COLUMN

書評企画『365日の書架』〜8月のテーマ 毎日の風景が少し変わる〜

BOOKS 2020.08.04 Written By 丹 七海

8月のテーマ『毎日の風景が少し変わる』

『365日の書架』は、関西の書店がおすすめする書籍を紹介する連載企画。参加店舗はシカク、とほん、只本屋、ホホホ座の4店舗です。ちょっとニッチな世界を紹介する本や、自分自身の人生を考えさせられる本まで、唯一無二のセンスを持つ店主おすすめの書籍を、テーマに添って紹介していきます。8月のテーマは「毎日の風景が少し変わる」。ビルに囲まれた通学路や、家の窓から見える景色も、繰り返すだけの毎日ではつまらないですよね。いつもの風景を見る角度を少し変えるだけで見えてくる、新しい何かに出会ってはどうでしょうか。

はじめに

皆さんは、自分の人生を変えた本に出会ったことはありますか?生き方の羅針盤になったり、毎日をちょっと素敵にしてくれたり、新しい価値観を教えてくれる力が書籍にはあります。そんな出会いを与えてくれる場所の一つが、個人の書店です。店主が独自の目利きで選書した書籍は、そのお店でしか出会えないものばかり。他では触れられない、様々な出会いに触れることができるでしょう。『365日の書架』は、関西の書店がおすすめする書籍を紹介する連載企画。参加店舗はシカク、とほん、只本屋、ホホホ座の4店舗です。ちょっとニッチな世界を紹介する本や、自分自身の人生を考えさせられる本まで、唯一無二のセンスを持つ店主おすすめの書籍を、テーマに添って紹介していきます。

シカクが選ぶ今月の1冊

『散歩なうシリーズ』

著書:うさぼん他
出版:うさぼん
発行:隔月

 

毎日通る道やいつも行く場所に視点がひとつ加わるだけで、風景が変わって見えるような経験は誰しもあると思う。『散歩なう』は隔月で発行されるミニコミ誌だが、毎号「電線風景」「境内」「土の道」といった、ありふれた風景にピンポイントで焦点をあてる特集を組んでいる。系統立てているでも、ことさらに深掘りするでも、近隣のグルメ情報があるわけでもない。タイトルの通りぶらりと散歩をするだけの紙面がなんとも気ままで心地よいシリーズだ。

 

購入方法:こちらの通販サイトでお買い上げいただけます。

シカクについて

ZINE・同人誌、CD、雑貨など、インディーズ出版物のセレクトショップ。普通のお店に売っていない、珍しくておもしろいアイテムを厳選して販売しています。店舗は大阪で、通販もあり。

住所

〒554-0013 大阪府大阪市此花区梅香1-6-13

営業時間

13時〜19時(火曜・水曜定休)

Webサイト

http://uguilab.com/shikaku/index.html

オンラインストア

https://shikaku-online.shop-pro.jp/

とほんが選ぶ今月の1冊

『永遠のソール・ライター』

写真:ソール・ライター

出版:小学館

発行:2020年

 

僕の心を揺さぶるカメラマンのひとりソール・ライター。ニューヨークの街角を映した写真の数々は、何か特別なものがそこにあるわけではない。ありふれた風景のはずなのに、他の誰かが映した風景とまったく違う印象を受ける。曇りガラス越しのシルエット、水たまりに映る景色、窓で切り取られた構図、傘に隠れた人。完全には見えないことで、写真の中に意識が引き込まれていく。「私の好きな写真は何も写っていないように見えて片隅で謎が起きている写真だ」。ソール・ライターの写真と言葉に触れると、見えていない風景の大切さについていつも考えさせられる。

 

購入方法:こちらの通販サイトからお買い上げいただけます。

とほんについて

奈良県大和郡山市にある8坪ほどの本屋です。新刊本を中心に雑貨も少し置いています。大切に持っていたくなる本、長く読み続けたくなる本、読んで良かったと思える本、そんな本を販売しております。店名の「とほん」は「人とほん」「町とほん」など、いろいろなものごとに「と、ほん」と繋がっていけたらと思いから。

住所

〒639-1134 奈良県大和郡山市柳4-28

営業時間

11時〜17時(木曜定休)

Webサイト

https://www.to-hon.com/

オンラインストア

https://tohon.shop-pro.jp/

只本屋が選ぶ今月の1冊

『あのつく人』

著者:岸本 麻衣

出版:岸本 麻衣

発行:毎月

 

すごく当たり前なのだが、家の周りとかでぶらっと歩いてて、いろんな人とすれ違う。コンビニに行けば行ったで店員さんとかそういう人々に出会う。別に会話するわけでもなく、距離が縮まるわけでもないのだが、そういう人にも人生があるんだよなーとか思う時がある。家族がいたり、学校があったり、夢を持っていたり、悩みがあったり、当たり前の生活があるんだよなって思ったりする。今回紹介する『あのつく人』というフリーペーパーは、名前の頭文字が「あ」から「ん」で始まる、様々な業界で働く人物を紹介するインタビュー紙なのだが、インタビューされている方々は、特に有名とかそういう話ではなくて、他人の人生を覗き込むようなそんな感覚があって楽しめる一冊で、でもまた出てるとついつい読んでしまうフリーペーパーである。

 

購入方法:ONLY FREE PAPER、只本屋、はっちなど全国のフリーペーパー専門店で手に入れることができます。

只本屋について

只本屋は、毎月末の土日だけ清水寺のお膝元・東山五条にあらわれるフリーペーパー専門店です。全国各地の魅力溢れるフリーペーパーを取り揃えています。また、本屋としての機能だけでなく、クリエイティブに関心を持つ人々と交流できるなど、カルチャースペースとしても注目されています。

住所

〒605-0871 京都府京都市東山区慈法院庵町594−1

営業時間

毎月末の土・日
(時間帯は月によって変わります。 詳しくは只本屋公式ツイッターをご確認ください。)

Webサイト

https://tadahon-ya.com/about/

オンラインストア

https://tadahonya.thebase.in/

ホホホ座浄土寺店が選ぶ今月の1冊

『新しい日の真ん中に』

著者:児玉由紀子(文)、安藤智(絵)

出版:児玉由紀子

発売:2020年

 

日常からうまれたことばの連結がときに詩になっていく。 やさしい気持ちが欲しい人、気持ちの入れ替えをしたい人に最適の詩集です。安藤智さんのいい感じに力の入っていない絵と、児玉由紀子さんのかんたんな言葉だけれどその字面、並び、選択にセンスが感じられます。あとがきでご本人がその言葉がどこからくるのか、自身でも考えながら書いています。彼女が出会いや繋がりといった普段の社会生活を大切に生きていることが垣間見える内容となっています。

 

購入方法:こちらの通販サイトからお買い上げいただけます。

ホホホ座浄土寺店について

ガケ書房とコトバヨネットが合体し、京都市左京区にて2005年にオープン。母体は編集グループとして発足し、書籍の企画・編集・出版なども行う。現在、ホホホ座を名乗る異業種の店舗が全国に10店ある。浄土寺店は、本が多いお土産屋として、新刊を中心にした品揃えを展開中。

住所

〒606-8412 京都府京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階

営業時間

11時〜19時(年中無休)

Webサイト

http://hohohoza.com/

オンラインストア

https://hohohozazaza.stores.jp/

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