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【阿部仁知の見たボロフェスタ2018 / Day3】河内REDS / トクマルシューゴ / 本日休演 / SUNNY CAR WASH / BiSH

前日とても印象に残っていた下津光史の“唄の命”を口ずさみながらブラブラと朝の京都を歩く。眠気と疲労感で身体は限界に近いが、会場に着くとそんな疲れすらもスパイスに変えてくれるような活気が僕を迎え入れてくれた。最終日の今日は清掃員(BiSHファンの総称)や、見るからに只者ではないGEZANがお目当てであろう観客も沢山いて、前日まで以上に人種の坩堝という感じの雰囲気。そんな中でvol.夜露死苦でフロアを湧き上がらせたimaiがふらっと歩いてたりもする。気づいたら隣で誰よりもはしゃいでいるMC土龍を筆頭に、前日までも多くの出演者やスタッフが参加者と同じように楽しんでいる姿を見た。こんな距離の近さもボロフェスタの魅力なのかもしれない。ふらっとトクマルシューゴに会えないかななんて個人的な願望を吐露したところで、さあ、最終日のスタートだ。

河内REDS

「出演バンド1番!河内REDS!」 そんな掛け声とともに最終日トップバッターを飾るのは大阪は富田林の4人組バンド河内REDSだ。「親しみやすっ」コテコテの大阪ノリを撒き散らす男達の姿を見て僕は思わずつぶやいてしまった。兄貴肌なぶっきらぼうさがまるでお笑い芸人のようで、フロアの空気を一気に味方につける。

 

どうやら「河内ロック」というらしい彼らのストレートで熱いガレージサウンド。“男はみんなちょっとだけホモ”(なんてタイトルだ……)では「女だけ〜!」「男〜!」「2階席〜!(どこのことやねん)」とフロアを煽りタイトルのフレーズをコールアンドレスポンス。みんな照れながら声をあげる光景がなんだか可笑しかったが、僕は確かにそうかもしれないと思ってしまった。だって目の前の彼らが本当にかっこいいんだもの。ネタのようだが絶妙にわかってしまうリリックセンスに惚れ惚れとする。

 

それからもデイサービスに行きたくないお年寄りの歌“シルバーハート”や、母への愛をベタベタにメロウに歌う“おかん”と続く。楽曲の背景を一曲一曲説明しながら、全員でジャンプしたり、しみじみ聴きいったり。改めて言おう、彼らは本当に親しみやすい。そして来年のメインステージ出演という野望を掲げながら盛大に突き抜けた、底抜けに明るくて笑える彼らのステージ。MC一つ一つも全力投球で、ここまでショーマンシップに溢れたパフォーマンスをみせてくれるバンドはなかなかいない。眠気も疲れも吹き飛んだ最高の最終日スタートであった。

 

Photo:齊藤真吾

トクマルシューゴ

なんてピュアな喜びにあふれたステージだろう。入念に繰り返すサウンドチェックから期待感が高まる中現れたのはトクマルシューゴだ。グロッケン、オルガン、スティールパン、数え上げるのも野暮なほど多種多様な楽器を駆使し奏でられるのは、異国のお祭りのような匂いをまとったポップな楽曲達。沢山のおもちゃのような楽器だけでなくギターやベースすらもまるでおもちゃように興味本位で扱う彼らの純粋な好奇心に溢れた演奏に、こちらも素直に楽しくなってくる。ネパールの曲という“Reshum Firiri”では観客のハンドクラップまでもがバンドの構成要素であるかのような不思議な感覚で手を叩いていた。

 

「時間がないけどこれだけは言わせてほしい」と語るトクマル。告知をするのか、或いは何かいい感じのことを言うのかと思ったら「A4用紙1枚に1文字ずつ印刷してお店の窓に貼ってあるやつ、あれが一番嫌い」 会場の空気を完全に弛緩させたこの一幕は彼を象徴するものだ。トクマルシューゴの楽曲は変拍子が多用され耳慣れないフレーズがそこかしこから飛んでくるが、それでも全く違和感なくスーッと入ってくるのは、こんな風に感じたことを表現せずはいられない子どものような純粋な感性からくるものなのであろう。

 

まるでポップミュージックの枠組みをどこまで広げられるか試すように、常識やセオリーにとらわれない柔軟な発想で遊ぶように彼らは音楽を奏でる。エレキギターを爪弾き音源よりドライヴ感が増した“Parachute”や、森の中にいるような清涼感をまとった“Rum Hee”。耳慣れた往年の代表曲達もこの空間で新たな芽吹きを迎えたかのようにフレッシュに響き、僕らは祝祭的なムードに浸る。そしてがやがやごちゃごちゃが見事に調和する色彩豊かな音像がボロフェスタの空気感に絶妙にマッチし日曜の昼下がりを彩っていた。

 

最後に披露した新曲“Oh! Salvage”ではグルーヴィーなバンドサウンドで新境地を垣間見せてくれたトクマルシューゴ。こちらに一瞥もくれずホールのはるか後方を眺めながら歌った彼は次に僕らをどこに連れていってくれるのか、楽しみにせずにはいられない。

 

Photo:齊藤真吾

本日休演

時刻は18時前。今や京都シーンを語る上で欠かせない存在となった京都大学出身の4人組を観ようと開演前から超満員。蒸せ返るような暑さの中、本日休演の登場だ。一曲目から“寝ぼけてgood-bye”、“秘密の扉”と最新作『アイラブユー』から立て続けに披露。音源ではバンド以外にも様々な音が鳴っていたが、その全てを凝縮したソリッドで力強いバンドサウンドの中に荒々しい即興プレイが入り混じり混沌とした空気を醸し出す。特に佐藤拓朗(Gt. / Vo. )のリズムをぶち壊すような緩急のついたギターが印象的だ。

 

“アラブのクエスチョン”では、独特なタイム感で刻まれるリズムが土着的な生々しいグルーヴを生み出しフロアを揺らしていく。身動き一つ取れないような超満員の中でも音に呼応するように不思議とスペースが生まれてくる。最前列では外国人が奇妙なノリで踊っている。あちらこちらの異国的なフィーリングが織り混ざった彼らの音楽に国籍はない。しかしこんな狂気的な混迷を彼らは気心の知れた友人と無邪気に遊ぶように作り出す。調和好きか混沌好きかでだいぶ雰囲気は違うが、そんなところは昼過ぎに観たトクマルシューゴとも似ている。“全てにさよなら”なんて、狭くて薄暗い街の底ステージの雰囲気も相まってジャムセッションを通り越して怪しげな儀式のよう。考えても無駄だ。フロアは身体の鼓動に身を任せるしかないのだ。

 

シチュエーションも相まって時間を忘れるような没入感に浸ることができたライブだったが、僕はこんなことを思った。「来年はメインステージを彼らの色で染め上げてほしい」「この狂乱の中ステンドグラスが開いたらどうなるんだろう」本日休演はそんな未来への想像さえも掻き立ててくれた。

 

Photo:岡安いつ美

SUNNY CAR WASH

本日休演から続く超満員の中、サウンドチェック中の岩崎優也(Gt. / Vo.)は「めっちゃやりやすいです ありがとうございます」とPAに丁寧にお礼を告げる。宇都宮から来た3人組SUNNY CAR WASHの登場だ。先ほどの一幕から爽やか系バンドなのかと勝手に思いこんでいたら、ギターにマイクにベースにドラムに思いの丈を全てぶち込む激情ギターロックが奏でられ僕は度肝を抜かれてしまう。まるで制御の効かない感情が身体を突き破って溢れ出てきそうなほど荒々しく演奏するバンド。可愛げすら感じる少年のような声で岩崎は叫び続ける。

 

かと思ったらMCでは気の抜けたようにふにゃふにゃと喋る岩崎。なんだか掴めない人だ。代表曲ともいえる“キルミー”では、言葉を尽くしても尽くしても尽くし足りないというくらい空間を埋め尽くすリリックで衝動を叩きつけ、フロアは熱狂の渦に巻き込まれる。そんな岩崎の姿を見て、僕は午前中に観た河内REDSの“男はみんなちょっとだけホモ”を思い出していた。ちょっと危ない。そしてしきりに「俺たちは友達だ」と語る中、友情について歌う“ティーンエイジブルース”を最後まで熱く叫び続けた。

 

「ギターロックの衝動に殉じる」 彼らを観ながら僕の頭の中にはそんなフレーズが舞っていた。相変わらず掴めない岩崎だが、同じ激情の時を過ごした彼らと僕らはもう友達なのだろう。熱くも爽やかな青春の風が吹き抜けた30分間であった。

 

Photo:ヤマモト タイスケ

BiSH

ボロフェスタ2018も終わりが近づいてきた。4年連続出演にして大トリ、ボロフェスタの歴史と共に育ってきたBiSHの6人が満を持して登場だ。ホールを埋め尽くすオーディエンスの期待が高まる中、一曲目は“しゃ!!は!!ぬあ!!あぁ。死!!いてぇ。”変拍子を繰り返しながら煌びやかなピアノが走る実験的な曲に、筆を振る前衛芸術のような振り付けが美しく映える。これには初見どころかアイドル自体にほとんど免疫のない僕も思わず息を飲んでしまった。 ホールを埋め尽くす清掃員達の躍動も普段観ているロックバンドのライブとはまったく雰囲気が違う。これはとんでもないことが始まるのではないかと期待はさらに急上昇。

 

痛快なギターロックサウンドの“BiSH-星が瞬く夜に-”、アイナ・ジ・エンドの耳をつんざくシャウトがこだまするハードコア“DEADMAN”。代わる代わる歌い手が移り変わるロックバンドにはないスタイルに初めは若干戸惑うも、じっくり見ていると歌声も仕草も表情も6人それぞれの個性があることに気付く。こんな当たり前の事実に今まで目を向けていなかったことを恥じ入るほどに、彼女達はキラ星のごとく各々の輝きを放っている。周りを見渡すと、前方で声を張り上げながら振りを真似る人はもちろん、完全撮影OKな彼女達の一瞬を切り取ろうと真剣にカメラを向ける人、ホールの端でぐるぐるはしゃぎまわっている人など、楽しみ方の自由度が高過ぎる。その中には見るからに清掃員という感じの人だけでなく、ロックキッズや、親子連れ、60代くらいの方までいる。なんなんだ。ここはワンダーランドなのか。そして僕にとって一番衝撃的だったのはハシヤスメアツコと目が合ったこと。「どんなに大きなステージでも目が合った気にさせるのが一流のアーティスト」みたいな格言(?)を聞いたことがあるが、気がするじゃなくて確実に目が合った、と思う。その瞬間心の内まで全て見透かされたような感覚に陥り、加速度的にのめり込んでいく自分がいることがわかる。

 

終盤に入り、メロウにリフレインするギターが歌を一層引き立てる“ALL YOU NEED IS LOVE”は後半突如ペースを上げエモーショナルな合唱が沸き起こる。本編最後の“beautifulさ”ではホール全体が感極まっているようだ。そしてついにステンドグラスが開いたアンコールの“オーケストラ”には柄にもなく目頭が熱くなってしまった。初めてここに来た僕はボロフェスタとBiSHの歴史を知らない。だがそれでもここで長く愛されてきたことが肌で感じられるホールの雰囲気と彼女達の表情。長編映画のエンドロールのような余韻を残してBiSHはステージを後にした。ジャンルの壁も常識という抑圧もすべて飛び越えてホールに集うあらゆる人の感情を解放させていったBiSH。そんな姿に「楽器を持たないパンクバンド」の真価を見たのは僕だけではないはずだ。

 

Photo:Machida Chiaki

3日間を通して数々のドラマが生まれたボロフェスタ2018。ここで笑い合いバカ騒ぎした時の感情がリフレインするかぎり、僕らの音楽は決して止まることはない。

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