REVIEW
Bandwagonesque
Teenage Fanclub
MUSIC 2018.08.23 Written By ケガニ

このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューの中心となる1枚です。

 

企画詳細はこちらをご確認ください。

始まりの予感

美しいメロディと、広がりのあるギター・コーラス。Homecomingsの中には、90年代初頭のギター・ロックのエッセンスが凝縮されているが、なかでもTeenage Fanclubのそれは彼らの創作のすみずみにまで浸透している。2013年にはフロントマンのNorman Blake(Gt. / Vo.)との共演を果たしたことも――彼らのキャリアにとってはエポックメイキングだったとしても――リスナーにとってはごく自然なことだったのではないか。

 

さて、福富優樹(Gt.)が公言しているように(*1)、とくにアルバム2作目、『Bandwagonesque』からの影響は、本作においてたとえば――1曲目を飾る「the Concept」を想起させるような――やや遅めのミドルテンポやギターのストロークパターン、メロディを活かすコーラスワークやサビのキャッチーさなど、随所に聴き取ることができる。Norman Blake自身が2016年のインタビューで過去作ベスト3に挙げつつ語っていたが(*2)、この珠玉の12曲はTeenage Fanclubの名を世界に知らしめると同時に、ノイズミュージックから脱却する新しい音像を提示した。強く歪んだギターの中に聞こえてくる、すがすがしい始まりの予感。「Songbirds」もやはり、初秋に聴きたい一作となっている。

*1 http://realsound.jp/2018/05/post-192031.html

*2 https://jp.vice.com/music/rank-your-records-teenage-fanclub-norman-blake

第三回【3×3 DISCS】:Homecomings『Songbirds』を中心とした9枚のアルバム

Teenage Fanclub - Bandwagonesque
Easycome - お天気でした
原田知世 - music & me
Julien Baker - TURN OUT THE LIGHTS
Homecomings - Songbirds
少年ナイフ - Brand New Knife
Laura Gibson - Empire Builder
相米慎二 - 台風クラブ
NYAI - OUT PITCH

これまでの【3×3 DISCS】

WRITER

RECENT POST

COLUMN
京酒場の音楽論
SPOT
菊しんコーヒー
INTERVIEW
日本でスウィングが流行るには – Clap Stomp Swingin’イン…
COLUMN
【2018年8月】今、ライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
REVIEW
Swing Side / Sing Side – Clap Stomp Swingin&…
REVIEW
真夏の目撃者 – GOING UNDER GROUND
REVIEW
星の王子さまたち – Beautiful
COLUMN
【2018年1月】今、ライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
SPOT
立ち呑み キセノン
REVIEW
Hicoband – あお
COLUMN
【2017年11月】今、ライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト
INTERVIEW
台風クラブは「ロックンロール」か?

LATEST POSTS

COLUMN
【2024年12月】今、東京のライブハウス店長・ブッカーが注目しているアーティスト

「東京のインディーシーンってどんな感じ?」「かっこいいバンドはいるの?」京都、大阪の音楽シーンを追っ…

REPORT
北欧から鳴るインディーポップは、DIY精神を体現した姉妹の対話録―7ebra『7ebra Japan Tour 2024』

2024年11月18日(月)、東京の新代田〈FEVER〉でスウェーデンのインディーポップデュオ、7e…

REPORT
ボロフェスタ2024 Day3(11/4) – 偶発的な衝撃を与え続ける、私たちの居場所

23年目となるが、相変わらず丸くなることを知らないカオスなフェスである『ボロフェスタ』。近年のストリ…

REPORT
ボロフェスタ2024 Day2 (11/3)- 点と点がつながり生まれる、この日だけのストーリー

〈街の底〉で感じた強い光、ロビーで目撃した魂の叫び - THE HAMIDA SHE'S・鈴木実貴子…

REPORT
ボロフェスタ2024 Day1(11/2) ‐ 収まり切れないからここにいる、次なる新星を生む街の底バースト

『ボロフェスタ』には、毎年4つのステージが開設される。ステンドグラスのある立派なホールには、〈ORA…