REVIEW
Crocodiles
G'ndL
MUSIC 2022.05.31 Written By 阿部 仁知

憂いも迷いも喜びもみんな夢の中

最初はストレートなポップソングたちに思えたものだが、聴けば聴くほど印象が定まらなくなり幻想の中に溶け出していくような……。G’ndL(ゴンドラ)の1st EP『Crocodiles』はそんな背反するイメージを併せ持った作品だ。

 

ディレイがかったボーカルとギターのユニゾンが気持ちのいい“Portopia”はSobsやFazerdazeなどの近年のインディーポップらしい瑞々しさと憂いも感じさせるが、“Pavilion”の小気味のいいギターはPhoenixやThe Strokesなどの要素も感じさせる。かと思ったら空間をぶち抜くギターソロが痛快な“Maison”はThe 1975を彷彿とさせる軽やかなビートを刻み、“Vesper”のどこか気だるい陶酔感はさながらThe Stone Rosesのようでもある。

 

このようにギターを中心に様々な要素が感じられるが決してとっ散らかった印象にならないのは、バンドサウンドの芯を通すベースの堅実なプレイが大きいように思える。自身も多様なプレイをしながら、トラックごとに楽曲のモードをG’ndL色に引き戻すかの如き働きがあるからこそ、ギターなどのウワモノもなんの打算もなく奔放に遊べるのではないだろうか。

 

そしてリヴァーブを存分に効かせたギターサウンドを基軸に、全体を包む夢のモチーフに微睡んでいくのも本作の特徴だ。あまり聞き取れない歌詞の中でも“Pavilion”の「レトロフューチャー」が象徴的で、空想の中で思い描いていた未来への期待とその成れの果てが儚く描かれている。その様子は決して大きな希望とはいえないかもしれないが、かといって後ろ暗い気持ちでもない。日常とは案外そんなものかもしれないと、夢を通して持ち帰るような妙な肯定感。本人もTwitterで「テーマは”夢燃え尽きた10代”です」と語っているように、二重の夢のモチーフが分かち難く混濁している様は、明快だが捉えどころのないどこか不思議な感覚だ。

 

さて、インターネットでG’ndLの情報を調べてみても、大阪の人、多分4人組、くらいしかわからない。Twitterから垣間見られる素っ頓狂なキャラクターも含め、奇しくもサウンドとマッチしたセルフイメージとなっているが、結局のところわかるようでいてわからないこのモヤモヤが何ともこそばゆい。「次はライブでたしかめなければいけないな」なんてことを思いつつ、姿の定まらないサウンドは僕の身体を駆け巡っていくのだ。

Crocodiles

 

アーティスト:G’ndL
仕様:デジタル
発売:2022年1月11日

 

 

収録曲

1. Portopia
2. Pavilion
3. Maison
4. Vesper

 

Spotify / Apple Music

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