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BOLTS HARDWARE STORE

DESIGN 2016.02.21 Written By 堤 大樹

物屋と聞いて今一体何人の人が身近に感じるんでしょうか。

 

北大路の閑静な住宅街にポツンとあるBOLTS HARDWARE STOREは金物屋ですが、いわゆる普通の金物屋とは大きく違います。このお店が主に取り扱っているのは衣食住で言えば”住”のアイテム。フックや棚、電球やテーブルからスツールまで住に関するものならほとんどのものが揃っています。フックだけでもかなりの数があり目移りしてしまうほど。どれも店長の朝陽さんが国内外からセレクトしたこだわりのあるものばかりで、ホームセンターでは中々お目にかかれないようなものが店外にまではみ出して所狭しと並んでいます。

 

金物、工具というと男性向けというイメージもありますが、BOLTS HARDWARE STOREはそんなことはありません。オリジナルの可愛らしいキャップやトート(こんなものまで!)を筆頭に、女性でも気に入って家に持ち帰りたくなるようなアイテムも数多く置いてあります。 決して大きなお店ではないのに、妙に居心地が良いのはきっと朝陽さんのこだわりと人柄のなせる技。また本職はデザイナーということもあり、主にインテリアに関わる事をメインにオーダーメイドも承っているようです。「お気に入りのものが見つからない!」というあなたはぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。

住所

〒603-8034

京都府京都市北区上賀茂葵之森町7-19

※移転先の住所です

定休日

水曜日、隔週土曜日

営業時間

10:00~18:00

HP

https://bolts-hardwarestore.com

──

以前より外からお店を見ていてずっと気になっていました。HPには「いわゆる一般的な金物屋ではない」とありますがBOLTS HARDWARE STOREとは一体どのようなお店なのでしょうか?

朝陽 鎮也さん(以下:朝陽)

主に建築インテリアやそれに関するパーツ類、工具とか、ちょっとした雑貨とかを扱っています。うちはデザインをやっているので、オリジナルのプロダクトを売りたいというのが一番です。

──

オリジナルのプロダクトとはどのようなものでしょうか。大手ホームセンターで工具やパーツも買えると思うのですが、BOLTSさんとの違いはデザインにあるのですかね?

朝陽

そうですね。自分たちで考えたものっていうのはここにしかないものなので、そういうものが一番強いのではないかなと思っています。

──

HPに新しい価値の創造とありました。ここにしかないものという言葉はそういったものに繋がっていると思うのですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

朝陽

例えばうちのオリジナルの商品で、アルミを磨いて鏡に仕立てているものがあります。もちろん普通の鏡に比べたら映りという面では若干劣るのですが、十分鏡としては機能して映るんですよね。他には壁に取り付けないと成り立たない棚もあるのですが、うちのオリジナル商品は手を加えなくては成り立たないというものが多いです。世間に出回っている製品っていうのは、絶対汚れない、磨かなくていい、メンテナンスフリーの物が多いですが、うちのものはそうはいかない。そういったひと手間をかけることを良しとする価値観に共感してくれる人が、多くはないかもしれませんが嬉しいですね。

──

自らが打ち出した価値に反応があるのは嬉しいですね。立ち寄るお客さんはどのような方が多いですか?

朝陽

面白い商品があるかなとフラッと立ち寄る人もいれば、ちゃんと調べて、買いたいものを決めてくる人もいます。

──

ありがとうございます。朝陽さんの本業はデザイナーになるのでしょうか?

朝陽

僕自身が手を動かして品物を作る訳ではないので、職人ではなくデザイナーです。作ることもありますが、仕上げとか、取り付けとかサブ的なことがメインで、主に商品を作るのは職人さん。仕事なのでそこはうまく線引きしてデザインで補える部分と、職人さんの経験で補える部分と意見を言い合いながら作っています。向こうはデザインはできないし、こっちは作れないっていうので仕事が成り立っているので、そこの線引きはちゃんとしたいなって意識はありますね。

──

お互いに補える関係というものはいいですね。デザイナーである朝陽さんが何故こういう形で実店舗としてお店を開くことになった経緯を教えてください。

朝陽

以前会社勤めをしていた時から感じていたんですが、営業をして仕事を取るのもいいことですけど、実店舗にしといた方が人は来るし、仕事も取りやすいなと。こうやってお客さんと会話も出来ますしね。

──

以前は別の会社に勤められていたという話ですが、独立される際に京都を選ばれた理由はありますか?

朝陽

京都は学生時代に過ごしていて馴染みがありました。あとはお付き合いしている工場さんが主に大阪なので、近いっていうのも大きいです。そして京都の町の狭さがちょうどいいくらいの大きさだと感じていて、少し街中から外れてお店をやっていてもわざわざ足を運んでくれるお客さんが多いんです。なのでこんな場所でも来てくれるだろうと思って京都を選びました (笑)

──

この道を志すきっかけはあったのでしょうか?

朝陽

家庭環境じゃないですかね。姉はデザインやっていたり、母がミシンをやっていたり、父は自動車整備をやっていたし、物を作るのが好きな家系なんですかね (笑)

──

影響を受けたデザイナーがおられたら教えてください。

朝陽

仕事を始めてから周りの人に影響されましたね。職場の先輩であったり、社長だったり……学生の頃やっていたことは遊び程度だったと気付かされました。社会に出てから今の技術であったりとか、話術や、デザイン力、売るまでのプロセスだったり多くのことを吸収しました。 

──

オリジナル商品のアイデアはどのように生まれてくるのでしょうか?

朝陽

お客さんの要望を聞く事はあまりなくて自分の中から出てきますね。作りたいな、と思って何となく頭に浮かんだらちょっとずつ詰めていく。いけそうだなと思ったら一回作ってみて、更にコストやディテールの調整という流れです。

──

忘れがちですがひとつの商品を作るのにもデザインする人がいて、実際に形にする人がいて、多くの人が関わっていて大変ですよね。そこが面白い部分でもあるとは思うのですが。

朝陽

付き合いが長くなってくるとお互いが分かってくるので、これやりやすいだろうなとか、これやりにくいだろうなとか、だんだん楽になってきます。最初は辛いですけど (笑)

──

デザインをされる際に気を付けていることはありますか?

朝陽

無駄がないというか、理にかなったデザインが好きなので合理的なものになるように気を付けています。無駄なことやって変にコストが上がっているものとかは見ていて腹が立ちます (笑) 。あとはお店のことも、陳列を考えたり、ポップを書いたり、日々出荷する梱包1つでもデザインだと思うので。それも全部含めてデザインだと思っています。

──

それは店内を拝見していても感じられます。決して広くはないのですが、商品も見やすいし居心地が良いですね。デザインされた中で特にお気に入りのものがあれば教えていただいてもよいでしょうか?

朝陽

ありがとうございます。商品は……オリジナルはどれも思い入れがあるので決められないですね (笑)

──

どれも苦心して作られているでしょうし、そうかもしれません (笑) 。最後に今朝陽さんが気になっていることを教えていただいてもよいでしょうか?

朝陽

難しいな……今カヤックをやっているのですけど、次どこ行こうかなってことですかね。

──

カヤックですか、学生のころからされていたのでしょうか。

朝陽

いや、これは2年位前からです。誘われて、はまって、船を買って、どんどんはまっちゃったって感じですかね (笑) 。船は組立式なので、バラして、リュックとして背負えます。皆で行った方が楽しいし、行く時はカヌーメーカーさんのツアーに参加している事が多いのですが、新しい出会いもあるし、おじさんと話しているのも面白いんで (笑)

──

経験されている場数が違いますよね (笑) 。ぜひ今度連れて行っていただきたいです。本日はありがとうございました!

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