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阿部仁知が見たボロフェスタ2021 Day1 – 2021.10.29

20周年を迎えた、京都のフェスティバル『ボロフェスタ』。新型コロナの影響もあり、2年ぶりとなった今年は、2週連続6日間に渡って開催されました。2014年から毎年ライブレポートを掲載してきたANTENNAでは今年も編集部あげての総力取材!全6日間の模様を各日1名のライターによる独自の目線で綴っていきます。本記事では10月29日の模様をハイライト。

MUSIC 2021.11.05 Written By 阿部 仁知

〈KBSホール〉に着いたとき自然と「ああ、ここに帰ってきたんだ」と感じるのはなんでなんだろう。ANTENNA取材班として初めて訪れてから僕にとって3回目となるボロフェスタ。決して昔から知っていたわけではないのだが、なんだかここには長年連れ添ったような空気が流れている。

 

思えば今年の夏、現地に赴いた『FUJI ROCK FESTIVAL ’21』では「特別なフジロック」というタームが共通認識のように僕らの頭にあった。そこには当初少なからずコロナの影響によるネガティブなニュアンス(例年の完全なかたちではない)を含んでいたように思うが、4日間を過ごすうちにそうは思わなくなった。お酒も飲みたいし夜通し踊りたいが、今年僕らができる最善を尽くすことが来年の素晴らしい光景につながるという確信が、フジロックを通して僕の胸に去来したのだ。

 

ここでこれから行われるフェスティバルも間違いなく「特別なボロフェスタ」だ。緩和気味とはいえ、感染症対策のもと多くの制限の中で過ごさなければいけない。2020年、2021年に有観客で開催された『ナノボロフェスタ』の経験も踏まえてのことなのだろう、例年動線のど真ん中にあるロビーSTAGEと地下を熱狂で満たす街の底STAGEはなくホール内の2ステージのみ、〈CLUB METRO〉の「vol.夜露死苦」の開催もない。だがあらゆるリスクや縮小を受け入れてでも20周年を祝した2週連続開催という選択をしたのだ。

photo:岡安いつ美

そして10月29日、計6日間の初日となるこの日を過ごして、フジロックで感じたのと同様の素晴らしい兆しを僕は感じ取った。節度を守りつつもそれをほとんどネガティブな制限とも感じていないかのようなオーディエンスの煌めく笑顔。そしてその中で全身全霊を尽くす出演者の、フロアに向ける信頼の眼差し。いかに多くの枷があろうとも、音楽は一切損なわれないことを肌で感じたのだ。この6日間で何が起こるかわからないし、一方で「僕の振る舞い次第で台無しにしてしまうかもしれない」という緊張感もある。だがそれは同調圧力とは違う、健全な当事者意識だ。

 

この日出演した5組は、それぞれのバンドサウンドを存分に見せつけながら『ボロフェスタ2021 〜20th anniversary〜』の見事なキックオフを見せてくれた。そしてそれは必ず来週にも来年にもつながっている。さあ、ここが新たなはじまりだ。

開幕から「2021年のボロフェスタ」を強烈に印象づける若きホープたち

6日間のオープニングという大役を務め上げたのが、2019年での街の底STAGEの出演に続き、ボロフェスタのホールのステージに上がるのは初めての浪漫革命だ。トレモロアームを使った重厚なギターとグラインドするベースが初っ端から僕らを撃ち抜きリフレインするバンドサウンド。夏の残り香を纏う軽快なサウンドの中に、夜を過ごす情感が混ざり合っていく。彼らも僕らもこのコロナ禍でさまざまな夜を超えてきた。新曲“ひとり”や“ふたりでいること”で噛み締めるように歌い上げる藤澤信次郎(Vo)の表情には、そんな日々を想う情感がこもっている。昨年と今年の夏、『ナノボロフェスタ』では2年続けて初日トリを飾った浪漫革命。その時は終わりゆく季節の切なさを感じた“あんなつぁ”や“KYOTO”も、過ぎた日々を糧にまたこの街で歩んでいく讃歌のように感じられた。

続いてホール横手のGREEN SIDE STAGEに登場したのはthe McFaddin。Ryoma Matsumoto(VJ)が繰り出す鮮やかなヴィジュアライズがステージ上部に備え付けられた大きなスクリーンに投影される贅沢な環境で、遺憾なく本領を発揮する彼らの楽しそうな姿が輝いている。とりわけ笑顔全開で奔放に遊ぶryosei yamada(Vo / Gt)の姿は、まるで〈CLUB METRO〉で彼を見かけた時のように、ステージング以前に一人のミュージック・ラバーとして「一片の悔いも残したくないんだ!」という気持ちが伝わってくる。MCの節々に混ざる「ya!」という声がなんとも清々しい。よくThe 1975を引き合いに出される彼らだがもはやそれはサウンドだけではなく、チルで洒脱な中に激情とやりきれない心情の吐露が折り混ざるryoseiの堂々たる立ち振る舞いはいよいよマシュー・ヒーリーに重なるようだ。the McFaddinの表現の進化をまざまざと感じながらホールを見渡すとオーディエンスは思い思いの情感に包まれていた。

まさに今の京都を象徴するようなこの2組に今年のオープニングを任せたボロフェスタ。タイムテーブル発表の際にここからまた歩んでいくんだという気概を強く感じたものだが、浪漫革命とthe McFaddinは大きな期待に応える素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。そう、この街の未来はきっと明るい。

矢継ぎ早に繰り出す多様なバンドサウンドの応酬

ホール内の2ステージのみの開催となった今年のボロフェスタ。興奮も束の間、矢継ぎ早に次のステージが始まり、ホール内でバンドの想いが連鎖していくような感覚が例年以上に鮮明にあらわれていた。フレディ・マーキュリーに扮したパーティーナビゲーターMC土龍が熱烈に彼らを呼び込む姿を少し休み気味に眺め、8年ぶりの出演となるthe telephonesの登場だ。

 

赤いハートのサングラス、甲高いシャウトの石毛輝(Vox / Gt / Syn)に、ステージを縦横無尽に駆け巡りながらコテコテのシンセとカウベルでパーティーを加速させる岡本伸明(Syn / Cowbell / Shriek)。もうこれだけで「ああ、テレフォンズや……。」と感嘆してしまうディスコサウンドはさらに洗練されている。思う存分身体を揺らす歓迎ムードでいっぱいのフロアに「こんな世の中ディスコするしかない!」と投げかける石毛。これはやけっぱちの逃避行などではなく、僕らの生きている鼓動なのだと素直に感じられる華やかなディスコがそこにはあった。

 

続いて登場したLOSTAGEの6人編成のバンドアンサンブルは、ベースからアコギに持ち替えた五味岳久(Gt / Throat)の歌声を存分に引き立て、歌を聞かせる編成のように感じられた。Achico(Cho、Ropes)のコーラスやシェイカーに呼応するように中盤にかけてどんどん歌心が増していく五味のボーカル。最新作からの“HARVEST”ですべてが色褪せたコロナ禍の日常がアコギと歌に重なり、声にならない叫びに昇華される様には思わずグっとくる。悲しいこともうまくいかないこともすべて引き受けながら希望を歌う姿は、ステージのバックに描かれた「NEVER DIE」の文字がなんと似合うことだろう。

 

ボロフェスタと同じく活動20年を迎えたLOSTAGEだが、まるで少年のような純朴さをその瞳に宿しながら僕らに語りかける五味岳久。彼が言った「来年はいい年になる」という言葉にごく自然と確信を持てるような勇敢で精悍なライブパフォーマンスは、間違いなくこの日のハイライトと言える光景だった。

ステンドグラスをこじ開けたかのような音の存在感

そしてこの日の最終幕を飾ったのがROVOの面々だ。フロアに向ける視線はおろかメンバー間でもほとんど一瞥もくれず、それぞれが体感に没頭するような緊迫感のある佇まいの6人。隔絶された6の没入が有機的に絡み合ったダイナミックなバンドサウンドに息を呑むも、僕らの身体は動きを止めずどんどんのめり込んでいく。高出力で手数も多い岡部洋一(Dr / Per)とその間を縫うように優雅にリズムを刻む芳垣安洋(Dr / Per)のツインドラムがシンクロした時の圧巻のグルーヴ。そしてその打音で埋め尽くされた音像にストロークの緩急一つで「間」をつくる山本精一(Gt)のギターと、スタッカート一つに表情が見える勝井祐二(Vn)のバイオリン。せめぎ合うように主旋律を奏で合う姿のなんと壮観なことだろうか。

 

音だけでどれだけ気持ちよくなれるかをこの場で挑戦するような迫真の演奏は、次第に主従関係が逆転して彼ら自身が音に導かれているような感覚を覚える。そして山本がギターストロークに移った瞬間に幕が開き出現したステンドグラス。僕にはROVOが音でこじ開けたようにしか思えなかった。もちろん頭ではここしかないタイミングで担当のスタッフが操作したことはわかっているが、ROVOが開けたように感じたのだ。まったく理解が追いつかないこの感覚にゾワっとしながらも、ひたむきに拡張されたグルーヴは最高潮を迎える。圧巻の演奏に僕は筆舌に尽くし難い高揚のままホールを後にした。

ボロフェスタといえば文化祭に例えられることが多いが、今日僕はその意味を少し理解した気がした。円滑な運営のために駆け回りながらも「誰よりも楽しむぞ!」という気概溢れるボランティアスタッフたちのキラキラした笑顔。毎年見かけるベテランから、緊張も見える新顔に伝承されているのはノウハウ以上にその想いだろう。そして次代を担うフレッシュな若手から今もなお進化する往年の名手まで、多種多様なバンドサウンドを奏でた出演者の面々も、多くを語らずとも演奏だけでこのフェスティバルへの特別な意気込みを感じさせる。あらゆる人が誰かの先輩であり後輩。その生き様と精神が連綿と受け継がれてきた20年だからこそ、ここは「いつでも帰ってこられる京都のフェスティバル」なのだ。きっとここでまた素晴らしいことが起こる。そんな予感を胸に僕は帰路についた。

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