【ベランダ】好きで好きでたまらない!スーパーノアは俺に語らせて!3rd mini album『素晴らしい時間』リリース・スペシャルインタビュー
星の数ほどバンドがいる今の世の中で、”至宝”と呼ばれるに見合ったバンドがどれほどいるだろうか?2004年より活動を続けてきたスーパーノアは、間違いなく”京都の至宝”の名に恥じない輝きを持ったバンドだ。ここまでマイペースに活動を続けてきた彼らが、昨年度のフルアルバム『Time』に引き続き、3rd mini album『素晴らしい時間』のリリースを発表。
名だたるミュージシャンからの評価も高い彼ら、ファン以上に心を掴むのが難しい、耳の肥えたミュージシャンたちはスーパーノアのどこに魅力を感じ、愛しているのか?新譜と一緒にそんな彼らの魅力を掘り下げます!今回のインタビューは、今や京都を代表するバンドとなりつつある、ベランダの3人!
インタビュアー:堤大樹
スーパーノアと出会った日は、人生でとても大切な一日でした
ベランダとスーパーノアの最初の出会いから教えてもらえるかな?
颯心と僕は、スーパーノアとの出会いはほぼ同時じゃない?
スーパーノアがSuiseiNoboAz(以下:ボアズ)と対バンしてた日やろ?
5年前の夏にボアズとnhhmbaseがスプリットツアーしてて、その時僕はボアズが大好きだったので、大阪のFANDANGOと京都METROと両日見に行ったんです。京都編は颯心も誘って一緒に行ったんですが、その日の対バンで最初に演奏したのがスーパーノアで、それはもう”えげつない”ライブをしていました。ちょうどベランダの前身バンドを「これからどうしようかな」って思ってた時期だったんですが、その時の刺激的なライブを見て感化され、僕らの絆は深まりましたね(笑) 。この日のお客さんの中には、加速するラブズとかGueとか京都のバンドマンがいっぱいいたんですけど、彼らとも「あの日のスーパーノアすごかったよね」って分かち合える感じがあって。そういう意味でもこの日は人生でとても大切な一日でしたね。
その頃の僕ってほとんど邦楽しか聴かないし、洋楽のルーツについてもまだ分かっていないような状態だったので、当時の僕にはスーパーノアの良さを上手く言語化できなかったんですけど……ただそれまで自分自身が聴いてきた音楽に近くもあり、何だかよく分からないけどすごく良いなって感じるところもあって、それが半分半分みたいな感じでした。
スーパーノアのどういうところにそれを感じたんだろう?
一番の理由としては、井戸さんの中性的で毒味のない声質があったからなんです。井戸さんの声のおかげで、それまで洋楽やオルタナティブな音楽を聴いてこなかった自分にも親しみやすかったんじゃないかと思います。
“声”って スーパーノアの大きな魅力ですよね。歌が真ん中にあるバンドって声の要素がすごく大切だけど、それを言ってしまうと元も子もないところがある。例えばすごく下手くそなバンドに「お前もっとドラム練習しろよ」とは言えるけど、「お前らのバンドの悪いところはボーカルの声や」とはなかなか言えないじゃないですか。声って天性のものだと思うし、それを持ってるのはすごい強みだなぁと思います。
それは確かにその通りだね。そんなベランダとスーパーノアが初めて対バンしたのはいつだったんだろう?
その次の年かな?GROWLYでcolor chordと一緒に。赤井さんに打ち上げでお酒おごってもらったりしましたね!それから仲良くなりました。
鈴子は後からベランダに加入して、スーパーノアと出会ったのも少し後だよね。
スーパーノアのことは颯心くんに教えてもらって、音源を聴いて良いなって思ってました。あと、実はスーパーノアより先に、欠伸-ACBIS-(以後、欠伸)のライブを見たんですけど、それはもうめちゃくちゃ麻薬的な演奏をしていて……その体験がとても強く印象に残ったんです。
その後スーパーノアを見た時も同じような感覚がして、やっぱりすごい人たちなんだなって思いました。自分の中に残ってる圧倒的な音楽体験って無数にあるわけじゃないので、その数少ない体験のうちの一つをさせてくれた人として印象に残っています。
欠伸はフロントマンがゆーきゃんになっているけど、バックのメンバーはほぼスーパーノアだったよね。
そうそう。京都のかっこいいバンド見に行ったらスーパーノアのメンバーが誰かしらいたりするんですよね、サポートでライブしてたりして。そうやって身近でかっこいい演奏を見せてくれて、影響を与えてきたミュージシャンたちです。
その後、私はマイミーンズっていう別のバンドでスーパーノアと対バンしたんです。で、電車がたまたま井戸さんと赤井さんと同じだったので、一緒に帰りました。帰りの電車で井戸さんが私に『黄色い本』っていう漫画を薦めてくれたんです。高野文子さんっていう人の作品で、『チボー家の人々』っていう本を読む女の人の生活をただ覗いているような、ちょっと抽象的な話なんですけど……その漫画を井戸さんが私に「この子ならわかってくれるんじゃないか」って思って薦めてくれたのが嬉しくて。
何か鈴子にシンパシーを感じるものがあったのかな。
これはまた別の人が言ってることなんですけど「読書っていう体験は、読後に感じることよりも、読書をする中で現在進行形で体感している感覚こそが読書だ」って話を聞いたことがあって。音楽もそれと似ている気がして、例えばライブでもお地蔵さんみたいな顔してすごく静かに見てる人っているじゃないですか。でも、一見何も起こってないように見えても、その瞬間その人の頭の中では何かすごいことが起こっているのかも知れない。井戸さんはそういう人間の頭の中の見えないものを音楽にしようとしている人なんじゃないかって感じがして、すごく好きだなあって思います。
井戸さんのどういうところにそれを感じるの?
音楽とか歌詞とかを聴いていてそう思います。歌詞の中に“狂気を隠してる”みたいな言葉が出てきたり、今回のアルバムにも“過去はゾンビ化 通り魔みたいに ときどき ぼくを殺しにくる”っていうフレーズがあって、優しそうにみえて全然穏やかじゃないところに共感を覚えます(笑)
変化、遊び心、そして音楽の良さを突き詰める姿勢を感じるニューアルバム
今回のアルバムで印象的だったところはある?
今回のアルバムって良い意味でちょっとクセが強くないですか?
1曲目をまず聴いて「あぁスーパーノアだな」と思って、で2曲目流れた瞬間あまりの違いに別のバンドが流れ始めたのかと思いました(笑)。私、結構びっくりするくらい変化があるバンドが好きなので嬉しかったです。「これがスーパーノアだよな!」みたいな。
それは今までには無かった印象かな?
ここまで攻めてるのは無かった……でも今にも攻めそうな雰囲気はあったから、納得したというか。
確かに前の赤いジャケットのフルアルバム聞いたら、印象全然違うよね。
「とうとう隠してた狂気を見せてきたな」って感じね。
そうですね、今まで実体化させてなかったものを具現化したような感じがすごく良かったです。あと、このアルバムは最初から最後まで全部別れについて歌っていて「ついにそういうことしちゃったか」って思いました。執着がないというか、去る者追わずみたいな印象はずっとあったけど、今回それをめちゃくちゃ前面に出してきたなぁって。いろんな形のさよならがあって、インストだけの5曲目のタイトルもフランス語で「さよならまたね」って意味ですしね。
何か“やりきった感”のある話をしていますが、スーパーノアはこれからもずっと続いていきますからね?(笑)
2人はどうですか?今回のアルバムを聴いた印象として。
僕にとって、確実に2018年のベストアルバムですね。
どんなところが良かったか教えてもらえる?
曲の構成とか音像とか、ミックスの仕方もすごく2018年的なアルバムだなって思いました。
2018年的っていうのはどういうことだろう?
例えば2017年に出たアルバムで名盤だって騒がれていたアルバムを井戸さんもやっぱり聴いてるんだなっていうのを感じて僕は嬉しかったんです。例えばコーネリアスの『Mellow Waves』っていうアルバムがあったじゃないですか。それをめちゃくちゃ聴いたって話をこないだ井戸さんとしてたんですけど、そのエッセンスも感じられるというか。これは純粋に音楽の良さについての話なんですけど、去年話題になったR&Bとかエレクトロニックとかオルタナ界隈とか、それぞれのシーンで戦ってる人たちも突き詰めれば同じ一点に行き着くと僕は思っているんです。このアルバムを聞いて、井戸さんもその一点を見据えている人なんだなって感じました。
この図は端っこに行くにつれて音楽的に振り切れてるバンドってイメージなんですけど、僕らベランダがここ(右側の点の真ん中)にいるとして……スーパーノアがこの辺(中央の点の真ん中)なんですよね。で、ここ(左側の端っこ)が一点に辿り着くって意味での頂点。スーパーノアはちゃんとこの良い音楽の一点に向かって突き進んでいて、確実に僕たちの前にいるなっていうのが今回のアルバムで再認識出来たし、ほんとにいてくれてありがとうって思います。音楽の良さを突き詰めるバンドでいてくれてありがとう。
ちなみに颯心は印象的だった曲やフレーズってありますか?
まず1曲目の“ミラーボール”でWilcoのオマージュがあるじゃないですか、そのギターリフにアッと思ったのと、好きなのは2曲目の“Let down”と4曲目の“井戸とバイバイした”ですね。特に“井戸とバイバイした”にはめちゃくちゃ衝撃を受けました。この曲インストですけど、最初聴いた時インストだと思わなかったんです。歌詞的なというか、意味が同時に流れてくる感覚になったんですよね。アルバムの中で一番印象に残りました。一見クセが強くて実験的なことをしてるように見えるかもしれないけど、ちゃんとスーパーノアっていうバンドの延長線上であり、スーパーノアとしてしっかり成立しているアルバムだと思います。
健央はどう思う?
僕は3曲目のデスキャブみたいな曲“たまたま”が好きで、ライブで見たら絶対に拳を上げる自信がありますね。“井戸とバイバイした”も何回も聴いていて、実家の母にも何回も聴かせました(笑)。僕が井戸さんを好きなところは、月並みな言い方ですけど「この人は音楽が大好きなんやろうな」っていうのが伝わってくるところがシンプルに魅力的でかっこいいなと思っていて、それこそこの曲のように「子供が喋ってるのを音楽にしたらおもろいんちゃうか」とか、純粋な遊び心みたいなものを感じられるのもとても良かったです。
遊び心って余裕がないと出来ないものだと思います。音楽で遊んでる感じですね。
スーパーノアの音楽って、笑いながら作ってるイメージが浮かぶことがあるよね。
ただ、かつて向井秀徳さんが『音楽とことば』っていうインタビュー本の中で歌詞について語ってたんですけど、「自分は自分の感じることを自分の言葉で表現しようとしているだけで、でもそれが他の人からしたら面白く見える」って言っていて、私はスーパーノアからもそういう印象を受けるんです。あくまで真剣にやってるのが面白く見えているのかも。
いや、でも多分笑いながら作ってると思うよ?このアルバム。“井戸とバイバイした”って曲は子供の声をサンプリングして入れてるのが一番の特徴だけど、この曲ってイントロでまずギターのフレーズが入ってくるでしょ。そこにはあえて声のサンプリングは入れずにギターだけ鳴らす。で、曲の中盤から声が入ってくるんだけど、さっきのギターのフレーズは実はそのサンプリングした声の再現だったんです、っていうネタバレみたいな聴かせ方!
先に録ったのは声なのに、それを後から持ってくるっていうね。
そういう曲の構成の部分に遊び心を感じましたね。
今でこそ「スーパーノアみたいになりたい!」とは言わないにしろ、それに近い憧れはずっと持っていて、それこそ3~4年前の僕らではわからなかったようなオマージュなり演奏の細かい表現やミックスなりで僕らのずっと先を行き続けてきて、今回のアルバムでもまた一歩先に行く先輩の姿が超かっこいいなって思ってます。スーパーノア、ラブです!
ラブです!
スーパーノアへの愛を語った、その他のアーティスト
ベランダ
Gt.Vo.髙島颯心
Ba.Cho.中野鈴子
Dr.Cho.金沢健央
Gt 田澤守 *サポートメンバー
京都を拠点に活動するロックバンド。
簡潔でありながら情景がありありと浮かぶ粋な言葉選びと、どこかフォーキーで親しみやすい秀逸なメロディラインは、音楽マニアを唸らせ、ライトな音楽ファンをも一聴して惹きつける魅力を持っている。
時にメロウに、時に荒ぶる絶妙なバンドアンサンブルは、初期のくるりを彷彿とさせるセンスとエネルギーに満ちている。
彼らの音楽に対するピュアな姿勢は、一部で「京都の”良心”」とも噂され、有象無象がひしめく現代の音楽シーンに、一石を投じる存在になりうる可能性を静かに秘めている。
スーパーノア
(L to R)岩橋真平(Bass)井戸健人(Guitar.Vocal)岡村寛子(Keyboards)赤井裕(Guitar)
2004年結成。京都を中心に活動開始。全国各地にてライブ活動を精力的に行い、2009年にcolla disc/M.D.L!より1stミニアルバム「雨の惑星、ステレオの向こう」をリリース。千原兄弟のコントライブ「ラブ」に楽曲が全面的に使用されるなど、好評を得る。2010年に5曲入りEP「circle」を発表し、前作共に完売。2011年にシングル「リリーと穴」、2013年にシングル「C」をリリース。2014年にはサポートメンバーであった岡村寛子(Keyboards)が正式メンバーに加入。またサポートメンバーに石渡新平(Drums)を迎え、楽曲制作に向けて注力する中、2016年にSIMPO RECORDSよりシングル「ドリームシアター」を発表。2017年、同レーベルより待望の初のフルアルバムリリース。
スーパーノア 3rd mini album『素晴らしい時間』
1.ミラーボール
2.Let down
3.たまたま
4.井戸とバイバイした
5.Au revoir
6.なつかしい気持ち
2018.7.8 release
SMPR-010 / ¥1,500(without tax)
Label:SIMPO RECORDS
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京都発アートパンクバンド、my letterの元ドラマー。
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現在名古屋在住のアンテナ遠距離組。最近のマイブームはカセットテープのジャケ買いと、グランパスくん。