Special Favorite Music - TWILIGHTS
先日、7人編成だったSpecial Favorite Musicから4人が脱退するというニュースが飛び込んできた。えっもうあの音楽聞けないの!?そもそも活動自体どうなっちゃうの!?4人の脱退にあたりいろんな憶測が飛び交っているが、3人で頑張っていくことを決意したSpecial Favorite Music。そんな彼らに敬意を表して、今あえて7人編成だった彼らの『TWILIGHTS』についてディスクレビューをしたためたいと思う。懐古的な内容にはなってしまうのかもしれないが、今までもこれからも大好きなバンドであることには変わりない。
Special Favorite Music(以下:SFM)は、いつも眩しくて目を背けてしまっていた。
ボーカル、弦、管、打楽器から構成される層の深いサウンド、軽快なリズムが生み出す小粋でハイカラなメロディ、希望や喜びに満ちた歌詞。”Ceremony”をはじめとするMVからも、彼らの音楽を奏でる喜びが弾けんばかりに伝わる。
月曜日の朝、鬱になりそうな出勤中でも、両手を取ってぐんと引き上げられたように気分が明るくなる。「ストリートのためのポップミュージック」と自称する彼らの音楽は、街の中ですり減りながらも生きる自分にとっての特効薬だった。
だから、SFMが2018年10月にリリースした『TWILIGHTS』には驚いた。これまでの作品では7人の音がパレードのごとく溢れ出していたが、『TWILIGHTS』では音が引き算され、洗練された美しい調べとなっている。さらにはスローなテンポや落ち着いたトーンのメロディには愁いが、Vo lovinyuuの声には切なさが入り混じり、感情の繊細な揺らぎが丁寧に表現されている。
歌詞にも不安な気持ちを彷彿させる言葉が散りばめられている。 “Goodies’’を例に挙げてみよう。
後悔ばかりの今日も 日の沈む向こうに目を凝らす
君の笑う顔だけ 浮かべたらやさしくなれるはず
マイナスな現状を少しでも前向きにとらえようとする、懸命さが垣間見える。これまでの作品で気持ちの翳りが歌われても、同じ曲のどこかで好転させる強いパワーが作用していた。しかし「日の沈む向こうに目を凝らす」とあるように、マイナスな現状から好転することなく曲は終わる。そのことが「今日もなんとか生きていこう」という静かな決意を表しているのかもしれない。
『TWILIGHTS』が当時のSFMの新境地だったのかはわからない。しかし本作を通じて自分とSFMとの距離がぐっと近くなったのは確かだ。それまでSFMを聴いた後にイヤフォンを外すと目の前にはモノトーンな日常が横たわり、「SFMの音楽のように何もかもが満ち足りた世界なんてないよね」とどこか羨みつつも僻んでいた。
しかしへこんでいるときに肩に優しく手をおいて、そんなこともあるよねと寄り添ってくれる友達のような本作。これまでの作品も通して病める時も健やかなる時も、メンバーが3人に減って形を変えてしまっても、ずっと聴いていたい・聴き返したいバンドとなった。
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91年生、岡山出身、京都在住。平日は大阪で会社員、土日はカメラ片手に京都を徘徊、たまに着物で出没します。ビール、歴史、工芸を愛してやみません。
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