INTERVIEW

sa/wa 改め Sawa Angstromが語る、エレクトロニック・ミュージックの楽しさと海外ツアーの景色

豊かなバックグラウンドを持つ大所帯バンド・LLamaのフロントマンであり、レコーディングスタジオ・studio INOの運営も行う吉岡哲志。バンド・Lainy J GrooveやTANAKA OF THE HAMADAに加え、YeYeのサポートベーシストとしても知られる浜田淳。そして難波BEARSなどで活動し、弾き語りと宅録で独自のアシッド・フォークを奏でてきた児玉真吏奈。2017年、その3人がエレクトロニック・ミュージック・ユニット sa/wa(サワ)として活動を開始した。カフェやゲストハウスでのライヴ活動に加え、2018年11月から12月頭にかけて、ヨーロッパと台湾を股にかけたツアーを敢行。5カ国8公演で無事成功をおさめ、帰国したばかりの彼らに話を聴いた。エレクトロニック・ミュージックならではの楽しさ、そして活動の選択肢に“海外ツアー”が入ることの良さが伝わる、和気あいあいとしたインタビューだった。

 

前半では、彼ら自身にとってのsa/waについて。後半では、海外ツアーにまつわる話題を中心に聞いている。なお彼らは、ユニット名のsa/waをSawa Angstrom(サワ・オングストローム)に改名することを発表している。また1月30日(水)木屋町UrBANGUILDでのライヴより、海外ツアーで撮影された写真と帰国後新たに制作された楽曲を収録したCD付きZINE『SYNAPSE VISUAL NOTE』 の発売が開始されるとのこと。YoutubeSoundCloudの音源を聴きつつ、発売を心待ちにしよう。

「いいボーカルいたよ!」「じゃあやろか」って誘ってやりはじめました。(浜田)

──

はじめに、sa/wa、改めSawa Angstromが結成された経緯についてお聞かせください。

浜田淳(以下、浜田)

僕が歌もののエレクトロニック・ミュージックをやりたかったんですよ。一緒にやる人が見つからなくて、受け入れてもらえるかもわからなかったんですけど、一人で作って自分で聴くだけでもしょうがないから。いいボーカルの人をずっと探してたんです。

──

それって、ソロではいけなかったんでしょうか。

浜田

はい。必ず歌を乗せたかったんですけど、僕は自分の歌に自信がないので。で、TANAKA OF THE HAMADAでたまたま真吏奈ちゃんと対バンした時に、「いいボーカルいた!」と思って。吉岡くんともずっと一緒に音楽やりたいと思ってたから、「いいボーカルいたよ!」「じゃあやろか」って誘ってやりはじめました。

吉岡哲志(以下、吉岡)

浜田と同じように、僕も元々打ち込みが好きで。自分でいそいそ作ってSoundCloudにアップしてはいたんです。それで、去年(2017年)の秋くらいかな。VJの井上理緒奈ちゃんの企画ライヴに浜田が誘われて。

──

本日休演のMVや、中村佳穂さんのライヴ映像を手がけた方ですね。

浜田

ソロ名義でオファーを頂いたんですけど、ソロはやってないから。だったらもうこの3人でやりたいなと思って。その時が最初のライヴですね。

──

ライヴ映像を拝見したんですけど、皆さん打ち込みではなく人力で演奏されていましたよね。

吉岡

基本的には人力でやっていますね。

──

それはどうしてですか?

浜田

デジタルになりすぎないというか、そのほうがノリやすい気がしていて。デジタルで作った曲を、ライヴでアナログに持ち替えたとき、どこまでかっこよく出来るかっていうところを探っています。

──

3人で合わせたときのグルーヴもありますもんね。エレクトロニック・ミュージックのユニットではありますが、スタンスとしては、生楽器のバンドにもかなり近い印象を受けました。ライヴ映像には歌のないインプロセッションの模様も収められていますね。

吉岡

日によって違うんですけど、インプロヴィゼーションの占める割合は、今のところ半分か、それ以上ありますね。

──

曲作りについては、どういった分担になっているんでしょう。皆さん全員、これまでの活動で曲作りをされてきていますよね。

児玉真吏奈(以下、児玉)

それが、分担っていう感じではなくて。みんなで考えて作ってます。

浜田

即興でセッションしたものを曲にしたりして。それがこのバンドの面白いところですね。

──

歌詞もそうなんですか?

吉岡

たとえば“tape loop”(EP『DdTPt』収録曲)だったら、チルアウトっぽい雰囲気とか、時間帯や景色のシチュエーションをなんとなく3人で共有して。で、それをイメージするような言葉を紙に書き出していくんです。ブレインストーミングですね。

フランス・モントルイユのスタジオで撮影された“tape loop”のセッション・ムービー

児玉

「扇風機」とか、「回る羽が」とか。

吉岡

その後、メロディをつけていく段階で、出てきた言葉を真吏奈ちゃん主導ではめこんでいきました。

──

一人で歌詞を書くときの感覚とはかなり違いますか。

児玉

全然違いますね。

吉岡

これは僕の個人的な好みなんですけど、最近は、その人の人間性が強く出ているような歌詞より、音として楽に聞けるような歌詞の方がええなって思ってますね。

私一人では出来ないことが無限にあるし、全員の要素があるからこそおもしろい(児玉)

──

皆さん3人の中で、Sawa Angstromとそれ以外の活動とはどういった位置づけになっているんでしょう。

吉岡

僕の場合、LLamaではバンド全体の舵取りをしていて、曲も作っているんですけど。サワやと、2人がとりとめなく面白いことを言っているのを、つぶさないように拾っていく役回りですかね。2人のアイデアをちゃんと形にしなきゃ、みたいな。

──

吉岡さんはスタジオ(studio INO)も運営されていますし、LLamaのフロントマンとして一番前に立っている印象があったので、サワのライヴでお2人と並んで立っている姿が印象的でした。

吉岡

LLamaは今、他のメンバーが育休中なので活動できていないんですよね。あんまりもう、一番前に立ちたくはない(笑)。歳も歳なんで。

──

児玉さんはいかがですか?

児玉

私は今までずっと一人でやってきていて。シンガーソングライターって、一人編成とバンド編成を両方やる方がたくさんいますけど、私はバンド編成を作るつもりがまったく無かったんです。お誘いは結構いただいていたんですけど、一人で作る歌は一人で演奏しようって決めていて。

──

なぜですか?

児玉

やりたいことをミックスしながら曲を作っていくときって、妥協できることがほとんどないんです。たとえば、私が誰かと一緒に曲を作ることになったとしても、その人がやりたいことって、結局はその人がソロでやるほうがやり通せるんじゃないかって。なので、がっつり他の人と一緒にやることは出来ないかもって思ってました。

──

メンバー同士でやりたいことの折り合いをつけるのが難しそう、ということでしょうか。

児玉

そうですね。完成した曲でコラボレーションしたり、スタジオでセッションして遊んだりはするんですけど。

──

サワではそういった心配はなかったんですか?

児玉

全然、全然。私にとってのサワって、フロントマンが3人いるようなイメージなんです。お誘いを受けたのも、それが面白そうだなと思ったからで。なので、私一人では出来ないことが無限にあるし、全員の要素があるからこそおもしろいんですよね。私がリーダーでバンド編成をやっても、ソロとの違いは音数くらいしか無いかもって思ってたんですけど、サワはむしろソロの活動に対しても刺激になっていて。やれてよかったです。

──

となると、Sawa Angstromの編成って、児玉さんのスタイルにかなり絶妙なバランスでハマっているんですね。

児玉

そうなんです。

──

浜田さんはどうでしょう。

浜田

なんとなく、僕は研究所みたいなイメージでやってますね。

児玉

確かに!

浜田

楽曲に個人のエゴがそこまで出ていないというか。別のバンドとか、気合いを入れて取り組むような感じだと、こうはならないかもしれないです。どうしてもエゴがどんどん出てくるから。もちろんサワも本気でやってるんですけど、頑固にならずに何でも試せる研究所っていう感じなので、めちゃ気が楽ですね。

吉岡

今の流行の音とかも、気負わずにいろいろ試せるのが楽しいですね。最終的にカッコいいのができればなんでもいっかって。ある種、パーソナルの反映みたいなものが限りなくゼロに近いユニットやと思います。

児玉

みんなが今まで、それぞれ頑固にやってきたからこそですね。

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ヨーロッパでは、いろんなジャンルの芸術が並列に受け入れられているような印象がありました(浜田)

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