台風クラブは「ロックンロール」か?
日常に「台風」は来ない
曲作りに関してですが、何か「ロック」のルール的なものが変わったことはありましたか。たとえば今出川ラナウェイズ(※台風クラブの前身バンド)時代だと”飛・び・た・い“ みたいな曲は無かったでしょうし。
当時は16分音符使いたくないとか、マイナーコード使わんとことか、ちょっとオカシイこだわりがあって。”飛・び・た・い“ も今となっては平気でやってますけど、できた当時はやってええんかという葛藤もあった。この曲と”ダンスフロアのならず者“ はひとりで宅録やってた時にできた曲やから、自分らの文法になくて。当時のベースのまっちゃんも、16分に対応せずに全部むりくり8分で弾いてるんですよね(笑)。
逆に、変えていないことはありますか。
曲は長くしたくなくて、「3分半の美学」的な。中学生がギリギリ集中して聞ける長さというか(笑)。あと、リフレイン(繰り返し)もあんまりやりたくなかった。繰り返して言えば言うほど歌詞の意味が強くなってしまうけど、そんないいこと言ってないしなー、という。ロックは自分の本当の姿よりも「強い歌詞」、「強烈なスローガン」を歌うことで背中を押してもらう、みたいなことがあるけどそれも居心地悪くて。自分のほんまの姿を俯瞰してしまう、その意味ではフォークソング的な歌詞なのかもしれない。
以前、ネガポジでお会いしたときに「歌詞は時間がかかる」と言ってらしたのを思い出しますが、歌詞は曲よりも前に出来上がるんですか。ボリューム的には曲が後のような気がするんですが。
いや、曲よりも後に書くので難しいんです。リズムやメロディで制限されてしまうから、1番は調子よくできてても、2番、3番とうまく出来上がるかわからなくて、「どうやってねじ伏せるか」と。あと、「曲で聞くのはAメロや」という謎思想があって、たとえば浅川マキさんとか、ブルースってサビでなくても聞かせるし、そういうことをやりたいんです。
石塚さんの書く歌詞は、時には16小節にまたがる長文になってたりすると思うんですが、どういう発想で書いているんですか。
そう、歌は最初から歌詞カードを見ながら聞くもんじゃないから、どんどん変わっていって「流れ去っていくもの」という意識があって。時間の流れと言葉の流れは、マストじゃないけどうまくつながればいいなと。”台風銀座“ も1番、2番と来ての最後のサビなんです。あの箇所、2通りに意味が取れるようになってるんです。
「台風」が来るはずだったのに「待ちぼうけ」って箇所ですか。(※歌の中で主人公は、「台風」が来て街を壊してしまうことを不安に思う反面、どこかで期待している)
(「台風」が)来たのか、来てないのかどっちにも取れるようにと。はっぴぃえんどの”颱風“ 然り、街がむちゃくちゃになるというのが一つの落としどころだけど、歌詞を書くとそうはならなかったなぁと。日常にそういう「大きなこと」が起きたりしないということが自分には分かってしまっていて。それはほかの曲にも通底している。そういうバンドなんでしょうね。もっと「(日常の)些細なことを愛でていこうぜ」という。
曲調も変わって、歌詞も大言壮語をしないとなると、石塚さんにとって「ロック」って何なんでしょうか。
聞く人が「ロック」やと思えばそれがロックだと思います。こないだスカート見たとき、「ロックやなぁ」と思った。普通のポップソングでも、分解してみれば「ロック」的なものはありうるというか。A、F#m、D、E、となると「うわ」ってなる、その感覚は結局、ジャンルとしての「ロック」を超えてあるんじゃないかなと思います。
『初期の台風クラブ』
1. 台風銀座
2. ついのすみか
3. ずる休み
4. ダンスフロアのならず者
5. 相棒
6. 春は昔
7. 42号線
8. 処暑
9. 飛・び・た・い
10. まつりのあと
発売日:2017年8月23日
発売元:Mastard Records
品番:LNCM-1211
仕様:コンパクト・ディスク
価格:1900円+税
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WRITER
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神戸の片隅で育った根暗な文学青年が、大学を期に京都に出奔。
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