【振替公演】下鴨車窓『散乱マリン』(三重公演)
※こちらのイベントは2020年4月に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、11月に延期となりました。
劇作家・演出家の田辺剛が主宰する演劇創作ユニット下鴨車窓が、2020年11月28日と29日に三重県文化会館にて、ツアー公演『散乱マリン』を上演する。
下鴨車窓は公演ごとに出演者を集めるスタイルを取っており、作品をレパートリー化して定期的に再演やツアーを行うことが特徴。2018年11月に京都で上演した『微熱ガーデン』は、特殊な環境におかれた人物たちの日々が、繊細で日常的な言葉を用いて描かれていた。
今作は2014年に東京と神奈川で上演され、2015年の第22回OMS戯曲賞最終候補に選ばれた『 scattered(deeply)』を、タイトルも出演者も一新して上演されるものだ。バラバラにされた自転車を「生活の道具」と見る者と「芸術作品」として見る者を描く。
それは祖母の形見の自転車だった
それはある美術作家の遺作だった
佐藤マキは「そんなことがあるの」とつぶやいた。盗られてしまった自転車は大好きだった祖母から譲り受けたものでそれが撤去されたという。ペラペラのハガキに書いてある保管所の地図は彼女が住むところからは遙か遠い。引き取ったところでその距離を乗って帰ってくることを考えるとウンザリするけれど、盗んだ誰かへの腹立たしさも手伝ってきっと取り戻してやると心に誓った。昼間の仕事をなんとかやりくりして取りに行けたのは保管期限もギリギリのときだった。
伊佐原リョウタは焦っていた。ビエンナーレ開幕も間近に迫っての担当キュレーターの交代はアーティストを不安にさせる。後任の担当者は作品のタイトルが読めなかった。彼の作品は野外展示のインスタレーションだが天候の悪い日が続いて作業もはかどっていない。そこにきて台風が来るニュースだ。すぐに若いスタッフが作品を守るために現場に向かってくれるという。「ありがとうありがとう」。時間をかけて準備してきた。必ずやり遂げようと彼は心に誓った。
空にはカラスが舞い、野犬の群れが駆け抜ける。
果てしなく広がるその野原はいまでは海の底に沈んでいる。
公式HPより
既に発表されている戯曲では、生活の道具としての自転車と、まるでマルセル・デュシャンのレディ・メイド作品のように美術作品と捉えられた自転車を通して、二つの世界が交錯する。果たして舞台上ではそれがどのように描かれるかが見どころだ。
どう描かれようとも『散乱マリン』が提示するのは、もちろん自転車への新しい視点ではない。それを見る二つの視点を通した、人間の有り様への思考だろう。二つの世界の営みが重なるとき、両者は相手に理解を示すのか、それとも平行線をたどるのか。はたまた全く別の様相となるのだろうか。そしてそれを観て、観客は目の前で起こっていることを何に重ねるだろうか。
不条理性の高い物語を、隠喩を用いてコミカルに描いた今作。初演を観たという方も、見逃したという方も、ぜひこの機会に足を運んでほしい。
日時 | 2020年 |
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会場 | |
出演 | 西村貴治 / 福井菜月 / 澤村喜一郎 / 西マサト / 北川啓太 / 坂井初音 / 岡田菜見 / F.ジャパン |
スタッフ | 脚本・演出:田辺剛 舞台監督:山中秀一 舞台美術:川上明子 照明:葛西健一 音響:森永恭代 演出助手:松藤未夏 |
料金 | 一般 2,500円 ペアチケット 4,300円(入場券を二枚一組で販売、別途日時指定が必要) ユース(25歳以下)1,800円(年齢を確認できる証明書の提示が必要) ※当日券は残席数に応じて販売。入場は開演直前。 |
ご予約 | https://www.quartet-online.net/ticket/scattered2020aut_mie?m=0qefhjh |
お問い合わせ |
(ページ下部より) |
主催 | 三重県文化会館 |
後援 | レディオキューブFM三重 |
WRITER
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92年生。「役者でない」という名で役者してます。ダンスやパフォーマンスも。言葉でも身体でも表現できる人間でありたいです。
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