃、お姉ちゃんがヴァイオリンを習っていたので、私はチェロをやっていました。高校の頃は吹奏楽部でトランペットもやっていました。その吹奏楽部の先輩にあたるのが宮本さんの高校の同級生で、その人と最初は2人でバンドをやっていたんです。そしたら「引きこもって曲ばっかり作っているやつがいるんだけど、外に出してあげたい」と言われて、出会って3人でバンド始めました。

宮本

でも、やり始めたタイミングでその同級生が京都に転勤したんです。しばらくは2人で京都に通ってやっていたんですが、それもしんどくなってきたし、僕のオリジナル・ソングをしっかりやりたいと思って、2人でやろうということになったんです。

──

それがYMBの前身にあたる、sugarpotという弾き語りユニットですね。

宮本

そうです。でも、弾き語り以外にも、色んな曲を作りたいという気持ちが強くなったのと、バンドと対バンした時に明らかに熱量が違うのを見て「これはもうあかんな」となってsugarpotを解散したんです。そして、僕はもう一回バンドを組むわけではなく宅録に戻って2014年ごろにはyoshinao miyamoto名義でAno(t)raksでリリースしてて。

──

その頃のAno(t)raksと言えばシンリズムとか注目される時期でしたね。

宮本

Ano(t)raksを紹介してくれたのは、シンリズム君なんですよ。シンリズム君がまだバンドをやっていた頃に対バンしたことがあって、ライヴが終わってから「ベース弾かせてもらっていいですか」とメールが来たんです。それがきっかけで、シンリズム君はしばらくsugarpotでサポート・ベーシストをやってくれたんです。解散する時も「誘われていたライヴを全部キャンセルしよう」と僕が言ったらリズム君が「絶対やめへん方がいい」と言ってくれたりして、引き留めてくれました。

宮本さんは作るための引き出しを毎日増やそうと曲を聴いている感じで(いとっち)

──

宮本さんが影響受けた音楽はなんですか。

宮本

一番根底に流れているのはMY LITTLE LOVER『evergreen』だと 思うんです。でも、影響受けたか…。実はこういう話は自分でもよく分からないんです。今回のアルバムも楽曲も曲ごとにインスパイア受けているものは違っていて、無意識に影響されていることも多いですし。

いとっち

私から見ると宮本さんは曲を作りすぎているんですよ。作るための引き出しを毎日増やそうと曲を聴いている感じで、雑食で何でも聴いて「あ、これかっこいい」と思ったらそれに似た系統の曲も全部聴いていって、そこから抽出して作り出している感じに見えます。

宮本

だから最近「鑑賞として音楽を聴いている」という瞬間がないかもしれないですね。音楽をやっていなかった時期は純粋に音楽を楽しんでいたとは思いますけど、作り出してからは刺激がないと思う曲が増えてきて。最近は曲を聴き流して、どっかに引っかかりを探しながら聴いている感じですね。それが素直に曲に表れていると思います。

──

ちなみに現在、曲のストックってどれくらいあるのですか。

宮本

数えきれないくらいあります。ただ途中で飽きちゃうことが多くって。Aメロ、Bメロ、サビで終わっちゃう曲とか。それに作りかけていた曲を繋げるようなことも一回も無くて、0から1のものを作って、飽きたら終わり。という感じでやっています。もう、生活の一部ですね。

いとっち

宮本さんはいつも曲が作れないことにイライラしていたり、曲を作っていないと落ち着かない感じです。そもそもYMBは「yoshinao miyamotoが作った曲を再現するバンド」としてスタートしていて。今回のアルバムに収録した7曲は再現できた曲たちなのですが、YMBでは一生やらないであろう曲も一杯あるし、本当にほかのバンドに配りたいぐらいありますね。

──

いとっちは音楽家としての宮本さんをどう思っていますか。

いとっち

10年ぐらいの付き合いですが、変な人だと思います。友達も少ないし、大学のサークル出身でもないからバンド仲間もいない。それでも自分の音楽を認められたい、と思ってやっている。 ずっと宮本さんとバンドをやっているから、それくらい曲のストックがあるのが普通だと思っていたんですけど、ほかのバンドの人たちと宮本さんの話をすると、曲の多さにびっくりするんです。10年見てきて、楽曲を作るエネルギーが止まっている所を見たことがない。それだけ凄くエネルギーがある宮本さんに、私も巻き込まれている感じですね。

──

このような話を聴くとバンドマンというよりは、楽曲提供とかコンポーザーやプロデュースをする側、いわゆる職人的だと思いますね。

宮本

そうですね。あんまり自分自身をバンドマンだと思ったことはないです。だから別に僕の楽曲を僕が演奏しなくても良いし「誰かが演奏してくれたらいいんだけどな」とはずっと思っています。でも、やってくれる人がいないので、自分でやっているって感じですね。

──

自身の楽曲をバンドで再現する点でもこだわりがある方かなと思ったのですが、お話を聞くと「そこは違うのかな」と感じます。

宮本

結構、デモが出来た段階で欲求は満たせてはいます。自分の頭の中では形はなったので「これがバンドならどうなるのかな」という感じで、今はやっていますね。

──

いとっちはデモを渡されたら、自分のオリジナリティーを出そうとしますか?

いとっち

私は言われた通りに、やろうとしています。ただ、デモは最初しか聴かないので、練習するうちに自分の手癖とか入るとは思います。デモを聴いて「よし、これを再現しよう」と思って、練習やライヴとか重ねていって少しづつ変わっていく、みたいな感じですね。

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基本的に曲を作るモチベーションとなるのは「自分を救いたい」という気持ちだったりするので(宮本)

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