ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣
「これしかない」と思っていたことを、諦めてしまったことはありませんか。
19歳で天下の英国ロイヤル・バレエ団の史上最年少男性プリンシパルになる。そんなとんでもない偉業を成し遂げた天才、セルゲイ・ポルーニンでさえ、その後一度バレエを手放しています。天性の才能と、それを押し広げる努力によって、若くしてスターダムにのし上がった彼でしたが、バレエ界のしきたりやその才能ゆえの重圧、故郷の家族との関係に苦悩し、しだいにスターであることに嫌気がさしていきます。そして2年後、人気のピークで電撃退団。そのニュースは世界中で報道され、大きな衝撃を与えました。
そしてその後、彼は再び大きな注目を集めます。
グラミー賞にもノミネートされたホージアのヒット曲、「Take Me to Church」のミュージックビデオで彼は踊っているのです。そのビデオがこちら。
まるで重力なんて存在しないかのように舞う彼の姿に、きっと衝撃を受けたことでしょう。でも彼は、誰よりも重力に逆らって跳ぶことができる人間であり、同時に、誰よりも強く重力を受け続けてきたダンサーだったのです。
やめたいと感じること。やめる決心をすること。実際にやめること。やめてそれがなくなったのを実感すること。それぞれの段階で、それぞれの苦しみがあり、それぞれ違う自分がいる。
苦悩の末にロイヤル・バレエ団をやめた彼が再び踊り始めた理由を、彼はこう語ります。
「苦しみから解放されるには——踊るしかない」
彼の生い立ちから、家族との関係、ダンサーとしてステージを駆け上って行く姿、苦しみ、そして光。それらを本人や家族、友人、関係者のインタビューから描き出すドキュメンタリー。
京都シネマで夏に上映するや、大評判で連日混雑が続いた本作品。10月21日(土)から再上映が始まります。ぜひご覧ください。
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1997年生まれの大学生ライター。
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