MEET ONE’S LOOK 誰かの視点に出会う – 旅と文化をテーマにした本 –
ANTENNAが運営するmallのレーベルとして2020年12月に始動したWANDERLUST BOOK STORE。『MEET ONE’S LOOK 誰かの視点に出会う』と題し、WANDERLUST BOOK STOREが取り扱うインディペンデントパブリッシング・リトルプレスの中から作り手の示唆に富んだ視点に出会える本を紹介する企画をスタート。初回は、「旅と文化をテーマにした本」3作品をご紹介します。
「旅」といえば、コロナ禍で自粛しなければならなくなったものの1つ。今回紹介する本で語られる「旅」とは、いわゆる旅行や観光とは少々異なるようです。そして各作品では、コロナ禍における作者の葛藤や迷いも吐露されています。本を作るプロセスを通じ、彼らの中で「旅」に対する価値観がどのように変化したのか、今だからこそ伝えたい「旅」とは何か。彼らのまなざしとともに、しばし「旅」に思いを巡らせてみませんか?
汽水空港台湾滞在記 vol.1 台湾の程よい田舎に本屋をつくる試みの記録
鳥取県にある本屋<汽水空港>の店主・モリテツヤさんが、2020年2月に台湾を巡った10日間の旅記録。リメイクブランド<途中でやめる>が発行するメルマガで連載していた記事を、手のひらサイズの一冊にまとめたものです。台湾滞在中、日記のように綴られたためか、その日出会った人・もの・文化に心が動いた彼の鼓動がダイレクトに伝わってきます。
旅の目的は、4年後に汽水空港の支店を台湾につくるために現地の本屋を巡ること。同時に台湾の人々に接しながら、彼らが持つ政治意識や他人への優しさが育む土壌を探り、どのように鳥取の人々や暮らしにつなげられるか(輸入できるか)模索していく、そんなモリさんの探求心と遊び心に満ちたまなざしに触れながら、私たちの好奇心も自然と掻き立てられていきます。そして台湾と鳥取をつなぎながら、汽水空港を起点にどんな文化圏を作っていくのか。最後のページを閉じる頃には、そんな期待に胸が膨らむはずです。
※ANTENNAの特集『文化の床』で、モリさんへのインタビュー記事を掲載しています。詳しくはこちら。
LOCKET 04 - COLA ISSUE
主観的な真実、姿なき価値観のようなものを求めて旅をします。ぼくらの身体を賭して、ぼくらにとっての真実を、ぼくらの言葉で描きます。(p.122)
主観的な真実を求めること。それは五感をフルに稼働しながら世界を旅して、自ら得た知見を信じることであり、自分の意志を持って生きることではないでしょうか。ちなみに、表紙のコーラの絵は内田さんが手作業で刻んだもの。赤いラインの手触りからも、内田さんの作り手としての矜持が感じられます。
※PORTLAの特集『Choose Convenience Yourself』で、内田さんへのインタビュー記事を掲載しています。詳しくはこちら。
LOCUST vol.4 長崎への困難な旅路
「批評の言葉で作る、新しい旅行の本」として、2018年11月より刊行スタート。vol.4では2020年7月に編集部メンバーが長崎を訪れた際の実体験と、地形や風土、歴史、宗教、文学作品など様々なテーマを絡めながら長崎という土地を批評しています。各記事に合わせて、写真やイラストを組み合わせたデザインも秀逸。
本作で特徴的なのは、コロナ禍を考慮して「足を運ばない」という選択をした上で、記事の執筆やメンバー同士の対談に参加した人がいたこと。
接触を拒まれた時代にいかにして私たちは「外」を作り出せるのか。困難の時代の試みが長崎を出航する(p.7)
前書きに刻まれたこの言葉からも、現地に足を運ぶだけではなく、「外」に思いを馳せる新しい「旅」のあり方を模索したことが伺えます。メンバーのまなざしを借りて新しい発見に出会い、批評を基軸に独自の解釈を見つけ出すこと。それもまた、既知という枠の「外」に飛び出す「旅」であることを示しているのかもしれません。
編集後記 - 「旅」が生み出す問い -
ここで紹介した3冊において、作者は旅先の文化や人との出会いに心を奮わせつつも、既存の社会や暮らしを振り返り、新たな問いを抱き続けます。それぞれの問いの中で、彼らがどんな点に目を向けて、どのように解釈していこうとするのか。本を読みながらその思考の道筋をなぞることで、あなたが現在向き合っている(もしくはこれから向き合う)アイデアの新しい切り口を見つけたり、大きく発展させるヒントに出会えるのかもしれません。
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オープン日 | 毎月末の土日にはANTENNAの事務所<CON-TENNA>にて、オープンスタジオも運営しています。そこでは、実際に商品を手に取ったり、<DIG THE LINE 株式会社>がセレクトしたクラフトビールを購入できます。日時などについては、ANTENNAのTwitterやFacebookをご確認ください。 |
住所 | 京都府京都市中京区式阿弥町130 SHIKIAMI CONCON No.2 |
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WRITER
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91年生、岡山出身、京都在住。平日は大阪で会社員、土日はカメラ片手に京都を徘徊、たまに着物で出没します。ビール、歴史、工芸を愛してやみません。
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