COLUMN

俺の人生、三種の神器 -丹七海 ②音楽との出会い編-

OTHER 2020.06.01 Written By 丹 七海

▼俺の人生、三種の神器とは?

人生の転換期には、必ず何かしらきっかけとなる「人・もの・こと」があるはずです。そのきっかけって、その当時は気づけないけれども、振り返ると「あれが転機だった!」といったことはありませんか?そんな人生の転機についてアンテナ編集部で考えてみることにしました。それがこの「俺の人生、三種の神器」。

折角なのでもっとアンテナ編集部員ひとりひとりのことを知ってもらいたい!そんな気持ちも込めたコラムです。これから編集部員が毎週月曜日に当番制でコラムを更新していきます。どうぞお楽しみに!

人間がカルチャーと出会うには、何らかのきっかけが必要です。図書館で偶然手にした本や、友人との他愛もない会話など、出会いの扉は案外様々な所に転がっているものです。私が音楽と出会ったのは、偶然かけていたラジオでした。流行りのミュージシャンすら知らなかった当時、たまたま聴こえてきたとある楽曲に、心を揺さぶられるほどの衝撃を受けました。あの時出会った花の名前を、私は一生忘れることがないでしょう。

受け継がれる遺伝子の開花

物心がつく前から、私の周りは音楽であふれていました。母は私がお腹の中にいる時にサザンオールスターズのライブに行っていたと誇らしげに語り、ビートルズやRCサクセション、イエロー・マジック・オーケストラなど、父が買い集めたCDたちが実家の棚にぎっしりと詰まっていました。ドライブ中のBGMはFM802かFM COCOLOの二択。そんな両親の元に産まれながらも、当時の私にとっての音楽とは、テレビの笑い声や町中の騒めきと同じ生活にある音でしかありませんでした。そんな私が、自分の意思で音楽を聴くようになったのは中学校に上がってから。ラジオから流れてきた、とある音楽がきっかけでした。

ラジオから聴こえてきた花の名前

ジャニーズアイドルに黄色い悲鳴をあげていた同級生が多くいた中、いわゆる「二次元」にのめりこんでいた私が触れる音楽といえば、アニメの主題歌だけ。1分30秒のそれすらスキップし、多くの有名アーティストが名を連ねていた『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の主題歌さえまともに聞くこともなく、今にして思えばもったいないことをしていたものです。そんな私が、音楽と衝撃の出会いを果たしたのは中学1年生。家族とのドライブ中、いつものFM802から流れてきた Superfly の『Wildflower』でした。

越智志帆さんの全身を貫くような凛々しさに、涙が出るほどの衝撃を受けたことを今でも鮮明に覚えています。あの瞬間が、私にとっての音楽への初恋でした。サビである“咲き誇れ ワイルドフラワー 荒野のど真ん中で”のフレーズを聞いた瞬間、志帆さんの力強い歌声に惹かれた私は、自分と音楽だけの世界に放り込まれた感覚に陥ったのです。車窓から見える景色は何の変哲もない高速道路でしたが、『Wildflower』には音楽に無知な子どもを惹きつける魅力があったのだと思います。

 

ラジオだけでは聴き足らず、その年の誕生日プレゼントにWALKMANを買ってもらい、初めてお小遣いで『Wildflower』を購入しました。これまでCDを買ったことがなかったので、手元に音源がある幸せを知ったのはこの時です。WALKMANを手に入れてからは、自転車でTSUTAYAに通いつめる日々。楽曲は知っていてもミュージシャンの名前をほとんど知らなかった当時、POP広告で気になったアーティストや、レンタルランキング上位の作品を手当たり次第に借りていきました。

これまでもこれからも、”リッスン”トゥザミュージック

もっとたくさんの音楽に出会いたい、その為にはキャッチするセンサーを敏感にしなければならない。そう考えた私は、音楽に向き合う姿勢を「Hear」から「Listen」に切り替えることにしました。それまでは右から左に聞き流していたことが往々にしてありましたが、音楽に意識を向けて聴くことを心がけたのです。「このアーティストはどんな声色をしているのか」「歌詞を通して何を伝えたいのか」「彼にしか描けない世界は何だろう」。耳に入ってくる音を自分なりに分解・解釈する度に新しい出会いがあり、毎日が楽しくてたまりませんでした。更に多くの音楽と出会うきっかけを与えてくれたのが、FM802の番組『ROCK KIDS 802』です。サカナクションやポルノグラフィティ、back numberなど、中高生に親しみやすい邦楽を中心とした選曲で、よく夜の勉強のお供に聴いていました。番組を通して知ったアーティストは数知れず。現在の「メジャー邦楽好き」の根本は、この番組で決定づけられたと言っても過言ではありません。

 

朝の支度や、通勤時間。帰宅後、自室でほっと一息つく時にも。できるだけラジオを聴くようにしています。集中しすぎて作業そっちのけになることも多々あるのですが、それもまた致し方なし。割り切ってラジオにかじりつきます。全ては、11年前の衝撃に再び出会う為に。

WRITER

RECENT POST

REVIEW
POINT HOPE『Houi』 – 美しさと激しさが絡まり生まれたサウンドは、私たちの…
COLUMN
書評企画『365日の書架』〜11月のテーマ ノスタルジアを感じる〜
COLUMN
書評企画『365日の書架』〜10月のテーマ 家族の形を描いた〜
COLUMN
書評企画『365日の書架』〜9月のテーマ 人生の羅針盤になる〜
COLUMN
俺の人生、三種の神器 -丹七海 ③放送部編-
COLUMN
書評企画『365日の書架』〜8月のテーマ 毎日の風景が少し変わる〜
COLUMN
書評企画『365日の書架』〜7月のテーマ 大切な人と読みたい〜
COLUMN
書評企画『365日の書架 』〜6月のテーマ 旅の支度をしたくなる〜
COLUMN
俺の人生、三種の神器 -丹七海 ①西尾維新編-
SPOT
狐菴 KissaCo
REVIEW
浪漫革命 – NEW ISLAND ROMANCE

LATEST POSTS

REPORT
地域のライブハウス、フェスはどうやって生き残る?アジア各国での取り組みーTRENDY TAIPEIパネルディスカッション

2024年9月9日(日)、台北ミュージックセンターで開催された東・東南アジアのイノベーション×音楽の…

REPORT
台北都市型フェス“Jam Jam Asia”はアジア音楽の“今”を見るショーケース―TRENDY TAIPEI 2024前編

2024年9月8日(土)、9日(日)に都市型音楽イベント『JAM JAM ASIA』が台北ミュージッ…

REVIEW
今度のコンセプトは教祖!?音楽だけに収まりきらないロックンロール・クリエイティビティーゆうやけしはす『ロックンロール教団』

ロックンロールに依存し、ロックンロールに魂を売り、ロックンロールに開眼する。彼の活動を追っていると、…

COLUMN
【2024年9月】今、京都のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「現在の京都のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シー…

COLUMN
【2024年9月】今、大阪のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「大阪のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」「今」の京都の音楽シーンを追…