INTERVIEW

建物を設計・デザインするように曲を作れたら – aldo van eyckインタビュー

10月25日に2ndアルバム『dead shot dan』をリリースした、福岡の4人組ロックバンドaldo van eyck(アルド・ファン・アイク)。black midiなどの現行のUKポストパンクとも共鳴するその幅広い音楽性は福岡のインディーシーンでも一目置かれ、東京や関西でのライブ、そして2ndアルバムのリリースで、全国区の注目を集める日も近いであろう。そんなリリースのタイミングで、中心人物の tomohiro onoue(Vo / Gt / Tp / Key)に話を聞いた。

MUSIC 2023.10.25 Written By 阿部 仁知

『dead shot dan』を聴いてまず印象的だったのが、混沌としたアヴァンギャルドな感触やLo-Fiな荒々しさが前面に出ていた1stアルバム『nada』(2022年)と比べた時のキャッチーさだった。しかしそれ以上に驚いたのは見かけの「キャッチー」の向こう側に奥深く豊かな味わいが潜んでいること。粒度がより細かく継ぎ目がない、味わいはクリアなのに芳醇なスープとでも例えようか。

 

そういう意味で言えばスタイリッシュでクールなイメージがあり、話の中でもバンド名や曲名のモチーフにもなっているtomohiro onoueの建築や哲学の思考に膝を打ったが、彼の音楽遍歴や福岡のアンダーグラウンド・シーンで育まれてきたマインドは想像以上にストレートで生活感のあるものだった。憂いっぽさと気さくさが同居しているのも彼と話していて印象的だったところで、難解で複雑に思える表現をしながらも、変に奇をてらったような感触がなく明快に響くのもこういった部分なのかもしれない。

 

今回のインタビューでは、aldo van eyckも出演する『おんせん都市型音楽祭 いい湯だな!』のディレクターで、tomohiro onoueともかねてから親交の深い、福岡在住のクリエイティブ・ディレクター増田ダイスケも聞き手に迎え、その音楽表現の魅力に迫った。この記事が2ndアルバム『dead shot dan』や『いい湯だな!』などのライブで気になった人にとって、さらにaldo van eyckにのめり込むサブテキストとなれば幸いだ。

aldo van eyck

 

 

福岡のロックバンド。

 

ロック、ポストパンク、R&B、そしてジャズの要素を巧みに組み合わせた独自の音楽スタイルを持っています。豊かなハーモニー、タイトなリズム、そして柔軟な演奏技術を駆使して、聴衆を魅了するサウンドを生み出しています。ロックのエッジとポストパンクの精神を融合させつつ、R&Bのメロディとジャズの即興性をプラスした、新たな音楽の可能性を追求しているバンドです。ぜひその音楽性を聴いて、心を揺さぶられる体験をしてみてください。

 

X(旧Twitter):https://twitter.com/AldoVanEyck
Instagram:https://www.instagram.com/aldo_van_eyck/
YouTube:https://www.youtube.com/@aldovaneyck5865

インタビュー:増田ダイスケ、阿部仁知
テキスト:阿部仁知
写真:YUTA MATUKIZONO

福岡のアングラシーンが引き寄せた4人の邂逅

増田ダイスケ(以下、増田)

aldo van eyckのメンバーって年齢も結構違いますよね。どこで知り合ったんですか?

tomohiro onoue(以下、 onoue)

ギターとドラムが僕の1つ年上で、ベースは10歳年上ですね。知り合ったのは福岡のライブハウス〈UTERO〉で、4人とも別々のバンドでよく対バンをして一緒に飲んだり音楽の話をして、何となく僕が好きな友達3人というのが今のメンバーです。

──

10歳も年上なんですね。

onoue

ベースのやまにい(masahiro yamashita)は、元々山口にいて30歳ぐらいの時に福岡に来た人で、年齢は10歳上だけど〈UTERO〉デビューはざっくり同期みたいな感じで仲良くなりましたね。ギターのryunosuke(sakaguchi)は〈UTERO〉のバーカウンターにずっと立ってて、通ってきた音楽も結構近いところがあったからすぐ仲良くなった。ドラムのdischaaageeeは今もソロ・プロジェクトをやってる福岡では有名な孤高の存在で、結構音楽オタクなんでいろいろ話したりとかして。僕はK-19っていうバンドをやってたんですけど、23歳ぐらいの時にメンバーが大阪に行っちゃって、「バンドできんな」みたいな感じでフラフラしてました。

──

そこから何かaldo van eyckをはじめる転機があったんですか?

onoue

僕が師匠だと思ってるfolk enoughっていうバンドが福岡にいるんですけど、その井上さん(井上周一)にある日呼び出されて、前の弾き語りのライブの出来がよかったから、てっきり褒められると思ってたんですよね。それでのこのこ着いて行ったら、徐々に「お前おもんねったい」みたいな感じで説教になって。その時はムカついたし揉めたりもしたんですけど、一方で師匠の苦言は真に受けていて、みんなに「バンドやらんか」と電話して。それぞれ口説いてスタジオに入り始めたのが2020年で、ライブを始めたのが2021年。そこからズルズル今に至るっていう感じです。

増田

はじめてスタジオに入った時って、最初から曲をみんなで作り始めたんですか?

onoue

ファーストの『nada』に入ってる”NADA”と“Soldier march”は元々バンド用で作ってて、それと“Dirty drive”と今回の『dead shot dan』に入ってる“Dive”は自分1人で作りました。あと何曲かのデモを持って行ってスタジオで何回か合わせた感じです。

増田

割と4人ともプレーヤーとしてうまそうだし、誰かが何か始めるとそこに沿って合わせていけちゃうタイプ?

onoue

そこまではいけてないですね。セッションで言葉を交わさず、音と音の会話で曲を作りたいとは思ってますけど、ジャズのプレイヤーほど何でもありの演奏まではまだまだ。でも最近になって「aldo van eyckのやり方をみんなわかってきたな」って感じがしていて、思いついたリフをセッションの流れで作るっていうのは、割と最近できてきてます。

増田

最初の元ネタを作ってきた人が主導権を握るんですか?

onoue

そうですね。大体僕が多いんですけど、最近は割とryunosukeも作ってきてくれて。今回のアルバムに“L S Drive Apartment 1F”、“2F”、“3F”ってあるんですけど、それは全部ryunosukeの作曲。“3F”はシングルカットもしたんですけど、レコーディング当日にセッションしながら作った曲だったので、そういう意味ではやりたいことができた今の集大成みたいな曲です。

増田

初めてのライブって〈秘密〉(福岡のライブハウス)でやったんでしたっけ?

onoue

はい。〈秘密〉を始めた人たちとずっと仲良くしてもらってて、たくまさん(秘密の店長、NYAIのGt / Vo)が「好きなバンド誰とでもやらしてやるけん、ツーマンやってよ」みたいな感じで言ってくれて。その時はCreamcan.っていうツーピースバンドを呼んでもらって、それが初ライブでした。自分が一人一人口説いて、4人でバンドをやるのがはじめてだったので、aldo van eyckでライブができた時は本当に嬉しかったです。「やっとやりたかったようなことができそうだ」みたいな感じ。

──

ちなみにバンド名の由来や『dead shot dan』でも結構建築から引用した部分もあると聞いたんですけど、aldo van eyckと建築の関わりついて少し聞かせてください。

onoue

『dead shot dan』ではLudwig Mies van der Rohe(ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)の『Lake Shore Drive Apartment』という作品のタイトルを曲名につけました。ちょうどミースの作品集にはまってる時期で、「頭文字を取ったらLSDになるからロックバンドっぽくてよくない?」みたいなこと言って。若干ジョークに近いですね。バンド名もオランダの建築家の名前で、作品も好きなんですけど単純に名前の語感と字面がかっこいいなってずっと思ってたので、そこから引用しています。

尊敬する先輩バンドとの出会い。音楽遍歴と建築や哲学への傾倒

──

音楽のルーツの話も聞きたいんですが、aldo van eyckが影響を受けたものというのは、やはりさっきのfolk enoughが大きいですか?

onoue

そうですね。あと福岡にthe perfect meっていうバンドがいて、この2つからの影響は大きいです。最初はthe perfect meをタワレコで聴いて、「年齢も近くてこんなかっこいい音楽をできるのか」と衝撃を受けて。それでワンマンの日に乗り込んで飲み会まで居座って「やばいっすわ!俺もこうなりたいですわ!」みたいなことを話して。

──

めっちゃぐいぐいいきましたね。

onoue

そしたらMake The Pancakeっていうバンドや『POINT』ってイベントをやってるヤノタカヒトさんが、「なんかヤバいやつが来たな」みたいな感じで話しかけてきて、「お前はfolk enoughを聴け」と言われて。それでまた衝撃を受けて、アンダーグラウンドの生活がはじまりました。その時は高専に通ってたんですけど、もうなんかどうでもよくなっちゃって。いろいろ人生が狂ってくる引き金みたいなもんですよね。folk enoughの井上さんは働いてもない駄目なクソ親父ですけど、音楽が最高にかっこいいんですよ。追っかけみたいなことをずっとしてて、毎回のライブについて回って教えを乞うみたいな。いろいろとかわいがってもらって。

増田

めちゃめちゃ世話になってるじゃないですか。

onoue

でも「老後は任せた」みたいなバイブスは感じますね。バンドのスタンスとか曲の作り方みたいなのは、特にfolk enoughから盗んだものが多いと思います。今は全然意識しないですけど、例えば透かして見る方眼紙があったとして、ガイドの線があるじゃないですか。それがfolk enough由来っていうか。それぐらい自分なりにfolk enoughをずっと研究してたのが染み付いてる感覚があります。

onoue

でもfolk enoughもthe perfect meも、福岡に間近にいたっていうのがすごく衝撃だった。ずっと音楽は聴いてきたけど、リアルな感覚として自分ができると全然思ってなくて。でもこの2つのバンドに出会って、自分が心からかっこいいと思う音楽を身近な人がやってたっていうのが、本当に衝撃で。「俺もやるしかない」みたいな気持ちになりました。

増田

遠い世界の出来事だと思いがちだったりもしますよね。音楽はずっと好きだったんですか?周りの環境とか、家庭とか学校とか。

onoue

親父がギターをやってて、ギターもそこら辺にあるしCDもチョロチョロある感じで、音楽は割と身近といえば身近だったかもしれないです。

増田

最初に覚えてる好きだなって思った音楽は何ですか?

onoue

中学生の時に「ビートルズがかっこいいらしい」みたいなのを聞いて、『Rubber Soul』(1965年)と『Beatles for Sale』(1964年)の2枚だけ家にあって。最初『Rubber Soul』を聴いた時に「全部一緒の曲やん、何がかっこいいんや」と思って、ちょっとわからんなーと。それで『Beatles for Sale』を聴いて、“I’m A Loser”って曲で、全部かっこいいってなってしまいました。それでギターを始めようと思って、親父がストラトを貸してくれたのがギターの始まりですね。今も勝手に塗装を剥がして使ってるんですけど(笑)。そこから順当にJimi HendrixやThe Rolling Stones、Led Zeppelin、Creamとかを聴いて60年代からのロックのど真ん中を聴きつつ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONにも普通に胸を打たれました。

増田

ゴッチ(後藤正文)が好きなんだよね。

onoue

ヒーローですよ。くるりもBUMP OF CHICKENもELLEGARDENもRADWIMPSも、ストレイテナーも。あ、スピッツとMr.Childrenと東京事変を忘れてました。日本のロックも順当に正門から入って、ど真ん中を歩いてましたね。

──

だいぶ幅広いですね。そこで「邦楽なんぞ」とならないのも面白い。そこから哲学とか建築に興味を持ったのは何かあるんですか?

onoue

高専の建築科に通ってて、授業はあまり真面目に受けてなかったんですけど、図書館に建築の作品集とか哲学書とかが誰も読まないのにもう腐るほどあって。建築家の人たちって結構哲学用語を多用したりするんで、それにすごく影響を受けましたね。そういうのにかじりついて、友達とずっと建築について語り合うみたいな高校生活を過ごしました。

──

授業自体はそんなにだけど、建築や哲学にはそこでのめり込んだと。

onoue

あ、そうだ。19歳の時にインドに行くんですよ。学校の成績が悪すぎて進級できないみたいな感じになって、「とりあえずインド行っとくか」みたいな。2週間ぐらいインドに行って、ル・コルビジェとか好きな建築とか見て普通に観光してきました。なぜかそれで、弾き語りをやろうかって思ったんですね。その頃Suchmosが流行ってたんで、パクリみたいな曲を作ってライブ出させてもらったりして、その頃にthe perfect meとかfolk enoughに出会いました。

──

そこで音楽にグッとなったんですね。

onoue

インドに行って何か吹っ切れたっていうか、建築をもう諦めた感じになって。ずっと音楽やりたかったしやろうみたいな。高校の時の青春を取り戻してるかのように20歳前後で急いでやり始めた。気づくのが遅いんですよね、全部。

はからずも時代と共鳴するストレートなアウトプット

増田

なんか想像していたよりもずっと王道な音楽遍歴ですよね。友達がライブを観た時に「率直にかっこいいっていう一言しか浮かばない」って言ってて、そういうことかと思いました。逆張りとかしてる不純物がないというか、ただストレートに表現してる感じ。言い方は悪いけど、マーケティング的なことも狙って活動しているバンドもいるわけじゃないですか。

onoue

そういうことができるのは、テストで何の感情もなく器用に解けた人だと思うんですよ。僕の場合やりたくないって白紙で出してインドに行った男なので、そんなことはできないと思います。多分すごくポップなものを作ったとしても、真剣にめっちゃいいと思ってそれを作ってる。

増田

いろんな出来事を真に受ける方?それとも「ちょっと待ってよ」と疑いますか?

onoue

どっちもありますよ。でも疑うっていうことが哲学と建築の思考の中で内在化されていて、それを真に受けちゃってるから、器用な疑いとか勘繰りではなくて、真剣にちゃんと疑ってると思います。

増田

周りの人は完成された結果しか見ないけど、建築だと特に疑ったり考えに考えたものが「結果としてこうなりました」って出てきてるもんね。そういうことか。

onoue

だから疑って考えたりするのは哲学や建築の思考が強くて、演奏する時は本当にストレートに、凝ったパッケージとかはしないと思います。ただ楽曲制作ではその2つのスタイルが結構混ざった状態だったりするのかなと今思いましたね。

増田

そういえばaldo van eyckの歌詞は全て英詞ですよね?あまり意識したことがなかったんだけど、歌詞って何を歌ってるんですか?

onoue

『nada』はぶっちゃけ歌詞の内容がなくて、あんまりよくはないんでしょうけど、どうでもいいと思ってるんですよ。もう語感だけで歌ってて、ビートルズの歌詞を見ずに空で歌ってた感覚で全部録ってました。今回の『dead shot dan』はちょっと考えてるんですけど、それでも割とストレートですね。中学生が使える英語でしか歌ってなくて。

増田

めちゃめちゃ上手な日本語が書けたら、日本語でやってました?

onoue

やってたかもしれないです。でも難しいんですよね。文体とは別に日本語の音感があって、どうしても音楽的に英語とは違いがある。ドミコとかWool & The Pantsとかを聴くと、日本語を英語みたいに使ったりするのがうまいなと思うんですけど、自分には全然できないです。というよりあまり楽しいと思えなかったんですよ。それでfolk enoughとthe perfect meが救いだったというか、「歌詞何歌ってんすか」って聞いたら「あー、適当適当」とか言ってて。

──

そういう意味では『dead shot dan』で、何かこれまでと変わったようなことってあるのかなと気になっていました。制作のプロセスとか意識したところはありますか?

onoue

『nada』の時は「どうせ誰も聴かねえだろ」と思って作ってたところがあって、でも《HOLIDAY! RECORDS》さんに取り扱ってもらって、ありがたいことに東京でライブができたりCDも結構売れた。だから今回の『dead shot dan』は、よりしっかり向き合おうと思って作ったアルバムではあるかもしれないです。でも曲作りに関しては今までと一緒で、結構初期の曲も入ってるんで、作り方というよりはマインドの部分かと思います。

増田

『nada』はかなりLo-Fiで粗かったですが、とても緻密になった感じがしていて。録音も洗練されたような感じがします。

onoue

録音の仕方はMTR(マルチ・トラック・レコーダー)からパソコンに変えました。一発録りなのは同じなんですけど、『nada』はMTRで録ってミックスも1日でやったんですよ。けど今回の『dead shot dan』はLogic(AppleのDTMソフト)でちゃんと録って1ヶ月ぐらいミックスに時間をかけました。

増田

よく大人たちは自分のライブラリの中にある知ってるものを参照して比較したがるじゃないですか。そういうところにあまり引っかからないものが、なぜかできあがっている感じがするのですよ。別に何かと比べるでもなくただ聴いてるものがある。

──

浮かんでくるリファレンスはいろいろあるけど、フォロワーのように感じさせるところはない。ライブを観た時に、black midiだとか現行のUKポストパンクみたいなところも感じつつ、onoueさんとしては「そう言われてもあんまりしっくりこない」みたいな話を増田さんから聞いてたんですけど。

onoue

単純にblack midiはそれまで聴いてなくて、言われて「これっぽいんだ」となんとなく思ったくらいで。「こういう感じに聴こえてるのか」って知ることができるのはありがたいんですけどね。

──

それで言えば同時代のシーンは、どういう風に意識しているかが気になります。

onoue

本当に疎くて、近頃は山口のayatoと熊本のデュビア80000ccってバンドが特にすごいなと思うんですけど、世界のトレンドは全然わかんないです。Yazmin Laceyとか、USやUKのジャズは時々チェックしますけど、最新の音楽に敏感に反応する感じじゃなくて、自分が好きだと思ってるミュージシャンを定期的にチェックするとか、時代は関係なくハマっちゃう感じですね。10年前流行ったジャズを今頃知ってしばらく聴くみたいな。

──

確かに建築とかアートもそうだと思うけど、いい音楽って時代を超えてきますもんね。おそらくかなり戦略的にそれを打ち出せる人と、意識せずナチュラルに出てくる人がいると思うけど、多分aldo van eyckは後者なんだろうなと。

フリージャズのクールな感じをパンキッシュに

増田

そういえば親父のギターの話がさっきあったけど、トランペットっていつ始めたの?

onoue

一昨年ぐらいにBOOKOFFで買いました。近頃は楽しみや癒しとして聴く音楽はジャズしかなくなってきていて、トランペットとかサックスがかっこいいなって思って、安かったから買った。そもそもフリージャズみたいなことをロックでやろうというのが『nada』のコンセプトだったので、トランペットを見た時に「これでやればいいんだ」と思って、同じくらいの時期にキーボードも始めています。

──

機会があればサックスやウッドベースとか、いい感じの楽器が手に入ればバンドにも取り入れたいって気持ちもあるんですか?

onoue

ありますよ。ryunosukeにサックスを買わせようとしてて(笑)。僕らはよく似非ジャズって言ってるんですけど、The Lounge Lizardsがフェイク・ジャズと言ってる感じのことがやりたくて。Arto Lindsayも大好きなので、ジャズのクールな感じをパンキッシュにやるっていうのがaldo van eyckをはじめた大きな目的で、それは今でも続いてるっていう感じですね。

──

ご自身の興味として結構ロックからジャズに移行している感じですか?でもかといって『dead shot dan』を聴いていても、完全にジャズに振れてるというよりは、オルタナの感触もあるよなと。

onoue

それがちょっと悔しい部分ではあるんですけどね。デモを作ってた時はNirvanaの『In Utero』(1993年)にどハマりしていて、周期的にそういう時期が来るんですよ。なのでグランジ寄りの曲が多いアルバムになっています。

──

「悔しい」っていうのは、もうちょっと幅広い作品にしたかった?

onoue

それは若干ありますね。でもアルバムのまとまりとしてはいい作品ができたと思ってます。

──

歌詞やバンド名の話もそうですけど、語感や響きを重視しているところがありますよね。

onoue

哲学のパロール(話し言葉)とエクリチュール(書き言葉)みたいな話になるんですけど、音楽はパロールに近くて、聴いた人のリアクションが正直で直接的でタイム感が速く、感覚的に伝わっていく表現手段と捉えています。それはある意味で愚かしいことだと感じてしまう時もあるけど、そういう言語の一つとして自分の中にあるのかなと。それに対して建築はエクリチュール的に働くものだと感じていて間接的で多様な連鎖がある、そういった違った性質をどう音楽で表現できるかってことを考えるのは面白いですね。

──

さっき建築のマインドが疑ってかかることって言ってましたけど、それも音楽につながってる部分もあるのかなって。曲構成にしても既存のフォーマットを逸脱している部分もありますよね。

onoue

“F”っていう曲があるんですけど、自分たちのルールを作ってそれを曲にするみたいなところがバンドの醍醐味の一つでもあると思ってて、リフやメロディー、コードとかリズムを、構造的に客観視して独自の構成にして作ろうみたいな意識はありました。シンガーソングライターみたいな作り方とは違っていて、それは建築の影響だと言いたいと自分で感じるところです。建物を設計・デザインするみたいに曲を作れたらかっこいいなって、ずっと理想としているところはありますね。

 

dead shot dan

 

 

アーティスト:aldo van eyck
仕様:CD / デジタル
発売:2023年10月25日
価格:¥3,000(税込)

 

収録曲

1. Black Box
2. Dive
3. boxes
4. Red Hot
5. L S Drive Apartment 1F
6. S
7. !!!
8. clack
9. wall
10. Mud
11. L S Drive Apartment 2F
12. F
13. blue on blue
14. BLS
15. arctic
16. last dance
17. L S Drive Apartment 3F
18. pank
19. N
20. she

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