このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューのひとつです。
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日本語パワーポップの確かな養分
ナードマグネットのインタビューでも何度か名前が挙がっているアメリカのパワーポップ・バンド、ファウンテインズ・オブ・ウェインの3枚目。現時点でのバンド最大のヒット作で、リードシングル「ステイシーズ・マム」は2004年のグラミー賞(最優秀ポップ・パフォーマンス賞)にもノミネートされている。
パワーポップと呼ばれるジャンルの中でも、彼らは特にメロディを強みとしているバンドだ。本作でも「メキシカン・ワイン」、「ハッケンサック」、「ヘイ・ジュリー」など、エモーショナルで起伏に富んだメロディラインの曲が多く収録されている。一方音楽性の面ではとても幅の広いアルバムで、サイモン&ガーファンクルよろしく物憂げなバラード「ファイアー・アイランド」など、“パワー”から距離を置いたものも少なくない。とはいえアルバム全体を覆っているメロウな歌心は、ナードマグネットがリスペクトする数々のパワーポップ・バンドの中でも特に強く共鳴しているように思う。『MISS YOU』で言えば、表題曲「MISS YOU」のメロディのノスタルジーは「メキシカン・ワイン」に、「海辺のルーシー」後半のドラマチックな展開と厚くなるコーラスは、それこそ「ステイシーズ・マム」のサビに重ねられる。いずれにせよ彼らのポップなメロディラインが、ナードマグネットが挑んでいる命題“日本語パワーポップの確立“の一助になっているのは間違いないだろう。
第二回【3×3 DISCS】:ナードマグネット『MISS YOU』を中心とした9枚のアルバム
選定:ki-ft・アンテナ
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'92年新潟生まれ岡山育ち。大学卒業後神戸に5年住み、最近京都に越してきました。好きな高速道路は北陸道です。
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