このレビューは、計8枚のアルバムから、中心に配置した1枚のアルバムのバックグラウンドを紐解く、ki-ft・アンテナ共同企画【3×3 DISCS】のレビューのひとつです。
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80,90sポップカルチャー主人公への憧れと、なにものにもなれない自分
ナードマグネットはVo./Gt.の須田が受けた、U.S.のポップカルチャーの影響なしに語ることはできないバンドだ。パワーポップやオルタナティブロックなどのギターロックからのサウンド面の影響は言うに及ばず、歌詞やタイトルにも多くの映画からの引用が散見される。そんな「You & Me」をメインに展開される須田の歌詞は、どこかロードムービーを思わせ、子供の頃に感じた”まだなににでもなれる、憧れを抱えたキラキラした自分”と、それ故に”まだなにものにもなれていない不安な気持ちを抱えた自分”の両方を思い起こさせる。
そんなナードマグネットから連想して思い出したのが、90sを代表するオルタナティブ・ロックバンドのThe Smashing Pumpkinsだ。Vo./Gt.ビリー・コーガンもまた映画などのポップカルチャーから影響を受け、音楽へと昇華している一人である。そんな彼らはストーリー性を帯びた歌詞や、楽曲を通じて全体に漂うノスタルジーな音像でも共通点をなしている。中でもアルバム『Siamese Dream』のシンプルかつ骨太なディストーションギターや、そこに乗る叙情的なメロディはナードマグネットのルーツとして語るには十分な1枚だろう。80,90sのカルチャーに憧れるナードマグネット、今度はそんな彼らに憧れて『MISS YOU』もまたいつか誰かのルーツとなっていく日がくるはずだ。
第二回【3×3 DISCS】:ナードマグネット『MISS YOU』を中心とした9枚のアルバム
選定:ki-ft・アンテナ
WRITER
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26歳で自我が芽生え、とうとう10歳に。「関西にこんなメディアがあればいいのに」でANTENNAをスタート。2021年からはPORTLA/OUT OF SIGHT!!!の編集長を務める。最近ようやく自分が持てる荷物の量を自覚した。自身のバンドAmia CalvaではGt/Voを担当。
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