REPORT

【吉田紗柚季の見たボロフェスタ2018 / Day3】Special Favorite Music / Hi,how are you? / ときめき☆ジャンボジャンボ / Limited Express (has gone?)× ロベルト吉野 / 台風クラブ / メシアと人人

雲一つない朝。誘いに乗っかって急遽メトロのVol.夜露死苦に参加し、まだうっすらとタバコの匂いの残る身なりでKBSホールへと舞い戻ってきた。遅めの朝食に、ki-ftの発起人でもある山田慎氏の出店・PAINLOTでソーセージドッグを購入。身体に染み渡る小麦と肉のシンプルな旨味よ……だが、あまりゆっくりはしていられない。今日も“なるたけいっぱい見る主義”のもと歩き回る所存であるからだ。もちろんレポートを書いたバンドは最初から最後まで見通しているので、そこはご安心ください。

Special Favorite Music

バレーボウイズに続き、クイーンSTAGEの一発目も大所帯バンドが彩る。男女ツインヴォーカルにヴァイオリンとサックスを擁する大阪拠点の7人組・Special Favorite Musicだ。1stアルバム収録の“Ceremony”を1曲目に新旧織り交ぜたセットリストでキメてきているのは、京都シーンへの自己紹介といった意味合いも強いのかもしれない。彼らは今年7月と10月に立て続けにミニアルバムをリリースしており、ドラマのタイアップも獲得するなど特に精力的な活動を続けている。その新作『TWILIGHTS』収録の“ロングハローグッバイ”のあと、MCでクメユウスケ(Gt / Vo)は「昨日はトーフさん(tofubeats)の爆撃みたいな低音にお腹をやられたりしていました」と観客としてのエンジョイぶりを嬉しそうに話した。屋外の爽やかな秋晴れに呼応するような、人懐こく流麗なグッド・ミュージック。ボロフェスタでは比較的少ないシティポップ・ベースのバンドとしての役割を大いに果たしていた。

 

Photo:Yohei Yamamoto

Hi,how are you?

トクマルシューゴを中座してホールの外に出ると、すでにロビーは黒山の人だかり。背伸びしてジョーカーSTAGEの方を見ると、クレヨンしんちゃん風の服にヘンな髪型の男がマイクを持って土龍氏と話している。「その髪は何?」「MISFITSです」。彼こそがハイハワことHi, how are you?の原田(Gt / Vo)だ。ハイハワはHomecomingsと同世代の男女ユニットで、原田の甘酸っぱいソングライティングとローファイな宅録サウンドで人気を博してきた。馬渕(Key / Vo)が東京に越して3年、原田が山形の実家に戻って約1年たつ今日、久方ぶりに京都でのライヴが実現したのだ。ちなみにボロフェスタは、ハイハワのレーベルオーナー・曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が初めて彼らを目撃した場所でもある。

 

1曲目は名曲“NIGHT ON THE PLANET”。素朴で柔らかく、しかし心なしか強くしなやかになった原田の歌声が、観客を独特のロマンチシズムに引き込んでいく。さら4月にリリースされた4thアルバム『機嫌予報図』収録の“それはそれとして”、“フードコートデート♡”で原田はポーズをキメながらギターをガチャガチャかき鳴らし、馬渕は終始淡々とに、しかし原田の衝動とぴったり呼応したプレイを繰り広げる。珠玉のショート・ポップ11曲の最後に披露されたのは、11月7日発売のシングル『ドリーム・キャッチャーII』より“夢でバッタリ”。観客に鈴やカウベルを渡し、リズムを鳴らしてもらいながら歌うというなんともゆるい一幕だ。途中で鈴担当の一人があえてリズムを変えだしたのも、彼らの奔放さに応えているかのようで心地よかった。
この時ロビーを埋めた観客の多さは、彼らの曲が流行りを問わない強度を持っていることのなによりの証だろう。人なつこく「あばよ!」とだけ言い残して去ったハイハワ、再び会える日もそう遠くないに違いない。

 

Photo:ヤマモト タイスケ

ときめき☆ジャンボジャンボ

スーパーノアでも活躍するオカムラヒロコ(Piano)が籍を置く、大阪拠点のインストバンド・ときめき☆ジャンボジャンボ。1曲目“Nina”から彼女の骨太なピアノ・リフがドラムのダイナミクスと絡みあい、ブライトで展開に富んだプログレ・サウンドの波が街の底を満たしていく。“jalopy rendez-vous”のあと「“音楽を止めるな!”なので、残り3曲ぶっ飛ばしていきます!」とテーマになぞらえた宣言でにわかに歓声があがる中、始まったのは最新シングルの表題曲“アルゲンタヴィス”。しかしここで、オカムラの電子ピアノの音が出なくなるというトラブルが発生。この曲のイントロはピアノのフレーズが主体だ。出鼻がくじかれるかと思いきや、観客の手拍子、有光”メイプル”一哉(Gt)、そして岩井ブロンソン(Dr)、ハヤシ・トト(Ba)と即興でリズムが繋がれていく。筆者の場所からは人波で見えなかったが、オカムラも鍵盤を叩き続けていたようだ。スタッフの懸命な調整の間にそれはセッション合戦にまで発展し、無事鍵盤が復活!なだれ込むように曲に戻っていく。スケジュール上それが最終曲になってしまったが、直後のアンコールを求める手拍子に“音楽を止めるな!”の体現を目撃した観客達の興奮がにじみ出ていた。

 

Photo:Yohei Yamamoto

Limited Express (has gone?)× ロベルト吉野

あまりにも眩しいGEZANの“END ROLL”が鳴り終わったKBSホール。キングSTAGEでセッティングを進めるリミエキことLimited Express (has gone?)、そして今回タッグを組んだDJ・ロベルト吉野を、観客達は今か今かと待ち受けている。リハどころか音が鳴り出す前からリフトをやりだす猛者もいるくらいだ。初っぱな“MOTHER FUCKER -ロベルト吉野rountine-”からYUKARI(Vo)は高速スクラッチを繰り広げるロベルト吉野のブースの上に登り、BiSHのTシャツも混じっているフロアを煽りまくる。そして“世界の端から落っこちたい”のあと観客から口々に飛び出した「音止めんなって!!」という叫びには、クールに一言「悪い客だね」。続く“Discommunication”でも谷ぐち順(Ba)の煽りに応じてぶつかりあいの大熱狂、靴やタオルやペットボトルが宙を飛び交っていたのだから、さもありなんという感じ。

 

わっせわっせとフロアに運び込まれた脚立の頂上に立ったYUKARIは、“ぶっかます”でJJ(Vo / Gt)=飯田仁一郎を指差し「ボロフェスタ作った人の前で言うのもなんやけど、ボロフェスタぶっ壊しにきたからな!!」と堂々宣言。観客をぐるぐる見下ろしながらマイクパフォーマンスを繰り広げ、終盤、ステージからの戻ってこいという合図にもなかなか応じたがらない。というか何故応じなければならないのか、それは、大トリを待ちきれず乱入してきたBiSHを迎え撃つためである!

 

コラボレーションは(渋々)戻ってきたYUKARIとセントチヒロ・チッチの鋭いラップの掛け合いからはじまり、YUKARIの「なかなかあの曲やってくれへんから/全然印税入ってこんよー」というパンチラインに続いて、BiSHのリミエキ提供ナンバー“カラダ・イデオロギー”が鳴りだす。1+6人の女たちが声帯を限界ギリギリまで震わせて繰り出す、文字通り金属のような金切り声。YUKARIはふたたびDJブースに登り、BiSHは矢継ぎ早にフロアに飛び込み観客の頭上を泳ぎ回っている。曲が最後の一発を終えアウトロに入ってもなお、BiSH、リミエキ、ロベルト、そして観客まで、みな残った気力を使い果たさんばかりに叫んで跳ねて鳴らし続けていた。あとに残ったのは、広いホールに残るほどの汗のにおいと口々に話す人々の興奮した声、そしておそらく全員の「やべえもん見ちまったな」という気持ちだろう。ステージの彼らが汗にまみれて輝けば輝くほど、ボロフェスタの根本にある精神は言葉より速く伝播する。きっとこれからも、京都の若いリスナーやミュージシャンはそうやって鼓舞されていくのだ。

 

Photo:Yohei Yamamoto

台風クラブ

鳴り始めたSEは、井上堯之バンドによるドラマ“傷だらけの天使”メインテーマ。台風の後のようなKBSホールに登場した台風クラブである。石塚淳(Gt / Vo)の「台風クラブです、よろしくおねがいします」という挨拶のあとの“江ノ島”、ファンキーなグルーヴの“飛・び・た・い”で、会場は彼ら特有の温度感で塗り直されていく。

 

直前に「カヴァーなんで演るたびに含み笑いされるんですけど、音楽を始めようと思った時に聴いてた大切な曲です」とややあまのじゃく気味の愛を語ったグリーン・デイ“バスケット・ケース”の日本語詞カヴァー“遠足”は、フジロック同様こちらでも大盛り上がり。続く、彼らの中でも音源としては特に古い“まつりのあと”はややBPMが上がり、3人それぞれのグルーヴが特にダイナミックなうねりを持って迫るようだった。最後は定番のアッパチューン“台風銀座”で締めくくった彼ら、もはや余計な気負いもパフォーマンスも必要ない、今年に入ってカーネーションやサニーデイ・サービスら大御所とのツーマンをもこなしてきたその熟練ぶりがありありと感じられるアクトだった。

 

Photo:ヤマモト タイスケ

メシアと人人

台風クラブが終わって急いで街の底に潜ると、ものすごい湿度に出迎えられた。直前のSuiseiNoboAzから居ると思われる人はみな髪まで汗だくで、扇風機がガンガンに回ってはいるもののやはり暑い。3日間の街の底を締めくくらんとする京都の男女バンド・メシアと人人(にんじん)を迎えるにはバッチリではないか。セッティングを待つあいだ周りを見回すと、彼らと交流の深い出演者の顔もちらほらとあった。

 

“留萌”のあと北山敬将(Gt / Vo)が「暑いですね」と一言だけ述べたあと、彼らの曲のなかでもBPMが早い“おんなし”が始まると当然のように上がる歓声。“1.7.5.R”のギャリギャリひっかくような奔放なギターソロ、不協和音しか鳴っていないのになぜだか快感のツボを突いてくる“クワル”にしたって、後方からぐるり見渡しても棒立ちの観客が一人もいないのだ。みな思い思いのノリ方で飛び、声を上げ、体を揺らしている。人なつこい出で立ちで鋭いシューゲイズ・サウンドを鳴らしだす、京都のバンド・シーン屈指の愛されバンドだからこそ作りだせる空気がここにある。

 

しかし彼らのハイライトはここから。アンコールで上半身裸になってやってきた北山は、演奏しはじめた“おまけ”の途中でギターのシールドが抜けるのも構わずステージを降り、がむしゃらに階段を駆け上がっていってしまう。シンバルだけ片手に持ってナツコ(Dr / Vo)が続く。楽しそうに追いかける観客について筆者も上に上がると、撤収作業真っ最中の屋外フードエリアに「負けなのさっ!」「シャーン!(シンバル)」と続きを演りだした彼らの姿があった。冷え込む夜空の下、マイクもアンプもなし、クリーンギターとシンバル一つで最後のサビを熱唱し終えた2人に、その場にいた皆が拍手を送る。直後北山は赤いストラトを放り投げ捨て、スタッフが「気持ちはわかるけど!」と言いながら“静かに”と書かれたボードを掲げる。BiSHとはまた別の、どこまでも土着であたたかい衝動に満ちたアヴァンギャルドがそこにあった。

 

ちなみにナツコは中盤のMCで「映像は見に行こうかなと思ってます」と言っていたが、KBSホールに戻るとちょうどエンディングまで終わってしまったところだった。これもまた一興!

 

Photo:Yohei Yamamoto

まとめ - シーンの暗がりに光を当てる

16年にわたって、幅広いジャンルのラインナップを揃えてきたボロフェスタ。特に関西勢については、その顔ぶれで関西シーンの“今”が分かると言われることも多くある。しかし実際のところ、ひとつの街で鳴っている音楽をすべて網羅しきるのはとてもむずかしい。東京はもちろん京都、いや、いくつか演奏場のある街ならばどこでも、人と音の営みはおいそれと観測しきれないほど多くのレイヤーとなって重なり合っているものなのだ。土龍もまた、岡村詩野氏によるインタビューでまだ関わりの少ない界隈への意識を語っている。特に地方において、そんなシーンの暗がりに光を当て、レイヤー(界隈)の外の人たちに紹介しようとするライトの存在がいかに貴重であるか。たとえ100%ではなくとも、ラインナップの面でボロフェスタが愛され続けてきた一番の理由はそれだろう。東京のベテランを楽しみに来た人、関西のホープをチェックしに来た人、その両方が近距離ですれ違い、同じ出し物にはしゃぎ、それぞれ予想外の発見を持ち帰っていく。そう想像すると爽快だ。

 

筆者は前祭・ナノボロフェスタよりもこの本祭のほうが参加歴が浅く、今年で2年目となる。今年は去年よりも、The Chorizo Vibes、Limited Express (has gone?) × ロベルト吉野といった普段聴いていないジャンルのアクトに興奮させられることが多かった。ステージ感の距離感もあって、いつもよりもジャンル間の境界が圧倒的に曖昧になる3日間。あなたは何を見つけただろうか。もちろん特段なくたって良い。とどのつまりは祭りなのだから。

【吉田紗柚季の見たボロフェスタ2018 / Day2】The Chorizo Vibes / CASIOトルコ温泉 / KONCOS / TENDOUJI / The Songbards / butaji

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