Clap Stomp Swingin’が2018年5月25日に出した2枚のミニアルバム『Swing Side』と『Sing Side』。この2枚はそれぞれ、「Swing」=スウィングと「Sing」=歌ものという、彼らのふたつの演奏様式をまとめたものになっている。スウィングをめぐる現状と、この作品の魅力についてレビューしてみよう。
「ニュー・スウィング」
アメリカン・ルーツ・ミュージックのリバイバルが各国で起きている。なかでもスウィング・ジャズの再評価は過去に例を見ないほど高まりつつある。現代のポップソングをスウィングでカバーする試みとしては、たとえばPostmodern Jukebox、Sugarpie And The Candymen。オリジナル楽曲の演奏を含めたホット・ジャズの実力派で言えば、The Hot Sardines、The Hot Club Of Cowtown。衣装を含めた本格派は、Janet Klein and Her Parlor Boys。路上での演奏風景から火が付いたニューオリンズ・スタイルはTuba Skinny。
単純に見えて奥が深いシャッフルのリズムを、ロマンチックなメロディが彩る――これがスウィングという音楽だ。黄金時代と呼ばれる1920年代以降、場所と時代を超えてまたたく間に広まったジャズの形式である。だが、現代のリバイバルは単にその再現にとどまっているわけではない。現代の音響技術が実現した立体的な音像、ロックを経由した高度なアレンジ、そして歌声の出し方。もちろん、今の感性で書かれた歌詞も、かつてとはまったく違う印象を作り出している。
話題のスウィングバンド、Clap Stomp Swingin'
さて、こうした「ニュー・スウィング」とでも呼ぶべき新しい状況の中で、日本を代表する新進気鋭のバンドこそがClap Stomp Swingin’だ。確かな技術に裏打ちされたスウィングを基調としつつ、ある種のお茶目さと脱力感が人気のバンド。ピアノ、ギター、ウッドベース、クラリネット&ボーカルの4人組だ。大阪を拠点としつつ、日本国内ツアーはもちろん、台湾、韓国、アメリカと海外ツアーも定期的に行っている。クラウドファンディングを行えば達成率はいつも200パーセントを超えるし、ラジオ番組、テレビ取材、有名イベント出演などいつも話題に事欠かない。
そんなアブラの乗った彼らのミニアルバムが、今回ご紹介したい『Swing Side』と『Sing Side』だ。前者は彼ら自身のこれまでのスウィング解釈が存分に発揮された一枚だし、後者はフロントマン山下拓郎(Vo./Cl.)の魅力的な歌に加え、ゲストボーカリストやゲストラッパーをフィーチャーした一枚。どちらも、彼らの入門編にも応用編にもちょうどいい名演ぞろいだ。なかでもおすすめなのは、やはり彼らの今回初めての試みである、ヒップ・ホップ・スウィングナンバー、”Keep Up With Me” (『Sing Side』M4、featuring SAKKON、MC Mystie)。マイナーの循環コードに乗ったラップヴァースはもちろん、R&B的なボーカルがドラムレスのスウィングにうまく調和している。もちろん、彼らの真骨頂であるインストゥルメンタル楽曲、なかでも“Juso Noir” (『Swing Side』M5)は、間違いなく時代を超越する曲だ。
Clap Stomp Swingin' with SOA - Midnight Dejavu (Ego Wrappin' cover)
彼らが爆発寸前であることは疑いようがない。そのふつふつと煮えたぎる楽曲は、現代のスウィングシーンの急先鋒である。『Swing Side』、『Sing Side』は今こそぜひ聴いておくべき2枚だ。
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神戸の片隅で育った根暗な文学青年が、大学を期に京都に出奔。
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